goo blog サービス終了のお知らせ 

ジャン・アレチボルトの冒険

ジャンルを問わず、思いついたことを、書いてみます。

パキスタンの冷たい冬(2) ~ 総選挙の行方

2007-12-30 18:40:08 | 政治
パキスタン各地で、ブット支持者による抗議行動が起こり、治安部隊と衝突しているらしい。政府は、暗殺犯を、アルカイダと断定しているが、支持者らは、政権の関与を疑っているようだ。

騒然たる状況の中で、欧米各国は、ムシャラフ大統領に、総選挙の、予定通りの実施を促している。アメリカ政府高官の言葉を借りれば、選挙の延期は、ブット氏を暗殺した連中の勝利を意味する、という理屈だ。

しかし、本当に、このまま、来年1月8日に選挙を行って、よいのだろうか?

欧米先進国は、とにかく選挙さえすれば、良い方向へ前進するのだと、盲目的に信じている気がしてならない。しかし、例えば、イラクでは、スンニ派政党の多くがボイコットを表明する中で、選挙を強行したため、シーア派とクルド人の政府が出来てしまった。結果、スンニ派は、国家建設に参加できなくなり、武力闘争の道に進まざるを得なくなった。

現在、米軍は、サドル師に忠誠を誓うシーア派の兵士や警官と、共同して、スンニ派武装勢力を掃討している。治安回復にはほど遠い、歪んだ構図である。

今回の選挙に対しては、ブット氏亡き後、急速に存在感を高めている、シャリフ元首相が、「自由で公平な選挙を期待できない」として、ボイコットを表明している。

そもそも、ムシャラフ政権は、つい最近まで、戒厳令を敷いていた。野党は、自由な選挙運動など、出来るはずもない。事実、ブット氏も、軟禁状態に置かれて、外出すらままならなかった。

外出が可能になって、遊説を開始した途端に、暗殺。ブット支持者が、ムシャラフ政権へ、不信感を募らせるのは、当然のことだ。今の状態では、人民党の選挙参加すら、危うい。

予定通り選挙を行って、野党ボイコットで、与党が大勝。議会には、シャリフ氏もいないし、ブット氏の人民党もいない。そうなった場合に、パキスタンの政情が安定化するだろうか?野党勢力が、一層激しく、政府と対立するのは、目に見えている。

この選挙は、誰かを勝たせるためではなく、国内勢力を、幅広く政治参加させることが、一番の目的であるはずだ。それが、パキスタンを安定化させる、唯一の方法である。野党の参加がなければ、やる意味がない。

総選挙の時期を延期して、野党に、選挙運動の時間を、十分に与える。国際社会が、公正な選挙の実施を監視する。いくつかの手を打った後で、実施しても、遅くはない。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする