★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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彗星の時(7)

2011年06月18日 | 短編小説「彗星の時」
 戦鉄牛は、納屋をつぶした足を瓦礫の中から引き上げようと器用に動き始めた。
 その動きを見上げていたシャインは、右手をバックパックに突っ込み剣の握りを取り出すと、鉄の足を抜こうとしている戦鉄牛に向かって走り出した。
 シャインは、握りを操作し光の剣を作り出すと、一番大きな材木に飛び乗り、さらに戦鉄牛の足を目掛けてジャンプしながら光の剣を振るった。
『キィーーーーン』
という聞いたことがないような高音が響きわたり、戦鉄牛の足の付け根辺りに、光の剣と同じ輝きを放つ一筋の線ができた。三人が出会った時にムカデの化け物を倒したのと同じ光だ。
 シャインは、空中でクルリと一回転すると光の剣を持ったままきれいに着地した。そのまま戦鉄牛に振り返り剣を構えようとした時、光の剣はチカチカと点滅し始めた。
 戦鉄牛は、シャインの動きに反応するように動き始めたが、光の線が付いた足が線の部分からきれいに切断され、その足だけが胴体から離れ倒れていった。
 「ズシーーーン」
 外の騒ぎに、納屋を貸してくれた農家の老夫婦が母屋から出てきて、瓦礫と化した納屋とそれを破壊したであろう不気味で強大な物体に驚いて立ち尽くした。
 戦鉄牛は、その老夫婦にも光る視線を向けた後、残った三本の足で移動しようとしたが、バランスが取れなくなり、瞬間動きが固まったまま隣の畑にゆっくりと倒れ込んだ。
 「ドドドーーーーンン」
 大音響と地鳴りを響かせ、戦鉄牛はせっかく実った作物を周囲に撒き散らしながら畑の真ん中に横たわった。
 シャインは、地面に中ばめりこんだ楕円形の胴体にすばやく駆け寄ると、点滅している光の剣を胴体に切り込んだ。剣は柔らかいバターを切るかのようにすっと食い込んだが、真ん中辺りで点滅の速度が早くなり、突然輝きが消え光の剣自体も消えてしまった。