20日
行きのCAで出口席をゲット。となりの日本人は中国語も英語もわからないのに堂々と座っている。食事の後しばらくして、ななめ向かいの窓側に座る中国人女性客(学生風)が、苦しそうに何かを訴えている。「チョンチー」とは、「足がつった」ということらしい。通路側の日本人女性を一列後ろに移動させ、空姐が必死でマッサージを始める。なかなか回復しない。医療の心得のある人はいませんか、と放送がかかる。こんな光景は初めて見た。変な中国語を話していた数列後ろの男女のグループから、体格のよいお兄さんがやってきて空姐と交替した。とてもプロには見えない。ただのセクハラかもしれない。しかし二時間後、彼女はなんとか歩けるようになった。
夜10時に浦東に到着。先着して既に蘇州にいる指導学生(LY嬢)と中国側事務局から手机にメッセージが入っていた。事務局は小生が遅くなるということを知らなかったらしい。つい1時間ほど前まで、小生を蘇州のホテルへピックアップするつもりで、南京大学の学生が空港で待っていたらしい。マネージメントがいまいちだ。
地下鉄二号線がこんなにも早く終わるとは予想外であった。空港のスタッフは、「公交(バス)がある」という。公交三号線は虹橋賓館まで走っている。コンビニでおやつを買い込んで乗車。8年前に一度乗ったことがある。そこから今日の宿泊先(地下鉄二号線楼山関路駅から300m)まではタクシーで20元くらいだ。深夜24時にチェックイン。楽天のシステムでは18時までのチェックインが原則なので、指導学生に電話してもらっておいた。
21日
朝6時に起きて地下鉄二号線に乗り、7時に上海虹橋駅に到着。あっさり買票できたのだが、ネットで検索すると昔の情報とかいっぱい出てくるので、かなり混乱させられる。乗るぞと思っていた便は走っておらず、15分あとの便になった。お粥の朝食。高鉄の女性スタッフもここで食べているらしい。
乗ること30分。8時過ぎに蘇州園区駅に到着。最高速度は300キロであった。タクシーがホームの直下に待っていた。駅はコンパクトだ。金鶏湖のそばの工業地域は最近できたばかりで運転手もよくわからないらしい。駅からはかなり近いはずだ。本部に無線で聞いたらすぐわかったらしい。5分ちょっとで会場のホテルに到着。
日中双方の顔触れは1年前の北京にほぼ同じ。お昼のビュッフェのラーメンが臭かったので、香菜と胡椒を思いっきり入れてしまった。冬至に食べる湯圓もあった。ほかの日本人参加者(チャーハンや肉料理に飛びつく)と違い、小生は流動食(お粥、豆腐花など)が多い。華人の嗜好に近いようだ。トムヤンクンまであったが、具材は中華そのものだ。味がマッチしていない。
指導学生の発表が早まり、この日の午後に繰り上がった。原稿を読むだけなので難しくはないはずだ。淡々とこなしていく。彼女は器用だ。1年前の北京でも発表していたアメリカの華人女性研究者。小生が前回批判したのと同じポイントを、老院士の先生に突っ込まれていた。やはり小生の認識で正しかったようだ。この老院士S先生は日本語も達者な山東人。台湾・中央科学院から来ている英語の下手な先生(大陸・山東出身)と山東方言でやり取りしていて、ほかの中国人にもわからなかった。
22日
午前中小生も講演した。英語に切れがなくなっているような気がしたが、振り返ってみると、どこといって大きな問題はない。あとで何人かと話してみると、いいたいことはほぼ正確に伝わっているので、資料の見せ方は悪くないようだ。最後のパネル討論では重要なポイントをきちんと主張して、議論を喚起した。
午後はカジュアルに着替え、バスで郊外の世界遺産・同里へ。2001年に小生の上海でのボスであるS先生(華東師範大学)に招待してもらった寒山寺、白虎塔などに比べるとずいぶん軽薄な印象の観光地だ。ガイドも英語は上手だが、教養に欠ける印象を受けた。この辺の農家の次男坊が観光専門の大専を出てきたという感じの色黒のお兄さん。同里は時代劇の撮影でよく使われているらしい。ここで撮影されたドラマの監督やタレントの手形やサインが舗装にはめ込まれている。歴史的な価値のある建物とならんで、日本なら鬼怒川や箱根にありそうな「性の博物館」まであり、玉石混交の印象がぬぐえない。
清朝の時代に運河を通って皇帝がここまで遊びにきていたのは事実のようだ。上海近郊の朱家角を大規模にしたような水濠の街が広がり、鵜飼のショーまでやっている。中国側の秘書さんたちは、揚げたての臭豆腐に目がない。「デートの前に食べても大丈夫なのか?」と聞いてみたら、答えに窮していた。日本語で「猫の天空カフェ」と書かれた看板のアートの店が。中ではジブリ風の手作り絵葉書が売られている。いいたいことのよくわかる店名だ。B&B形式の宿泊施設もあった。80元。外国人OKだ。
23日
昨日までは中国科学院大気物理研究所とのセッションで、大気系の話題がメインであった。今日からは、南京大学とのセッションで、「気候と環境」という幅広いタイトルの行事である。初日は大気と水、植生。翌日が交通や社会制度などだ。小生の講演(黄河の水関連)もすんなり終わった。時間がタイトであったが、今日の英語はシャープにまとめられた。中国側の学生から、日本人っぽくない英語ですねといわれた。
夜は大宴会。15年以上前に、一緒に内蒙古の草原調査へご一緒したG先生、愛知大学の行事で毎年ご一緒している過激な社会学者Y先生。南京大学は実に人材がユニークだ。残念なのは日本人の学生が少ないこと。日本側も主に留学生が中心だ。また、日中ともに学生の英語のプレゼンは下手だ。時間の配分を考えてほしいものだ。若手の教員もしかり。
24日
午前のみの2日目もスムースに終わった。名古屋大へ留学予定の南通美人など、数名の学生が小生のブログ読者に加わった。「頼先生って30代ですよね。」って書き込みが。本当にそう思ったのかしら。
蘇州駅で買票。簡単だった。日本人は窓口でパスポートを提示すればよい。蘇州駅は機密性が悪く天井も高いので、待合室は恐ろしく寒い。出発まで1時間座って待つ。次の蘇州園区駅までは数キロなので、東京品川間のごとく徐行運転となっている。
上海駅で三号線に乗り換え、指導学生は友人との待ち合わせに向かった。三号線金沙江路駅そばの清水湾大酒店。楽天でとった200元ちょいのところ。内装はかなりダサい。夜景の写真とはかなりの落差だ。
呉中路の新疆屋台、拌面(10元)のめんがいつの間にか、きしめんのような形状に変わっていた。めんのコシはそのままだ。あんのからみがいまひとつ。オーナーが小生を覚えていた。青海省から来たという。サラ族かと聞いたら、なんでサラを知っているのか、と驚いていた。彼らは回族である。小生の「アッサラーム・アライクン」に「アライクン・アッサラーム」とアラビア語で返してきたので教養のある一家らしい。
明後日は人間ドックなので、腹ごなしに最寄りの駅まで歩くことにした。二キロくらいか。外地(武漢以外)では、例の「絶味」は鴨勃のほか、マーラータンを同時に経営しているところが多い。三号線虹橋路駅の高架下の店に入る。肉・魚系が恐ろしくまずそうなので、野菜ばっかり選んでしまった。10元。店員の女のコに、周黒鴨に比べてどこが劣るのか聞いてみようと思ったが、その実態すら知らないのかもしれない。今日は平安夜(イヴ)なので、チキンのかわりに買っていく人もいた。