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ジャン・アレチボルトの冒険

ジャンルを問わず、思いついたことを、書いてみます。

命名権ビジネスの落とし穴

2007-12-23 15:09:35 | 政治
もしもの話。

子供が生まれたとき、ミラクルクリーナーという会社から連絡がくる。

「一億円払うので、お子様の名前を、ミラクルクリーナーにして頂けませんか」

この申し出を受ける親は、どのくらいいるだろう。

名前は、さまざまなものを映し出す、鏡のようなものである。「雄太郎」と聞いて、可愛い女の子を連想するひとはいない。「美聡」という名前からは、美しく聡明な女性になって欲しいという、親の願いがにじみ出ている。

また、年齢を重ねて、名前が、本人を形作っていくことも多い。「美空ひばり」は、努力を積み上げて、美空ひばりになっていった。「高木ブー」は、時間をかけて、コメディアンとしての高木ブーを、作りあげてきた。

「山田ミラクルクリーナー」という名前のひとは、一生「ミラクルクリーナー」を、背負い続けなければならない。その名前の持つ、あらゆるものを、引き受けなければならない。もし、会社自体が、不祥事を起こして、世間から冷たい目で見られたら、その人は、自身の人生でも、マイナスイメージと闘わなければならない。

埼玉県所沢に、西武ライオンズが本拠とする、ドーム型球場がある。名前は、「グッドウィルドーム」。さらに、二軍のチーム名も、「グッドウィル」。西武球団が、命名権を、5年25億円で売った結果である。

「グッドウィルドーム」では、どこにあるのかさえ分からない。「グッドウィル」からは、チームとしての、意気込みや、チームカラーなど、何一つ、伝わってこない。

今日の朝日新聞朝刊30面によると、西武は、グッドウィル・グループとの、この命名権契約を、解除するとのこと。グッドウィルの違法行為の摘発、処分を受けての動きである。

歓迎できる決定だが、これまでに被ったマイナスは、小さくない。もちろん、被害者は、西武ではない。

選手にとって、チーム名や球場名は、その元に結集する、旗のようなものである。団結力を誇示する旗が、知らない会社の名前で、果たして、闘志がわき上がるだろうか。また、ファンにとっては、チームは、我が子のようなものである。自分の子供に、無理矢理、「グッドウィル」という名前を付けられたら、親はどう感じるだろう。

さらに、所沢市民から見ると、公共性の高い、球場という施設に、縁もゆかりもない、会社の名前が付けられる。球場名に、「所沢」も、「埼玉」も入っていない。道路の看板の書き直しなど、税金を使う部分があることを考え合わせると、決して、愉快な話ではない。

こういった、選手、ファン、市民の不満は、グッドウィル・グループ以上に、西武へ向かうだろう。西武グループは、今回の件で、自分たちも、少なからず、世間の信頼を失ったことを、肝に銘じるべきだ。

名前は、単なるラベルではない。心の一部分と言ってもいいほど、大切なものである。そのことを忘れて、安易に命名権を売ると、大きな落とし穴が待っている。

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