ヤチェク・イェルカ
原題「どうか乱暴にドアを閉めないで」
ポーランドの画家らしい。現代人の、嘘の上に建設した文明を揶揄しているかのようである。
ほとんど中身がないに等しい丘の上に立っているのが、巨大な都市ではなく、粗末な田舎家であるのが印象的だ。それも実に豊かな本物らしい家が描かれている。
嘘でもいいから、普通の生活が欲しいという、馬鹿の切ない願望が現れているのかもしれない。
長い人類の歴史を通して、馬鹿はさんざんに馬鹿をやりながら、あらゆる高い文明を食い荒らしてきたが、結局なりたかったのは、善良な普通の人間だったのだ。
親にも神にも、普通に愛される、普通のよい子だったのだ。
それを得るために、この時代、馬鹿はあらゆる暴虐をやった。他人から霊的財産を盗み、顔を盗み、人生を盗み、まったく違う自分になろうとした。本当の自分というものを、全く違うもので作ろうとしたのだ。
その結果がこれなのである。
頑丈に、本物とほぼ同じように作ったようでいて、それはドアを乱暴にしめるくらいのことで、全て崩れ去ってしまうのだ。