★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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義腕の男2(34)

2015年03月22日 | 短編小説「義腕の男2」
獣人は、まだ前の場所にいるようだ。
 俺は、頃合いを見計らって建物から外にでた。
 獣人は黄色い目で俺に気づき、うぅとうなり声を上げいきなり行動にでた。
 だが、今度は、見える。
 加速剤のおかげで、相手の動きが手に取るように判る。
 獣人は、前と同じように俺の目の前に突然出現するように動いたつもりらしいが、同じ手は効かない。
 俺は、獣人が目の前に出現する直前に、4倍速の右腕で獣人の胸ぐらの毛皮ををつかみ、獣人の勢いをそのまま利用して斜め後ろに放り投げた。
 多分、獣人はなにが起きたか判らなかっただろう。
 通常の人間には目で追えない程のスピードに乗ったまま、さらに戦闘モードの右腕のパワーを上乗せされて飛ばされた獣人は、俺がさっきまでいた廃屋の隣の小屋の壁に激突した。
 俺が逃げ込んだ建物と違い、若干薄めの石壁のその廃屋は、獣人の衝突でさらにばらばらに砕け散り、もうもうとした砂埃の中で単なるがれきの山と化した。
 俺は、右手の手のひらに残った獣人の毛を、ふっと吹き飛ばした。ちょっと黄色がかったまぎれもないヒョウの毛だ。
 砂埃はあっという間に、砂漠の風で飛ばされ、後には石の山が残っている。