★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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義腕の男2(47)

2016年02月26日 | 短編小説「義腕の男2」
 一旦自分の世界に没すると、周りが見えなくなる科学者の典型のような男だ。
 それに比べ、この少女はどういう人物なのだろう。
 クリス博士に視線を移すと、その少女は回りに聞こえないような小声でため息をついた。
「ふーー。せっかく予告空爆をしてもらったのに・・・まあ仕方ないか」
「予告空爆をしてもらった?・・それは、いったいどういう・・」
 クリス少女は、俺の耳元に近づき、他人には聞こえないように説明を始めた。
「私がやらされていた究極の戦士を作るという研究は、初めのうちはすごく面白くて夢中で自分から進んでやってたんだけど、完成に近づけば近づくほど、軍事的にいかに危険かということが判ってきて怖くなったのよ。それでノスリルのエージェントを通じてこの研究自体を消し去るため、私が予告空爆を依頼したの。だから、Nビルに機器からデータ、果ては私のアバターまで残して爆撃してもらったのに・・、まさかあのジェファーソン博士がここまで研究を進めていたとは・・予想外だったわ」
「ふーん。やはり、今の時代でも究極の兵士というのは脅威なのかな」
「確かに、兵器の性能というのも大きいけど、そうね、ジェイを思い出してみて。あの廃村でジェイが獣人化した後、アスランの追手はジェイ一人に全滅したのよ。ジェイを止められたのは、加速剤を使ったあなただけだったわよね。研究していた究極の戦士というのは、確実にジェイより強いのよ」
「なるほど。Mr.Jのような戦士が大量にいたら、まさに脅威だな」
 獣人化したジェイの姿を思い出し、あれが一個師団そろった姿を想像しただけで寒気がしそうだ。


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