鴨着く島

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リュウイチとユウイチ

2023-04-09 16:18:21 | 日本の時事風景
音楽家の坂本龍一氏が先月の28日に亡くなっていたと新聞で報道されたのは4月3日(月)であった。

7,8年前に癌にかかり、かねてから体調不良を言われていた坂本龍一氏が亡くなったのは71歳とまだ若い点を除いては、致し方ないだろう。人それぞれに寿命というものがある。

それから連日のように新聞や他のメディアで坂本氏を巡る深堀の情報が寄せられ、高名だけを知るばかりの私には今さらながら氏の偉大さに驚く他なかった。

通常の作曲家として知られる前にYMOという電子音楽を駆使したグループを立ち上げ、その楽曲は後世に多大な影響を与えたという。

音楽活動と並行して政治的な活動もまた多彩であった。反戦平和・反原発への取り組みに熱心で、特に自然保護の視点は氏の大きな特徴だった。

そこへ4月6日の夕方近くだったが、テレビを何気なく見ているとニュース速報が飛び込んで来た。

陸上自衛隊のヘリコプターが宮古島周辺海域で行方不明になった――というものだった。

海上自衛隊ではほとんど事故らしい事故は無いのだが、航空自衛隊では何年か前にも航空機の事故がいくつか発生しており、
乗務員が助かったのもあれば亡くなったケースもあった。

今度のは陸上自衛隊だが、事故を起こしたのはヘリコプターであった。ヘリコプターも航空機である以上、事故は皆無とは言えず、記憶に新しいのが沖縄の米軍のヘリが沖縄国際大学の敷地内に墜落した事故だった。

記憶に新しいとはいってもあの事故はもう20年ほど前のことだが、米軍による規制線が張られ、沖縄の警察も事故現場に入れないという安保及びそれに付随する日米地位協定の壁が立ちはだかったことで物議を醸したのでよく覚えている。

8日の新聞記事で宮古島のこの事故の概要が明らかになったが、ヘリコプターの所属は日本本土の熊本にある陸上自衛隊第8師団で、行方不明になった10名のうち操縦士と整備士を除く6名が陸上自衛隊の幹部ばかりで、中でも第8師団の師団長が搭乗していたというのには驚かされた。

報道によると師団長は陸将という陸自ではほぼトップクラスの地位にある人で、先月29日に師団長に抜擢されて赴任したばかりだったという。

そして着任わずか一週間後の6日に、南西諸島防衛のための巡視活動の一環として宮古島の陸自部隊の駐屯地を経由して先島の地勢を観察しようとしていたという。

着任後ほとんど時を置かずして南九州から先島にかけての巡視を遂行したのも驚きだったが、その師団長の名を知って余計に驚いてしまった。

師団長の名は坂本雄一(ゆういち)だったのだ。わずか3日前に亡くなったと報道された坂本龍一(りゅういち)とほぼ同姓同名と言ってもいい名前の響きではないか。

英語のスペルで書けば、ユウイチはyuichiで、リュウイチはryuichi。「r」があるかないかの違いに過ぎない。漢字では「雄」と「龍」は結構大きな違いだが、英語のスペルではほんのわずかで、英語圏のメディアを情報源とする人々は、二人の姓名が似通っていることに驚くことだろう。

もちろん二人の属性間に共通点はなく、因縁話に仕立てる必要はない。両者はそれぞれの分野で高名であるというだけである。

しかしそれでも立て続けに亡くなったのが坂本姓の人であったことに一種の感慨を抱く。

墜落して海の底に沈んだであろう10名の方々の安否と原因究明がすみやかに行われることを願うばかりだ。