琵琶湖
★栴檀の実の散らばりに湖晴るる 正子
栴檀の実も散らばる冬も本番を迎えたころになれば、空気も澄んで晴れた日の湖もきれいなことでしょう。(高橋秀之)
○今日の俳句
冬紅葉向こうに大きな空がある/高橋秀之
冬紅葉の向こうに見えるものが「大きな空」である。「大きな」がこの句の内容の良さで、読み手にもその空を実感させてくれる。(高橋正子)
○冬紅葉
[楓紅葉/横浜・四季の森公園] [いろは紅葉/横浜・四季の森公園]
★冬もみぢ端山の草木禽啼かず 蛇笏
★沈む日を子に拝むませぬ冬紅葉 かな女
★冬紅葉濃しや峡田の行きどまり 秋櫻子
★一すじの道冬紅葉濃かりけり 貞
★冬紅葉堂塔谷に沈み居り 茅舎
★冬紅葉長門の国に船着きぬ 誓子
★冬紅葉美しといひ旅めきぬ 立子
★冬紅葉くれない空へ清潔に/高橋信之
★森静かに冬の紅葉を散らしている/高橋信之
★雨あとのいろはもみじの谷深し/高橋正子
十二月六日、横浜市緑区にある四季の森公園に出かけた。四季の森公園には紅葉谷と呼ばれるところがある。紅葉が素晴らしく美しいのは、秋ではなく、実際は、夜と昼の寒暖の差が激しくなる冬。この日は、雨の後の久しぶりの快晴のよい天気になった。立冬からちょうど一か月になる。紅葉谷へは、中山駅から横浜動物園行きのバスに乗り、長坂というバス停で降り、十分ほど歩いて着く公園の南口から入るコースをとった。いつもは北口から入るのだが、南口からのコースは、紅葉谷を上から下へと下る。北口からなら、下から上へ辿るコースとなる。南口に着くと、楓や欅の紅葉を風がぱらぱらと降らせている。正面の噴水は、水を霧のように丸く吹上げている。
南口から辿り始めるとすぐに、イロハモミジの紅葉に出会う。どれも大木で、上から覆いかぶさるように枝を広げている。枝の下に入りると、空が透けている辺りが最も美しい。黒い枝も捨てがたい。暗い部分も、明るい部分も、紅葉の葉がはっきりとその形に見える。イロハモミジは葉の切れが七で、「いろはにほへと」と数えられるから付いた名という。「いろはにほへと」ならば、次に「ちりぬるを」がくるが、散った紅葉を踏みながら、なるほどと「いろはの歌」を思った。イロハモミジの葉が散らばり、また重なる姿を見ると子どものころから親しんだ、千代紙とか風呂敷の柄がすぐに思い浮かんだ。ひと固まりの紅葉の林を過ぎると、白樫などの多い林となる。林は少し急な下りになり、どこから飛んできたのか朴の大きな落葉がところどころに散らばっている。どこかにあるらしいが、木は見当たらない。椿が固まってあるが日当たりがなく蕾はついていない。その谷を下ってゆくと明るい紅葉の重なりが見えるが、ここが紅葉谷と呼ばれるところ。イロハモミジの紅葉に続き、オオモミジの紅葉が混じってくる。終わり近くにコウチワカエデがある。もう、一週間も立つとこの紅葉は散りつくしてしまうのではと思われた。風がしきりに紅葉を誘って、流れるように紅葉が散っている。路は夜の雨のあととあって、踏めば落葉から水がにじむ。紅葉の木は十メートルを超えているのもある。見上げてばかり写真を撮るので、首が痛くなる。私はカメラが本職ではないのだが、俳句の写真をと思うと、これという写真を撮りたい。数多くと思うが、何事も、集中力と体力の問題と思えて、最後には写真を撮るのがいやになったくらいだ。
下に目をやる。いろんな紅葉が散り重なっている。一つ一つ紅葉を見るが、完璧に美しい葉はない。どこか痛んだりしている。しかし、重なれば、美しいの。雨水の溜まった大きな葉がつくばいのようになって、紅葉を載せている。木橋に一列に紅葉が載っている。こんどは、私の肩辺りを見ると、くぬぎの黄葉がいい色になっている。葉の形も黄いろから茶色を持つ葉の色は森の色。紅葉谷と言えども、ほかの木の黄葉混じるのがいい。谷紅葉は、夜はしんと独りになるのだろう。思えば、少し怖いが、朝が来ればまた、その色を取り戻すだろう。紅葉谷の終わりは、天狗の団扇に似た、コウチワカエデ。黄みどりがかったこの楽しい形を最後に、今日の紅葉狩りを終わりとした。
◇生活する花たち「柊・茶の花・錦木紅葉」(横浜日吉本町)
★栴檀の実の散らばりに湖晴るる 正子
栴檀の実も散らばる冬も本番を迎えたころになれば、空気も澄んで晴れた日の湖もきれいなことでしょう。(高橋秀之)
○今日の俳句
冬紅葉向こうに大きな空がある/高橋秀之
冬紅葉の向こうに見えるものが「大きな空」である。「大きな」がこの句の内容の良さで、読み手にもその空を実感させてくれる。(高橋正子)
○冬紅葉
[楓紅葉/横浜・四季の森公園] [いろは紅葉/横浜・四季の森公園]
★冬もみぢ端山の草木禽啼かず 蛇笏
★沈む日を子に拝むませぬ冬紅葉 かな女
★冬紅葉濃しや峡田の行きどまり 秋櫻子
★一すじの道冬紅葉濃かりけり 貞
★冬紅葉堂塔谷に沈み居り 茅舎
★冬紅葉長門の国に船着きぬ 誓子
★冬紅葉美しといひ旅めきぬ 立子
★冬紅葉くれない空へ清潔に/高橋信之
★森静かに冬の紅葉を散らしている/高橋信之
★雨あとのいろはもみじの谷深し/高橋正子
十二月六日、横浜市緑区にある四季の森公園に出かけた。四季の森公園には紅葉谷と呼ばれるところがある。紅葉が素晴らしく美しいのは、秋ではなく、実際は、夜と昼の寒暖の差が激しくなる冬。この日は、雨の後の久しぶりの快晴のよい天気になった。立冬からちょうど一か月になる。紅葉谷へは、中山駅から横浜動物園行きのバスに乗り、長坂というバス停で降り、十分ほど歩いて着く公園の南口から入るコースをとった。いつもは北口から入るのだが、南口からのコースは、紅葉谷を上から下へと下る。北口からなら、下から上へ辿るコースとなる。南口に着くと、楓や欅の紅葉を風がぱらぱらと降らせている。正面の噴水は、水を霧のように丸く吹上げている。
南口から辿り始めるとすぐに、イロハモミジの紅葉に出会う。どれも大木で、上から覆いかぶさるように枝を広げている。枝の下に入りると、空が透けている辺りが最も美しい。黒い枝も捨てがたい。暗い部分も、明るい部分も、紅葉の葉がはっきりとその形に見える。イロハモミジは葉の切れが七で、「いろはにほへと」と数えられるから付いた名という。「いろはにほへと」ならば、次に「ちりぬるを」がくるが、散った紅葉を踏みながら、なるほどと「いろはの歌」を思った。イロハモミジの葉が散らばり、また重なる姿を見ると子どものころから親しんだ、千代紙とか風呂敷の柄がすぐに思い浮かんだ。ひと固まりの紅葉の林を過ぎると、白樫などの多い林となる。林は少し急な下りになり、どこから飛んできたのか朴の大きな落葉がところどころに散らばっている。どこかにあるらしいが、木は見当たらない。椿が固まってあるが日当たりがなく蕾はついていない。その谷を下ってゆくと明るい紅葉の重なりが見えるが、ここが紅葉谷と呼ばれるところ。イロハモミジの紅葉に続き、オオモミジの紅葉が混じってくる。終わり近くにコウチワカエデがある。もう、一週間も立つとこの紅葉は散りつくしてしまうのではと思われた。風がしきりに紅葉を誘って、流れるように紅葉が散っている。路は夜の雨のあととあって、踏めば落葉から水がにじむ。紅葉の木は十メートルを超えているのもある。見上げてばかり写真を撮るので、首が痛くなる。私はカメラが本職ではないのだが、俳句の写真をと思うと、これという写真を撮りたい。数多くと思うが、何事も、集中力と体力の問題と思えて、最後には写真を撮るのがいやになったくらいだ。
下に目をやる。いろんな紅葉が散り重なっている。一つ一つ紅葉を見るが、完璧に美しい葉はない。どこか痛んだりしている。しかし、重なれば、美しいの。雨水の溜まった大きな葉がつくばいのようになって、紅葉を載せている。木橋に一列に紅葉が載っている。こんどは、私の肩辺りを見ると、くぬぎの黄葉がいい色になっている。葉の形も黄いろから茶色を持つ葉の色は森の色。紅葉谷と言えども、ほかの木の黄葉混じるのがいい。谷紅葉は、夜はしんと独りになるのだろう。思えば、少し怖いが、朝が来ればまた、その色を取り戻すだろう。紅葉谷の終わりは、天狗の団扇に似た、コウチワカエデ。黄みどりがかったこの楽しい形を最後に、今日の紅葉狩りを終わりとした。
◇生活する花たち「柊・茶の花・錦木紅葉」(横浜日吉本町)