1993年(29歳)に考えていたこと。先見の明があったか?
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林野庁/国有林野事業版「森林数値情報」商品化計画
東京大学先端科学技術研究センター 一ノ瀬俊明(元農林水産省林野庁技官)
<背景その1>
大規模な累積債務(元年度末で3兆円超)を抱え苦しい経営の国有林野事業。
人員に対し仕事の少ない部署も多い。
売れるものは石でも土でも売って儲けたい現状。
木材販売事業そのものでは赤字となるところが多く、他の自前の事業で収益を上げる必要性がある。
しかし土地の切り売りのみでの対応には限界がある。
国有林野事業職員の待遇や福利厚生を切り捨てるのも問題。
<背景その2>
近年の地球環境・地域環境研究の盛り上がりと高まる森林への関心。
GIS(地理情報システム)の普及。
水文学者・気象学者・生態学者等の研究にも、土地利用データに加え森林地域の詳細な地理情報データ(樹種・林相等)が要求されてきている。
従来森林に関しては、メッシュレベルの地理情報が十分整備されておらず、国土地理院の「国土数値情報」(100mメッシュで全国の土地利用をカバー)でも森林か否かがわかるのみであり、森林そのものを対象とした地理学的解析には不向きである。
<提案>
安易な組織リストラを図る前に新規事業をおこし、人材を活用すべきではないか。
余剰労働力の多い部署を中心に、「林野庁版/森林数値情報」の作成に取り組み、国有林野事業の財源としたらどうか。
<計画のイメージ>
日本全国の森林(国有林及び民有林:約2,500万ha)を対象として、流域単位(森林施業計画区単位)でファイル化し、フロッピーに入れる。
1km方眼(国土数値情報の3次メッシュを用いる。北海道局のフィールド等では幾何補正が必要となるが。)毎に、林相(天・人)(複・単)、卓越樹種(広・針)、林齢、材積等の組み合わせを記号化し、2桁の数値(00~99、ラスター形式)で記述。バイナリー形式(16進法)とすれば2桁でも 65,000通り以上の組み合わせを表現できる。
全国で 250,000メッシュ( 500キロバイト)となり、フロッピー1枚にも十分入る。
<事業の実行>
1署当たり約5人(森林官、署係長、局係員クラス)を動員すれば、全局で 1,000人程度が従事することになり、1人当たりの担当は 250メッシュとなる。毎年の更新が可能な分量といえる。1日25メッシュずつ作業する場合、年に10日だけやればよい。(年中行事的に)
ベテランの基幹作業職員や担当区主任(森林官)には現場をすみからすみまで知っている人が多く、彼らの蓄積を目に見える形で保存するという意義も大きい。航空写真、森林簿及び林班図等を対照しながら正確な情報をメッシュ(コーディングシート)におとし、表計算ソフト等を用いて入力していく。
事業のコーディングは民間のシンクタンクとかに発注(林野庁関連でも実績のある富士通エフ・アイ・ピーとか)。現場での作業マニュアル(データの並び、入力法など)の作成を依頼するだけなら 200万程度?(データの確認、商品への整形等はすべて局レベルで行う。原図との照合のようなレベルの確認作業は行わない。)
著作権、所有権等を国有林野事業自身のものとするためにも、この事業は森林総合研究所を使ってはならない。(また極めて雑用的な作業となるので、研究者の手を煩わせるべきではない。)
<運用>
販売は署別に行い、収入も署別にカウントする。林地開発需要の多い営林署管内のデータはよく売れることだろう。よく売れる営林署は、それだけ潤うことになってもよいだろう。
全国分を 500万円とすれば、1署あたり約2万円(フロッピー1枚)となる。情報そのものの価値としては20円/km2(メッシュ)となる。(もっと高くてもよいだろうか?)
ユーザーは登録制とし、シンクタンク、コンサルタント、ゼネコンを相手に100社ほどセット(フロッピーにして約250枚)で売れれば、5億円/年ほどの収益が期待される。
環境基本法等に手を入れて、「林地開発にかかわる環境アセスメントにはかならずこのデータを購入して使用するべし」としてしまえば、乱開発をも抑さえられないか。
収益金、反則金等の収入は国有林野事業特別会計へ繰り入れる。
<情報の精度>
多くの研究者は、250m~500mメッシュの精度を期待しているようである。私信アンケートによれば、全国分の価格を50万円程度とするべきと考えている人が多い。また容量の大きなものはCD-ROMでの提供を望む声が大きい。
メッシュサイズ、データ容量及び作成の手間の関係は以下のとおり。
メッシュサイズ メッシュ数(全国) 全容量 情報の価値(500万の時)
2km (400ha) 62,500 125Kbyte 80円/メッシュ
1km (100ha) 250,000 500Kbyte 20円/メッシュ
500m ( 25ha) 1,000,000 2Mbyte 5円/メッシュ
250m (6.25ha) 4,000,000 8Mbyte 1.25円/メッシュ
100m ( 1ha) 25,000,000 50Mbyte 0.2円/メッシュ
1,000人で作業する場合
1km→ 250メッシュ/人 毎年更新可
500m→ 1,000メッシュ/人 毎年更新可
250m→ 4,000メッシュ/人 隔年更新可
(ここらへんが現実的な線であろうか?)
<問題点>
数年前に森林総合研究所を中心に進められた「森林情報システム」構想は立ち消えとなったらしい。なぜか?