以前、「マシューTV」で、マシューこと藤井隆が、ゲストの保田圭に、ぼやいたことがあります。
「番組が始まったころ、モーニング娘。のメンバーが、毎週一人づつ、出る約束だったのに、全然、出てくれない。あんたたち、どうして、出てくれないの?」
深夜の人気番組に、毎回、メンバーを一人づつ、出してくれる。アイドルとして、こんな有り難い話はない。しかし、どういうわけか、モー娘。側の都合で、出演を止めてしまう。
きっと、コンサートで忙しかったのでしょう。
モー娘。としての舞台活動を優先して、個々のメンバーのテレビ出演を断る。前回第二部では、このような、「ばら売り」手法を拒否する姿勢について、書きました。
今回は、スキャンダルフリーのイメージ戦略についてです。
(その三) 「よい子」イメージの足枷 ~ 得られなかったティーンの共感
ハロプロ運動会のリレーでのこと。遅れた安倍なつみに向かって、ファンが叫んだそうだ。
「なっち、羽を出せ!」
天使だから、飛べば勝てるじゃないか、ということらしい(笑)。
でも、これは、笑ってばかりもいられない話である。このファンは、数十万円から数百万円を、モー娘。につぎ込んでいる可能性が高い。こういった大口顧客を失わないためには、安倍なつみは、「羽を隠した天使」であり続けなければならない。
二十歳を越えて、いささか厳しい話である。
ロックヴォーカリストオーディションの落選組から結成された、モー娘。は、国民的アイドルになるにつれて、いつのまにか、純真無垢な少女集団に、されてしまった。
三期の後藤真希以降、新メンバーが、ほとんど中学生以下だったことは、この傾向に拍車をかけた。また、ミニモニ。の大ヒットや、童謡などのCDを出して、子供向け戦略を進めたことも、スキャンダルフリーのイメージを定着させた。
こういった純真無垢なイメージは、幅広く、世間受けはよかっただろう。NHKの担当者は、モー娘。の番組を作るにしても、紅白歌合戦の選考でも、スキャンダルを考慮する必要はない。
また、男性ファンの受けも、悪くなかったはずである。なっちに天使を見ているファンや、辻加護の幼児性の中に、癒しを感じているファンなど、かなりの数に上っていた。
加えて、当然のことだが、好きな女性アイドルが、誰かと付き合っていると聞いて、気分のよくなる男性ファンは、少ない。辻も、加護も、いずれ大人になったら、恋愛して、彼氏が出来て、とは思っているが、今は、まだまだ。スキャンダルフリーというのは、そういう安心感を与えてくれる。これは、セールスを安定化させたと思う。
しかし、辻加護が、中学生だったとしても、私生活で、恋愛フリーであるとは断言できない。むしろ、誰かを好きになって、付き合うのは、今の時代を考えれば、むしろ普通のことである。
女子中学生や、女子高生は、その純真無垢のイメージの中に、嘘のにおいを感じ取ったかもしれない。また、モー娘。が、つんく♂の楽曲を、忠実に歌い踊る様から、「大人の言うことをよく聞く、よい子集団」という、レッテルを貼られてしまった可能性もある。
その結果、オーディションには、何万という数の少女が、応募してくる一方、モー娘。のCDを買う女子中高生は、少ないという、奇妙なことになってしまった。しかし、学校という、究極の口コミ装置のためだと思うが、この世代の女性ファンの力は、圧倒的なものがある。
やがて、モー娘。は、オリコンで、浜崎あゆみに勝てなくなっていった。
六期メンバーの田中れいなは、オーディションに登場したとき、鮮やかにファッショナブルな服を着て歌っていた。彼女の私服のファッションセンスは、目を見張るものがあった。しかし、その後、テレビに出ている田中れいなのファッションは、あまりぱっとしない。近所の女の子といった、当たり障りのない、服ばかりである。
本人のセンスが素晴らしければ、スタイリストなど、いらない。田中れいなに、コーディネイトさせればいい。彼女は、その年頃の女の子の目を引くような、そういったファッションを、自分で揃えるだろう。同世代の、ファッションリーダーも、夢ではない。
モー娘。は、個々のメンバーの、本当の個性を、引き出すことに、失敗している。モー娘。の立派な一員になることばかり気にかけて、一人一人が本来持っている魅力を、ないがしろにしてきた。
個々を見れば、そこには、さまざまな個性を持った、ティーンの女の子がいる。おしゃれが好きな子、化粧に夢中な子、おしゃべりが大好きな子、ショッピングに夢中な子、マンガやアニメにのめり込む子。さらに、その奥には、好きな男の子や、恋愛や、セックスへの興味という、当たり前の心象風景が広がっている。
モー娘。ほど、こういった、等身大の人間像が、見えにくいアイドルグループはいない。スキャンダルフリーのイメージが、自己主張する生身の少女を、かき消しているかのようである。それが、同世代の少女が離れていく原因となり、セールス低迷の大きな要因となっている可能性が高い。
同世代の共感を得られなかった。これこそが、「よい子」イメージがもたらした、最大のマイナスかもしれない。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。この第三部で、終わるつもりだったのですが、最後に、もう一部、書くかもしれません。検討中ですが、その際は、また読んでやって下さい。
「番組が始まったころ、モーニング娘。のメンバーが、毎週一人づつ、出る約束だったのに、全然、出てくれない。あんたたち、どうして、出てくれないの?」
深夜の人気番組に、毎回、メンバーを一人づつ、出してくれる。アイドルとして、こんな有り難い話はない。しかし、どういうわけか、モー娘。側の都合で、出演を止めてしまう。
きっと、コンサートで忙しかったのでしょう。
モー娘。としての舞台活動を優先して、個々のメンバーのテレビ出演を断る。前回第二部では、このような、「ばら売り」手法を拒否する姿勢について、書きました。
今回は、スキャンダルフリーのイメージ戦略についてです。
(その三) 「よい子」イメージの足枷 ~ 得られなかったティーンの共感
ハロプロ運動会のリレーでのこと。遅れた安倍なつみに向かって、ファンが叫んだそうだ。
「なっち、羽を出せ!」
天使だから、飛べば勝てるじゃないか、ということらしい(笑)。
でも、これは、笑ってばかりもいられない話である。このファンは、数十万円から数百万円を、モー娘。につぎ込んでいる可能性が高い。こういった大口顧客を失わないためには、安倍なつみは、「羽を隠した天使」であり続けなければならない。
二十歳を越えて、いささか厳しい話である。
ロックヴォーカリストオーディションの落選組から結成された、モー娘。は、国民的アイドルになるにつれて、いつのまにか、純真無垢な少女集団に、されてしまった。
三期の後藤真希以降、新メンバーが、ほとんど中学生以下だったことは、この傾向に拍車をかけた。また、ミニモニ。の大ヒットや、童謡などのCDを出して、子供向け戦略を進めたことも、スキャンダルフリーのイメージを定着させた。
こういった純真無垢なイメージは、幅広く、世間受けはよかっただろう。NHKの担当者は、モー娘。の番組を作るにしても、紅白歌合戦の選考でも、スキャンダルを考慮する必要はない。
また、男性ファンの受けも、悪くなかったはずである。なっちに天使を見ているファンや、辻加護の幼児性の中に、癒しを感じているファンなど、かなりの数に上っていた。
加えて、当然のことだが、好きな女性アイドルが、誰かと付き合っていると聞いて、気分のよくなる男性ファンは、少ない。辻も、加護も、いずれ大人になったら、恋愛して、彼氏が出来て、とは思っているが、今は、まだまだ。スキャンダルフリーというのは、そういう安心感を与えてくれる。これは、セールスを安定化させたと思う。
しかし、辻加護が、中学生だったとしても、私生活で、恋愛フリーであるとは断言できない。むしろ、誰かを好きになって、付き合うのは、今の時代を考えれば、むしろ普通のことである。
女子中学生や、女子高生は、その純真無垢のイメージの中に、嘘のにおいを感じ取ったかもしれない。また、モー娘。が、つんく♂の楽曲を、忠実に歌い踊る様から、「大人の言うことをよく聞く、よい子集団」という、レッテルを貼られてしまった可能性もある。
その結果、オーディションには、何万という数の少女が、応募してくる一方、モー娘。のCDを買う女子中高生は、少ないという、奇妙なことになってしまった。しかし、学校という、究極の口コミ装置のためだと思うが、この世代の女性ファンの力は、圧倒的なものがある。
やがて、モー娘。は、オリコンで、浜崎あゆみに勝てなくなっていった。
六期メンバーの田中れいなは、オーディションに登場したとき、鮮やかにファッショナブルな服を着て歌っていた。彼女の私服のファッションセンスは、目を見張るものがあった。しかし、その後、テレビに出ている田中れいなのファッションは、あまりぱっとしない。近所の女の子といった、当たり障りのない、服ばかりである。
本人のセンスが素晴らしければ、スタイリストなど、いらない。田中れいなに、コーディネイトさせればいい。彼女は、その年頃の女の子の目を引くような、そういったファッションを、自分で揃えるだろう。同世代の、ファッションリーダーも、夢ではない。
モー娘。は、個々のメンバーの、本当の個性を、引き出すことに、失敗している。モー娘。の立派な一員になることばかり気にかけて、一人一人が本来持っている魅力を、ないがしろにしてきた。
個々を見れば、そこには、さまざまな個性を持った、ティーンの女の子がいる。おしゃれが好きな子、化粧に夢中な子、おしゃべりが大好きな子、ショッピングに夢中な子、マンガやアニメにのめり込む子。さらに、その奥には、好きな男の子や、恋愛や、セックスへの興味という、当たり前の心象風景が広がっている。
モー娘。ほど、こういった、等身大の人間像が、見えにくいアイドルグループはいない。スキャンダルフリーのイメージが、自己主張する生身の少女を、かき消しているかのようである。それが、同世代の少女が離れていく原因となり、セールス低迷の大きな要因となっている可能性が高い。
同世代の共感を得られなかった。これこそが、「よい子」イメージがもたらした、最大のマイナスかもしれない。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。この第三部で、終わるつもりだったのですが、最後に、もう一部、書くかもしれません。検討中ですが、その際は、また読んでやって下さい。