★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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義腕の男2(37)

2015年04月05日 | 短編小説「義腕の男2」
逆光の中、よく見ると、その人影は上半身裸のMr.Jだった。
「クリス博士!」
Mr.Jが少女に向かって言った。
(クリス博士?)
 ただでさえ加速剤の副作用でボーっとした思考能力がますます混乱するうえに、左足の痛みが激しさを増し、ひざ下の感覚が無くなってきていた。
 足を見ると、ひざのあたりが血で黒く濡れており、その下が有り得ない方向に曲がっている。正気ならかなりの痛みのはずだが、薬の副作用で、感覚が鈍くなっているせいか痛みも半減している。
 俺の脚の具合に気がついた少女は、戻ってきて傷ついたひざを触り始めた。
「ひざの裏から撃たれた様ね。弾はひざの皿を破壊して貫通しているわ。関節もいっちゃっているし、もうこのひざは使い物にならないわね」
少女は、その見かけに似合わない冷徹かつ正確な診断を告げた。
「それに、あなた、さっき打った薬、加速剤SP2273でしょ。あと30分は廃人同様よ」
「うう・・」
何なんだ、この少女は。
「たしかに、ジェイと戦うには加速剤くらい使わないと通用しないけどね」
 俺は、朦朧とした意識で必死に考えたが、思考能力が完全に低下していて結論が出てこない。


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