goo blog サービス終了のお知らせ 

ゆっくりかえろう

散歩と料理

ブログ中の画像・文章の無断使用を禁じます。

サンカ奇談

2015-05-11 | 読書

三角寛氏著 昭和の人気作家だった氏は 実話小説と言うジャンルを開きました。書かれている事が全部事実だと思いがちですが、実際は創作の部分が混じっており、そこがややこしい研究書なら研究書、小説なら小説とはっきりして欲しいところです。

私が想像するに、時代がそれを許さない軍国主義で真実が書けなかったのではないかと思われます。

サンカの正体がはっきりしないのは、彼らの存在が許されないご時世であった為に(彼らは無戸籍者) 肝心なところはぼかしてあります。

作者は当時の警察官や憲兵を意識的に尊敬して描いていますが 事実は強烈な警察軍人批判が根底に有ると思います。

軍国主義は創作に深い傷を与えるのです。

事実は闇の中。しかしロマンが有ります。何故ならこれは伝奇小説でもあるからです。

これが全部事実なら物凄く面白いお話になります。 


荒神絵巻

2015-05-09 | 読書

 原作 宮部みゆき 絵と文章 こうの史代 絵物語 絵本というより挿し絵本というべき作品です。

絵が沢山出ていて地図や人物などかき分けてあるので、分かり易くなっていますが、それでも登場人物が多いので頭の中を整理しないとなりません。

お話は人を喰う妖怪伝説ですが 私は怪物がうわばみを想像していたのに、出てきた怪物がチラノザウルスなのは 思わず笑ってしまいました。

具体的な絵にしなければならない絵巻の難しさがここにあるようです。お話は因果応報を下敷きにしてあり、よく出来ています。

絵もキレイだし読後感は爽やかです。

表紙のお姉さんがなかなかセクシーなので 違う方面の期待をしてしまった私は愚かです。

はい。


剣 其の弐

2015-04-25 | 読書

 五味康祐(ごみやすすけ)氏著 昭和に亡くなった作家 ひところ引っ張りだこだった人で 私はタレントとしてしか憶えはありませんが 調べてみると芥川賞作家でした。

作品は剣豪小説で まさしく侍とは死ぬことと見つけたりを地でいくような作品群です。

しかも家来の生き方で殿様や上司はその範囲に含まれず 上が間違っていても 従うのです。

自分の意見を通すなら 死んで諫めます。

日本人の精神的源流がここに有りました。

侍でなければ 理解を超えています。

でもお話は暗いものではなく、分かり易く面白い面も有り楽しめます。

歴史の裏側を確かな筆致で鮮やかに描き出していてかなり面白いです。


サンカ物語

2015-04-11 | 読書

 サンカ研究家、そしてサンカ文学を書いた三角寛氏著 

私の読んだのは小説の方でした。

殆どサンカについての予備知識がないと分かり難いと思いました。 小説としては通俗的で男尊女卑的思想が濃く身勝手な主人公達は私は好きになれず、結果後味の悪いものを感じました。

その前にサンカの説明をしなければなりません。サンカとは一般的にはやまの民とか原日本人とかいわれる人々のことで戸籍を持たない非征服民とも日本のジプシーとも呼ばれる人々の総称です。

その正体は詳らかではありません。

お話がいきなり始まっているので、予備知識がないとちんぷんかんぷんです。

山の民と聞こえはいいですが、テント生活をしながら時には野荒らし 畑泥棒 大道芸人 偽神人 笊作り 竹細工と山の中では木の実を食べ魚を取り暮らしているグループでやがて為政者にとって都合の悪い人間として、潰され定住者に組み入れられたようです。

日露戦争の頃には、いなくなってしまいました。

その独特の生活様式 掟 行動 言語 文字など謎が多く、忍者と近いとか原日本人だとか色々な説があります。

忘れられた裏の歴史です。私は秀吉がこの人達の仲間ではなかったのかと推理しています 秀吉の行動や考え方が独創的だからです。


チクロ幼稚園

2015-02-17 | 読書

 西原理恵子氏著  

初期作品 漫画です。一所懸命さが伝わるようですが 当時からブラック度が強いアクの強い作品です。

私はキャラクターの中でも弟君が好きです。

リエえちゃんは悪童から天使のように変わっていきますが ブラックさはむしろ増してゆきます。

……で幼稚園といいながら 幼稚園は出て来ないのです。

上下巻


妖都

2015-01-26 | 読書

 津原泰水氏著  スプラッタは苦手なのですが 小説はわりと平気です。

想像する分には 自分で読み飛ばしたり 入り込まないようにすればいいのですから。

セクシャルな描写は女性好みだし スプラッタ好きの人には ハズレなしの題材です。

今まで考えてみたこともなかったのですが ふたなり(両性具有)というのは、理屈では単性生殖する可能性があるのか。

神の領域にズブズブ入っていこうとする本作は、興味深いのです。

日本神話までは理解出来そうですが、ポリネシア ミクロネシア神話までは及びませんでした。勉強になります。

とても面白い作品です。

イザナギ イザナミがこんなに深いとは 恐れ入りました。

アニメ化したらさぞかし面白いでしょう。

複雑怪奇ですけど。 


のきばしら

2015-01-08 | 読書

 宮部みゆき氏他共著 架空の刀 軒柱を廻る誕生から終焉までをリレー創作をした競作。

それぞれの作家の持ち味を活かし、歴史物 政治もの 怪奇もの 戦記もの 最後は昭和の終戦までを描いた秀作の数々。

まるで本物の刀が有るようなお話は作家間の打合せがよく練られています。

どの作家さんも面白いお話でした。

私は苦手なジャンルがあり 途中退屈な時も在りましたが、最後まで読んでよかったと思います。かなりの秀作揃いです。

然も架空のお話なのにリアリティーが高く感じるのは 素晴らしいと思いました。

私の拙い説明は僭越ですので是非実際読んで頂きたいです。


たぶんねこ

2015-01-04 | 読書

 畠中恵氏著  

久しぶりに小説らしい楽しみを味わいました。

本の楽しみは映像が見えないからこその楽しみがあるのです。

あれこれ想像するからこそ物語は何倍にも膨らむのです。

若旦那は今日も優しく明るく元気で 世話好きで正義感が強く でもいつものように熱を出して寝ています。

だけど具合のいい時は あやかし助け人助け 日夜努力しています。 

今回は河童にもらった緑の玉の話 お見合いの話 幽霊の就職のお話他2編です。


夕陽の梨 せきようのなし

2014-12-31 | 読書

 仁木英之氏著 

副題は五代英雄伝 ハードです。

ここには僕僕先生のようなのんびりした物語も 千里伝のようなファンタジーもありません。

ただ、主人公には 王弁くんや千里くんの幼さの面影はありそこがこの物語の息抜きでもあります。

主人公の周りの大切な人は次々死んでゆき 彼に喜びはありません。

ひたすらハードボイルドです。

今まで読んだどの仁木先生の作品にもない 骨太の人間ドラマがあります。

英雄の資質は 強さでも地位や人望でも名誉でもなく それらを超える人の願いを受けきる器であるということがここでは示されているようです。

大作の続きを是非読みたくなる お薦めの名作です。


赤い竪琴

2014-12-24 | 読書

 津原泰水氏著  一番好きな作家さん。

最初の予想を裏切り ファンタジーでもSFでもなく寧ろ文学と呼びたいシロモノでした。

フリーの本のレイアウターと古い楽器制作職人との恋。

話はゆっくり進みなかなか退屈で好きじゃないと読めません。

ただどこか危険の匂いがぷんぷんして何かを期待させます。

彼と彼女の運命の糸は、50年も前の過去に操られ 二人の男女の想いにぴったり重なります。

彼と彼女の台詞が洒落ています。

大阪人や地方人には絶対話せない 聞くべき会話。

先回り後追いしながら鯨が海をじゃれあうように戯れる。

かなわないなと思いました。羨ましいと思いました。

何で東京に産まれなかったのかと思いました。

………突然話は急転し深刻な話に変わりました。

最後の一ページで突然涙腺が緩みました。

 

やはりこの作家さん

とても好きです。お勧めはしませんが 私と思いを共有出来るなら幸いです。


黄泉坂の娘たち

2014-12-23 | 読書

 仁木英之氏著 黄泉坂案内人の次作品。

迷える魂を説き伏せ 無事あの世へ送り届ける彩葉と速人コンビの魂送迎車のお話です。

命とは何か、願いとは何かを語りかけてくるようです。

前作程厄介な展開にはならず、焦れったい思いは残りますが、私は本作品の方がすっきりしていて好きです。

キャストも全員好ましいのは近年珍しい事です。

余談ですが物語に登場するデュセンバーグはとてもマニアックな自動車です。

 奈良や名古屋のピンポイントの地名といい 作者のこだわりを感じます。

 

♪鹿鳴館では夜毎のワルツのリズムに合わせて ポンパドールの花咲きゃデューセンバーグを夢見る ハハハァン ♪

(タイムマシンにお願い サディスティック ミカバンド)


一鬼夜行 鬼の祝言

2014-12-19 | 読書

 小松エメル氏著 人気書き下ろしシリーズ なにやらぶっきらぼうの題名は読者を誤解させ はらはらさせる意図を感じさせます。

読者は素直に騙される事が 物語に入っていけるコツです。

作者は丁寧にストーリーのからくりを作り上げ まどろっこしいばかりの因縁話を構築していますが もう少し手を抜いて下さると 私のような理解力の足りない読者には有り難いです。

ストーリーの規模が初期の頃の妖怪長屋的ほんわか感は影を潜め 壮大な友情ドラマの様相を呈しているのは 登場人物の成長を感じさせます。

ここへきてやっと本音が言えるようになった主人公喜蔵がじれったくいじらしく、ドラマのクライマックスはここしかないと感じさせます。

反面もう一人の 鬼の小春の影が薄くなるのは仕方がないでしょう。

お話は次で終わりなのでしょうか?

小春の最大の危機を迎え波乱の展開を迎えてドキドキして続きます。

この気持ちどうしてくれようか!


黄泉坂案内人

2014-12-11 | 読書

 仁木英之氏著 僕僕先生シリーズでお馴染みの仁木先生の現代劇ファンタジー。

ふとしたことからあの世とこの世を結ぶタクシーを運転する羽目になった男の悲喜劇。

仁木先生の不思議な土地勘の詳しさや死生観の一端が分かる一冊です。

舞台に奈良や名古屋市の一部が出てきますが、やけに正確で詳しく驚きます。

反対に食べ物に関してはあっさりとした表現で 知ったかぶりをしない姿勢は好感が持てます。

話は諄いくらい説明的文章ですが 話にのめり込むと知らずに涙腺を刺激します。

仁木先生の作品はキャラクターを大事にしますが決して遊ばせること無くきちんと描く所が好きです。

無闇に沢山の登場人物を使わず  しっかり物語は進みます。


つくもがみあそぼうよ

2014-11-18 | 読書

畠中恵著 前作つくもがみ貸しますの続きの話ながら、本作は主人公が変わってます。

 前作つくもがみ貸しますでは 古道具レンタル屋の出雲屋夫婦が主人公でしたが 本作はその子供と友達の少年探偵団的お話になっています。

私はなかなか話に馴染めず最後まで読んでしまいましたが 最後のエピソードでほろっときて、やられてしまいました。畠中ワールドは手強いです。

しゃばけシリーズのあやかしに比べ個性やインパクトに欠けると言う印象は拭えませんが、子ども達が主人公ならそれも納得出来ます。

女性作家ならではの視点が光ります。

つくもがみの性格が画一的なのは やや面白みに欠けるかも。(個人的意見ですがまだ作品数が少なく新鮮で自由気ままなところが魅力です。

 


童子の輪舞曲 (ロンド) 僕僕先生

2014-11-17 | 読書

 仁木英之氏著 

シリーズ七作目 この作品は外伝ともいうべきものです。

旅のおまけというより雨の日の王弁くん一行のお話、また雷の子になった菫虔くんの雷修行の話など 主題から離れ 道草のおはなしの数々。

僕僕フリークには楽しめる内容的ながら 初めての人にも分かり易いお話でしょう。

王弁くんはいつも通り どこまでもマイペースなのが笑えます。