★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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義腕の男2(49)

2016年03月07日 | 短編小説「義腕の男2」
 俺は、頭から毛布を被り、その男からなるべく見えないようにしつつ、隙間から様子を伺っていた。癇に障る口の利き方とその男の顔の傷跡には心当たりがある。
 間違いない、あいつだ。
 だが、なぜあいつがここに・・。
 突然、今まで俺のベッドの影に隠れていたクリス博士が飛び出し、その乱入者に向かって叫んだ。
「だめよ、そのデータは。あなた達の手には負えないわ」
 俺はとっさに身を起こして少女の腕をつかみ止めようとしたが、タッチの差で空振りに終わってしまった。それどころか、せっかく毛布で顔を隠していたのに、上半身がまるごとベッドの上に露出してしまい、その癪に障る乱入者に晒されてしまった。
 しかし、乱入者は俺よりも先に少女に引っかかったようだ。
 片目のレンズを光らせてクリス博士を見つめ、耳障りな笑いをさらに強めて言った。
「ほう、お嬢チャン、こんなところにこんな子供がいるなんて。さてさて・・」
 ヤツの片目のレンズは特殊なセンサーとモニターになっていて、見たものを瞬時に分析できるようになっているはずだ。
「おおっと、これはこれは・・クリス博士か!」
作ったような笑みから、これが本来なのだろうという残忍な笑いに変わった男は、今までガッチリつかんでいたジェファーソン博士を、まるで遊び終わったおもちゃのように部屋の隅に放り投げ、俺たちに向かって近づいてきた。
 ジェファーソン博士は、糸が切れたマリオネットのように床に叩きつけられ、動かなくなった。締め付けからは開放されたが、気絶したようだ。


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