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キマグレ競馬・備忘録

競馬、MLB、スポーツ観戦、趣味など気になる事を書いています。

本「戦後はらぺこ世代のシャッター音」

2024年05月09日 | Book
サブタイトルが「岩波写真文庫再発見」とある通り、戦後の昭和20年~30年代初めの日本を撮影した写真を集めた本に、赤瀬川源平が自身の体験と当時の様子を綴ったエッセイ。
戦後の生活を知るには、親世代の話を聞くか当時の写真やフィルムを見るしかない。当時の岩波文庫は、様々なテーマを設定して民俗写真を収集した。その写真にまつわる著者の記憶や体験のコメントがとても面白かった。 おそらく当時の写真を見ただけでは何とも思わないだろうが、実体験のコメントをつけるとその写真の持つ意味が大きくなる。これは現代のインスタやFacebookの写真にも言える。芸術写真には言葉は必要ないけれど、スナップ写真には言葉による補足があったほうが良い。
この本で取り上げたテーマは、捕鯨、肖像写真、野球、自動車、蒸気機関車、芸術、電話、造船、馬など。現代では見られなくなった物や風景をピックアップしている。
面白かったのは蛔虫をテーマとした写真。自分も蛔虫体験がある。昭和40年代初めに奄美大島に住んでいたが、当時の奄美は、昭和20年代のような雰囲気だった。電話は数軒に1台しかなく、道路は大半がダートで雨天時は水たまりだらけ、給食はクジラ肉に脱脂粉乳、日本本土とは全く違う世界だった。当然、体内に蛔虫がいるのが普通で、便に白い小さな蛆虫が一緒に出てきたり、ヒモのような蛔虫が肛門から出てきた記憶がある。当時の写真を見ながら著者のユーモラスな文章を読んでいると、当時の記憶が色々と蘇ってきた。でも、こういう昭和の写真集を見て、懐かしさを感じるのは歳を取った証拠なのかもしれない。(^^;)

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本「そして謎は残った: 伝説の登山家マロリー発見記」

2024年04月26日 | Book
「なぜエベレストに登るのか」と聞かれて、「そこに山があるから」という言葉で有名な登山家マロリーを探す調査隊を追ったノンフィクション。
マロリーは、1924年にエベレスト初登頂を目指し、同僚アーウィンとともに登山を開始するが、登山隊のメンバーにアタック中の姿を一度目撃されたのを最後に行方不明になってしまう。その後、数多の登山隊が登頂を果たすが、マロリーは70年以上も発見されなかった。捜索チームは、マロリーの登頂の謎を解くために、それまでの情報を基に探索場所を検討し、遺品捜索中にマロリーの遺体を思いがけず発見することになる。マロリー発見の感動と遺品から判断される彼らの行動の仮説がハイライトになっている。エベレストまでのマロリーの行動と調査隊の苦労が並列に話が展開していて大変面白く読み応えがあった。
マロリーの時代と現代では、ベースキャンプまでの行程は大きく異なり、移動は容易になったが、ベースキャンプからエベレスト登頂の過酷さは今も変わらない。道具は進化しているが、一番問われるのは人間の高所への適応能力だろう。 環境への順化、体力、精神力の強さが求められるが、当時の人たちは強かった。 この本では、多くの疑問に対する証明はされたが、登頂については未だに謎のまま。著者が考察した4つの仮説は解明されていないというのが、この本出版時の状況となっている。
因みに、調査結果から推測したマロリーの最期を描いた部分は、リアルな表現で読んでいるだけでゾッとした。彼の最期なんて知らなくてもいい事だけれど、では「なぜこの本を読んだのか」と聞かれたら、「そこに物語があるから」と答えたい。 私にそんなことを聞く人はいないと思うが。(^^;)

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アイザック・ニュートンの本を購入しました

2024年04月19日 | Book
以前から欲しかった絶版書が、アマゾンで格安で売っていたので買ってみました。
程度は「良い」でしたが、送られて来た本は日焼けが凄い。「松崎しげる」並み。(失礼😅)
まあ30年前の本だから、これは仕方ないかな…。古い本を買う時は、割り切りが必要です。

アイザック・ニュートンの伝記です。500ページ以上の大著。
ニュートンと言えば、昔、イギリスにお墓参りに行った事があります。

中身は新品同様。1993年当時の平凡社の新刊案内が添付されてました。
読んだ人いたのかな?
図書館で借りた事がありますが、貸出期限が気になって読めなかったので、購入することにしました。これで期限を気にすることなく、じっくり読めそうです。(^^)


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本「バスドライバーのろのろ日記」

2024年04月18日 | Book
著者は、47歳で教師から憧れのバスドライバーに転職した珍しい経歴の持ち主。
この本では、バス運転手の業務内容からバス運行のルールや懲罰、お客さんとのエピソード、迷惑な人達、バス運転手の困りごと(食事やトイレの問題等)、社内での人間関係などを紹介しており、このシリーズのいつものパターンを踏襲していて分かりやすかった。バス運転手の仕事の大変さが実感できる。社内の人間関係でゴタゴタ するのは、どの仕事でもよくある事でそれに悩んでやめてしまう人も多いが、著者は上手く立ち回って好きな仕事を続ける。教師として人前で話すのが得意であり、接客、運転も好きでバスドライバーとしての適性があった。色々な問題を抱えながらも大好きな仕事を続けるが、ドライバーとしての根本的な問題で辞めることになってしまう。 読んでいて、本人の無念さが伝わってきた。
自分も子供の頃、バスドライバーに憧れたことがあったが、この本で業務内容を知ると現実は厳しいと思った。 運転スキルだけでなく、体力や接客のスキルがないと、この仕事は務まらない。また他の交通機関同様、人の命を預かる仕事には大きな責任も伴うが、著者は教壇に立って、生徒に知識を教える事よりも、バスの運転の方が刺激的でやり甲斐を感じていたのかも。

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本「字が汚い」

2024年04月05日 | Book
自分の手書き文字の汚さに悩む著者によるルポ。著者はライターで編集者。決して頭が悪いわけではないのだが(東大卒)、文字だけは上達しない。うまく書こうとしても、子供っぽさが抜けないのが悩み。そこで一念発起して、文字練習帳の本で勉強したり、文字講座に通ったり、文房具に頼ってみるが、なかなか上達しない。担当した作家と対談したり、悪筆の文豪や政治家、野球選手の文字を調べてみたり、文字の流行(丸文字など)について考察してみたり、様々な角度から手書き文字を取り上げていてとても面白かった。最終的に著者の文字も上達はしたが、上手いかと言われるとどうかなという感じ。手描き文字は上手い下手の問題よりも、読んでもらう人を意識して書くことが重要ではないかと思う。
ちなみに自分の文字は、高校時代の国語の先生の影響が大きい。板書する文字が物凄く几帳面で綺麗な楷書だった。いつも惚れ惚れするような字で、真似してノートを取った記憶がある。でも字は上手な先生だったが、授業はあまり上手くなかった。その先生が何を教えていたのか、全く記憶がない。国語の先生よりも書道の先生になったほうが良かったかも。

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本:外山滋比古「自分史作法」

2024年03月28日 | Book
自分史を書くための心構えを説いた本。
一時期、自分史ブームというのがあった。自分の人生を振り返って、エピソードを交えながら人生を辿るのが自分史。日記と違うのは、ある程度他人の目(読者)を意識して書くことが必要で、そのためには文章修行も必要だし、読ませるテクニックも習得した方が良い。よくあるのが、ダラダラと過去の自慢話に終始すること。日経新聞に「私の履歴書」という自分史的な半自叙伝があるが、これが面白くないのはそういう人が多いから。書くためには読むとことも必要で、作家や有名人の日記や記録が参考になる。エッセイや自伝、生活の記録、日記、年譜、追悼集などを紹介しているが、著者推奨の写真やアルバムを見ながら、当時を振り返る方法が自分には参考になると思った。写真で当時の様子を見ると色んな記憶が蘇ってくる。 最後は書くための道具の話。原稿用紙や筆記具についてのアドバイスは、パソコンが使えない高齢者の方には参考になると思う。
還暦過ぎの自分も自分史には興味があるが、まだそういうものを書くような歳ではないし、著者が言う「読者を想定して書く」というのも難しい。読者になって欲しい妻は、赤の他人のゴシップには興味があるが、旦那の人生には全く興味が無い、、。(^^;)

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本「ヒトラーに傾倒した男」

2024年03月15日 | Book
NHK のドキュメンタリー本。 A級戦犯となったドイツ大使、大島浩を追ったノンフィクション。
大島浩は、幼いころから父の指導の下、エリート教育を受けドイツ大使となる。 ヒトラーとの親交を深め、日独伊三国同盟に大きな役割を果たす。ただあまりにもドイツの軍事力を信奉するあまり、日本の将来を見誤らせることになる。 彼が残した証言テープを基に、彼の生き方を紹介する。
大島浩の人生についてはほとんど知らなかった。日本の一外交官がヒトラーと親しくなった事で、歴史を大きく変えていくきっかけになったことを知って驚いた。この本の基になった証言テープに、本人しか知らないことが色々収められていて、もしこのテープがなければ歴史の裏舞台を知る事も無かった。歴史の見方を変える優れたドキュメンタリーだと思った。

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本「イングリッシュネス」

2024年03月08日 | Book
イギリス人の不文律について研究した本。 著者は社会人類学者。 
イギリスの様々な場所でフィールドワークを行い、イギリス人とは何か、根底にある不文律について紹介する。 面白かったのは競馬場の人たち。そこには他の場所とは違った風景が見られる。 言葉を交わす時は互いに謙遜し、礼儀正しく振る舞い、レースの後は相手を傷つけないように配慮して言葉を選ぶ。 お金の話は一切行われず、別の言葉でほのめかすだけ。 そういうマナーの下で楽しむ。ギャンブルなのに、お金の話を吹聴することはタブーなのだ。 競馬をすぐにお金の話に結びつけ、儲けた話を自慢しあう日本の競馬ファンを見たら、きっと下品で付き合いたくない人と思われるかも。 競馬文化、競馬人の品格の違いを感じた。

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本「なぜあの人のジョークは面白いのか?: 進化論で読み解くユーモアの科学」

2024年02月21日 | Book
ユーモアのセンスを磨くための必読書ということで、いま一つユーモアに欠ける自分が、どうすれば良いのかを考えながら読んでみた。 
「笑いとは何か」から「ジョークと文化」まで、様々なジョークの事例をあげながら進化論的?な考察を行っているが、正直なところ、あまりよくわからなかった。 著者は欧米人で、取り上げたジョークも日本人には馴染みがなく、翻訳者の補足解説を見て「なるほどそういう事か」と思うものも多かった。 中には解説されても意味がわからないものもあって、文化的背景を理解していないととても笑えない。ジョークは西欧的なもので、日本人の笑いとは異質な感じがあって、この著者の考察が日本の笑いにも当てはまるとは思えなかった。
因みに「ジョーク」と「冗談」の違いがネットに出ていました。
"「ジョーク」は心から笑える小話やとっさの面白い言葉。「冗談」も面白い話ですが、時として本音が出ることもあり、心からの笑いが出ないことがあります。日本には「落語」という笑い話が文化としてありますが、「長い笑い話」であって「冗談」とは別ものです。瞬間的反射的な「冗談」は得意でも、「小話」となると欧米には敵いません。"
笑えるネタを、そのまま反射的に話すのが冗談、組み立てて小話にするのがジョークということのようです。冗談ならスベっても誤魔化せるけれど、小話にしたジョークがスベったらショックかも。ジョークにするより、冗談で済ますほうが無難のようです。(^^;)

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本「研究者のコピペと捏造」

2024年02月12日 | Book
タイトル通りの内容。 研究者の不正について、多くの事例をもとに考察する。
研究者が不正を働くパターンは大きく分けて三つある。
〜根っからのペテン師、嘘つき
〜たまたま不正に手を染めた結果、後戻りできなくなった小心者
〜小さな不正を不正と思わない呑気者
過去には様々な不正の報告例があり、種類としては、
-盗作、盗用、剽窃
-データ洗浄画像操作と捏造
-成果の横取り
-共著者の問題
-研究論理の逸脱
-研究者の不正など
時々、研究機関の不正の問題がニュースになるが、これは氷山の一角であり、実際はもっと多くの不正が行われている可能性がある。不正の種類は、理系と文系では違いがあり、文系は文章のコピペ。理系は、データや画像の改ざんが多いらしい。理系の論文は、著作権の該当範囲が狭く、文章の類似性については、あまりうるさく言われない。実験結果の考察は、同じような結論になるからだ。なので、マスコミが自分の感覚や一般的なモラルで不正を書き立てるのも問題であり、研究者間のルールを理解すべきと言う。
研究者の世界は知らないことが多く、いろいろと勉強になった。研究というのは、高度な専門知識を駆使して行う活動であり、携わる人たちも高度なモラルを持っていると考えがちだが、実際は世間と同じレベルの道徳しか持っていない。だからこそ、研究者の不正防止の仕組みが必要という。
因みに、私も会社員時代に改ざんの心当たりがある。市場調査のデータが意図通りにならなかった時、上層部に悪い報告をしたくない直属の上司のプレッシャーに負けて、データの解釈を「前向き」に変えた事がある。(本当はダメなのに、良い話にする。いわゆる"ポジティブ"な言い回し)受け手の印象を良くする方法も改ざんに近いのだが、「前向き」な解釈であれば許される。つまり「前向き」であれば、多少の改ざんも許すモラルの無さに問題があるのかもしれない。反省…。

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本:資産寿命 人生100年時代の「お金の長寿術」&競馬

2024年01月27日 | Book
老後の資産維持の方法について指南した本。
人生100年時代の心配事は、自分の資産を減らさずに維持できるかどうかということ。 お金は人生の保険なので、資産維持のための基本的な考え方や方法を伝授する。一時期、大騒ぎになった2000万円問題も、よく見れば現実とは合わない試算であり心配することはない。 自分がどのように老後を送るかを考え、自分自身の方針があれば良い。 一番良いのは、働けるだけ働くこと。 また老後の生活は、収支をトントンにすること。年金の正しい知識を持つことも重要。資産運用は余剰資金で等々。 老後資産の本は、これまでにも何冊か読んだことがあり、著者の方法も他の著者達とほぼ同じ。
自分もネットで家計診断の話をよく見るが、時々収支が合わない大雑把なデータを提示してどうしたらよいかを相談する人がいる。 家計を把握できていないのが一番の問題だ。 他にも心配し過ぎの人、例えば退職時に家も充分な資産を持っているのに、家計相談するような人。自慢話としか思えないものあったりする。そういう話は全く参考にならない。 この本も最後に成功者の事例が出てくるが、知りたいのは成功者よりも失敗者の話。 そういう人から教訓を得ることの方が重要だと思う。

★今日の幸騎手
今週の贔屓にしている幸騎手ですが、本日のレースは不発でした。3着が最高。
明日は、是非勝ち星をお願いしたい。
それから、明日の京都メイン・シルクロードS(G3)に贔屓馬テイエムスパーダが出走します。ライバルの逃げ馬が見当たらないので、単騎逃げが期待できそう。頑張って欲しい。

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本「コード・ブレーカー 生命科学革命と人類の未来」

2024年01月17日 | Book
ゲノム編集技術クリスパーの開発経緯から、その後の特許紛争、新型コロナへの対応までを、ノーベル化学賞を受賞したジェニファー・ダウドナさんを中心に描いたノンフィクション。
ゲノム編集という言葉は知っていたが、それがどんなもので、どのような経緯で開発されたか知らなかったので大変勉強になった。 著者(アイザックソン氏)自身が編集作業を経験したり、特許やこのツールの将来の在り方についても絡んでいて、自己の見解を述べたり、研究者間の橋渡し役になっている所が普通のノンフィクションとは違っている。科学者間のポリシーの違いから、医療と生命倫理について考えさせられることも多かった。
ただ遺伝子工学については全く予備知識が無かったので、疑問に思う事も多かった。事前にもう少し勉強しておいた方が楽しく読めたと思う。

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本「世界で第何位?-日本の絶望 ランキング集」

2024年01月04日 | Book
日本の社会インフラ、医療、経済、貧富の差、少子化問題等について、世界各国とランキング形式で考察した本。
バブル崩壊、2000年代から世界における日本の位置付けが増々低下している。経済的には、未だトップランクを維持しているものの、インフラ、医療、教育等は先進国で最低レベル。アジアでも韓国や台湾よりも下位という状態だ。
原因は、景気が良かった時代にお金の使い方を誤った事、将来に向けての投資をして来なかった事、他国の状況への関心の薄さ(凄い日本と自画自賛)等々。政治が現在の問題にばかり気を取られて、将来を見据えた施策を行ってこなかった事も一因なのだろう。先進国最下位と言われても、そうなのかと思うが、アジア各国よりも下位と言われるとインパクトがある。(アジアでの先進国という優越感が損なわれるせいかも)この傾向が続くと、日本は経済大国に復活することはなく、過去の資産で細々と生きていく国になっていくのかもしれない。

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本「海賊たちは黄金を目指す: 日誌から見る海賊たちのリアルな生活、航海、そして戦闘」

2023年12月14日 | Book
イギリスの海賊バッカニアの物語。海賊達の日誌や記録をベースにしたノンフィクション。海賊といえば、よく映画に登場する荒くれ者で金銀などの財宝に目がくらみ 残虐行為も辞さない恐ろしい人達というイメージがあった。当然、世間のルールは無視、一般社会とはかけ離れ、上下関係の厳しい世界を想像していたが、重要な決め事は多数決、指導者は選挙で決める民主主義的な世界だったようだ。逆に掟を破ると追放されるし、船という狭い世界においては逃げ場がないので、それは当然の帰結だったのかもしれない。また航海は必ず記録を取り、各人が航海日誌をつけていた。海賊の中には、医者がいたり、博物学に詳しい人物(ウィリアムダンピア)もいた。数世紀後の私達が、この航海を辿ることができるのも彼らの記録があったおかげだ。
この本では、ウィリアムダンピア等数名の経歴、海賊になった経緯、カリブ海からパナマやペルー周辺の海賊活動、ライバル国スペインとの戦い、その後の逃避行、南アメリカ南端を回ってカリブ海諸島に到達し、本国へ帰還するまでの状況を細かく紹介しており、大変面白く読めた。
著者は数名の航海日誌を相互参照し、彼等の行動や考えを詳細に検証して、多少の推測も含めているが、大変信憑性の高いノンフィクションとなっている。強大なスペインに立ち向かうイギリス海賊も、スペインとイギリスが友好関係を結ぶと立場が微妙になる。海賊たちのその後の人生もいろいろ。自分の航海日誌を元に本を出版した ウィリアムダンピアは、合計3回も世界就航し、何度も危機に会いながらも生還して博物学にも大きく貢献。彼は海賊という カテゴリーを大きく超越した人物だった。 彼の波乱の人生を見ると、幸運な人物というのはこういう人のことを言うのだろうと思った。とにかく面白い本で翻訳も大変読みやすかった。

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本「ベートーヴェン」

2023年12月07日 | Book
ベートーヴェンの入門書。 この本が出版された2020年は、ベートーヴェン生誕250年ということで様々な行事が行われる予定だったが、コロナの影響で多くがキャンセルされた。 ファンにとっては残念な一年になってしまった。 
本の内容は、ベートーヴェンの生涯と代表的な曲について考察したものであり、彼の生き方や作品をざっくりと知りたい人には良い入門書だと思う。 自分もベートーベンの生涯については 、ロマンロランの本で読んだことがあったが、その後の研究で随分人物像が変わってきたらしい。 バッハやモーツァルトの時代と違って、より自分が作りたい音楽、大衆受けする音楽が求められ、その期待に応えたのがベートーヴェンだった。 自分が知らなかった事実や考察が簡潔にまとめられていて大変面白く読めた。 本文中で紹介されている曲は、是非聞いてみたいと思った。
ちなみに初めて聴いたクラシックの生演奏は、ベートーベンの交響曲第3番だった。中学生の頃、九州大学管弦楽団の演奏会があることを知り、友人を誘って聴きに行った。弦楽器の演奏を見るのが初めてで、弦が動いて音が出るのを見てとても感動したのを覚えている。コンサートは、聴くだけではなく、見る楽しみがあることを知った。

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