頼子百万里走単騎 "Riding Alone for Millions of Miles"

環境学者・地理学者 Jimmy Laai Jeun Ming(本名:一ノ瀬俊明)のエッセイ

2012年11月大連(大連民族大学設計学院の招聘)

2019-03-24 13:20:14 | 旅行

「北ガールがいるので私も来たがーる」
その後毎年通うことになる大連平壌館のM嬢に出会ったのはこの時が最初。

16日
 朝8時半に家を出発。北総鉄道東松戸駅から見えるスカイツリーと富士山の2ショットが美しい。中国南方航空は第1ターミナルに移動していた。再移動が煩わしい。出口座位を要求すると、やはり中国語能力を聞いてくる。今日は埋まっていた。空姐の1人は日本人であったが、やりとりだけでは小生が日本人と気づいていないようであった。まわりは日本での工場研修労働者風の団体であった。観光客ではなかろう。
 飛行機が早くついてしまい、W先生たちはまだ迎えに来ていなかった。前回の訪中がGWの前だったので、6か月以上たっている。携帯は通じない。空港のキオスクでプリペイドカードが入手できなかったので、このまま迎えが来なかったら、勝手にホテルへ移動するしかないのだろうか。日本の携帯のローミング設定をやっていたら、W先生と助教のC先生(32歳、女性、満族)が到着。
 今日は曇りだ。昨年のように寒くはない。食べたいものを聞かれたので、日本で調べておいた北朝鮮政府直営レストランを希望してみたら、さっそく予約専用ダイヤルへ電話。相変わらず夕方の市内は渋滞が激しい。開発区と市内が1本の幹線道路だけで結ばれていて、移動距離が長い。不合理な都市構造だ。1830にお店へ到着。まもなく、大連外国語大学のL老師夫妻も到着。ご主人は芸術系の先生、奥さんも大連民族大学の先生(デザイン学)だ。ご夫妻はフランス語もお上手だ。
 テーブルについてくれた接待員同志Mさんは、この秋に商業系の大学を出てこちらへ派遣されてきた。中国語学習歴は半年。難しい会話になると、答えに窮していた。結果、日本人である小生が時折中国語と朝鮮語の通訳に入る。周りのテーブルの中国人客がこの不思議な構造を笑っている。Mさんのチマチョゴリは鮮やかな緑でとても美しい。この店は上海で行ったいくつかの直営レストランよりずっとレベルが高い感じがした。美女軍団の質然り、料理の質然り、表演の質然り。松茸の炒め物、狗肉のスープ(ちょっと臭かった)、魚のから揚げ、松茸の蒸留酒などなど。魚の名前は「東海魚」。朝鮮語ではトルメギ。ここで小生がこの件(日本海魚だろう)でかみつくのはよろしくない。従前、失礼ながら北朝鮮料理といえば、ハマグリのガソリン焼きしか知らなかった時もあった。とても頼めない。この日の仕上げは玉流館冷麺。のど越し最高。

接待員の文秀慶(ムン・スギョン)さん(名札にも書いてある)。我々に一曲。以前ほかの都市で、携帯番号(個人で持てるとは驚き)を聞き出して接待員と店外デートに及んだ中国人客がいたらしい。当然彼は出入り禁止。彼女は強制送還。



任期3年での赴任なので、2019年現在は平壌に戻っている。この間毎回お世話になった。姓名と年齢、お店の在任期間以外に彼女の情報はない。労働党幹部のお嬢様には違いない。またいつか会えるだろうか、M同務。

She has already returned to Pyeongyang after completing her three years contract in Dalian. I hope we shall meet again someday. Thank you for your kind serving, Miss M.



 若手のC先生はやはり国際常識に欠けるのか、さっきから危ない質問をMさんにしまくっている。Mさんは答えに窮すると思いきや、さらりと受け流している。中国語能力があまり高くないのも幸いしているようだ。週末はどこかに遊びにいくのか、とか、いくらもらっているのか、とか。原則的に個人行動は厳禁のはずである。でなければ、逃亡してしまうだろう。
 「中国政府から払われる人件費は月額3000元です。そのうち私たちがもらえるのは100元です。」
 よもやこんな情報が本人の口から語られるとは予想外だった。こんな美人がそんな目にあっているとは。チップでも渡したくなったが、入り口わきのバーカウンターには、客らしからぬ男が2人座っていて、時折ホール全体に目をやっている。監視要員だ。日本語もわかる連中なのだろう。敏感な話は危険だ。

スタッフと客の言動を監視する要員(とされる人物)。こんなところにさりげなく座る。お店に入ったら、このおじさんの挙動にご注意を。



 小生の韓国名を漢字とハングルで書いてあげたら、이を리と書き直された。LEE(李)の書き方が南北で違うのは有名な話である。南ではYiに対し、北ではRiと発音するのだ。
 ホテルに戻ってからプリペイドカードを買ってみたが、13800138000にもかけられない。「中国移動」のロゴが表示されていないことに気がついた。新しいルールでは、2か月使わないでいると番号が廃止されてしまうらしい。2002年からずっと使ってきた番号が失われてしまうのか。惜しい。W先生から臨時の番号を借りる。幸い、友人たちの番号は電話のメモリーのほうに記録されていた。

17日 大連外国語大学国際芸術学院にて
 L先生のアトリエと作品展覧フロアを見学。先生のご専門は金属廃品を使った芸術品。暖房の配管、タコメーターなど、なんでもつなぎ合わせて新しいアートにしてしまう。アーク溶接の高い技術をお持ちだ。環境保全と芸術のコラボはとても斬新な発想だ。なぜ、外国語大学に芸術学院なのか。ここがミソだ。海外の先進的な作風を、語学を通じて習得する、というコンセプトらしい。逸夫楼の上の階には孔子学院があった。孔子学院を担当する文化伝播学院の教員プロフィールに驚愕。8割方共産党員だ。これは異常だ。私が従前訪問した多くの大学でも、このようなところはなかった。文化伝播の使命の複雑さを感じる。最近ロシアのメドヴェージェフ首相も本学に来たらしい。

Why are these students learning art in the university of foreign languages?
Foreign languages are tools to learn new arts in the world. This is their own unique concept.
At the Dalian University of Foreign Languages



A recycle art of radiator pipes by Prof. LI, Ji (Dalian University of Foreign Languages).



 お昼は斑魚(雲南の特産らしい)のしゃぶしゃぶ。見た目は雷魚の一種だ。これはいける。駐車場戦争が激烈だった。
 午後、旅順郊外の温泉へ向かう。日本と同じスタイルだ。温度も高め。露天で1時間以上ゆっくりと半身浴する。首までつかるとすぐのぼせてしまうので、この方法がよい。L先生と日中の政治経済・教育問題を議論する。W先生とL夫人が恐ろしく長風呂だったので、食堂でタダ飯。雑糧中心の農家風メニューだ。蒸しパン、おかゆ、サツマイモ、とうもろこし。宿泊客は日本風の浴衣を着ているが、なんとも寒々しい。若い愛人さんを連れた日本人のおじさんも来ている。まわりが日本語がわからないと思ったのか、聞いていて恥ずかしくなる会話が聞こえてくる。
 ホテルに戻ってから空腹を感じたので、夜食を求めて散歩に出る。ウィグル族の青年が羊の串を焼いていた。小生「アッサラーム・アライクン。」青年「アライクン・アッサラーム。二―シーナーグオレン(你是哪国人)?(抑揚のないフラットな発音で)」小生「メン・ヤプニエ。(日本人です)」
 すると彼は、ラビアを知っているか、と聞いてきた。小生「ああ、日本人はみな彼女を尊敬しているよ。」
 こんな危険な会話を誰が聞いているかわからない街角でも平気でするところがウィグル人らしい。何本かかじった後、次に米線のお店へ。辛くしていいか、と聞くので辛くしてもらったら、思いっきり辛くて、肉以外の具を食べるのがつらかった。面はグッド。

18日
 今日はお昼前から出動。市内で各種のサーベイ。昨夜の辛い米線が効きすぎて、胃をやられてしまった。太平洋百貨店のフードコートでキノコの米線。胃にやさしい味だ。いろいろなキノコがたっぷりでうれしい。そのあとサウナでリハビリ。浴槽はかなり熱い。小さな子供も我慢して入っている。休息室に通されると、さっそく按摩のお誘いが。例によって、中式からエロまでなんでもあり。地下に隠し部屋があって、スタッフがスタンバイしている。
 午後、中国移動通信のオフィスを訪ね、番号の件を相談する。新しい制度では、やはり廃号になってしまうと、その番号が再び売りに出されない限り、買い戻すことはできないという。10年間にわたってお世話になり、いろんな人(偉い先生方から現地の協力者まで)に教えてしまっている番号だけに、まことにショックである。
 そのあとマイカル3階のマフラー売り場を訪ね、C嬢(38)にお土産を渡す。この1年でかなりやつれた感じだ。化粧ののりが悪くなった気がする。結婚詐欺騒動が応えたようだ。つい2週間前にようやく結婚無効が宣言され、次の結婚ができる状態になったという。小生は彼女を助けたいので、800元ほど買い物をしてあげることにした。羊毛のマフラー(300元)に牛革の手袋(450元)。収銀台に持っていく紙切れを書いてもらおうとしたら、包装した商品をそのまま持って行って、などと言い出す。何のことか、意味がわからなかった。御代はいらないよ、ということだった。冗談じゃない。小生は君を助けるためにここに来た。(給料が1500元しかない)君が自腹を切るなんてありえない。よくないよ、こんなの。
 彼女はしぶしぶ、100元と200元の数値を記入し、小生に持たせた。納得が行かない小生ではあったが、やむなく300元だけ払った。彼女の同僚たちも今のやり取りを笑ってみていた。こんな横領行為に加担するのか。ふっ切れないまま、再会を約束して売り場を後にした。小生が持ってきたのは1500円の浴室消耗品(女性に人気)。小生が来たことが彼女のマイナスになっては逆効果だ。
 悶々としながら街を歩き、夕食は偶然見つけた新疆面館。いつもの拌面(定番)を食す。昨夜のウィグル兄ちゃんは知らなかったが、小生が探せばちゃんとあるものだ。
 夜、CCTVのドラマ「温州一家人」を見る。ストーリーは面白いが、現実味に欠ける。いくら開拓精神に富んだ地域であっても、フランス傭兵部隊の夫を心配して、語学ができるわけでもない中国人女性が単身でフランスへわたり、エジプトからサウジを経由してイラクに入れるとは。しかも、フランス軍人が流暢に中国語をしゃべっている。彼女に言い寄った軍人さんは戦闘で即死。そのあと沙漠を負傷兵担いでさまよい、無事夫の部隊に拾われるとは、話ができすぎていないか。
 C嬢のことが頭を離れない。あれこれ妄想しているうちに深い眠りに落ちた。

19日
 午前中は大連民族大学で、W先生のゼミ生(ほとんど女子学部生)約20名と談話会。半分以上の学生は、昨年の小生の講演会に出ているので、今回は違う話題を用意した。院生のような切れ味はないが、積極的にいろいろな質問をしてくれる。この日だけでブログのアクセスは300件、新しいフォロワーは10名以上増えた。
 昨年お腹を壊す原因になったと思しき雑糧レストランで昼食。夜に備えてキノコ類を中心に軽めに。午後は、横浜千葉間ほどの距離を北へ走り、新校舎へ向かう。海岸のテーマパークやリゾート村に隣接して、大学村(金石灘)もできつつあるが、生活は不便そうである。鉄道が大連と結んでいるのが救い。現校舎は売り払う予定。工業地帯に隣接して空気が汚い現在の場所(開発区)から、一刻も早く離れたいという感じだった。
 夕食は設計の技術者を招いて和食の店へ。ほとんど食べ放題状態。若手のC先生は、北朝鮮レストランにおける無配慮な言動を恥じ入っていた。
 
20日
 午後、大連からの離陸がアナウンスもなく20分遅れたのは、中国空軍ご自慢の殲-15が1機、予定外に緊急着陸してきたせい。これだから軍民共有空港は大変。偶然窓から見えて知った。
 帰りの飛行機でリメイク版「トータルリコール」を見る。シュワちゃんの前作と違い、日本語や中国語が頻繁にでてくる。地球が化学兵器に汚染され、人類は英国とオーストラリアだけにわかれて住み、地殻貫通トンネルが唯一の交通手段(片道17分)という世界だ。「マトリックス」の影響を受けた作風。

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2012年11月15日(身の丈に合わない自費留学)

2019-03-24 13:17:18 | 日記
日本でいえば年収1000万円くらいの世帯が、自分たちの衣食を切り詰め、子供を5000万円ほどかけて海外に留学させるという愚挙が行われているらしい。この記事は、その挙句帰国してもろくな職に就けず、投資に見合った回収がなされないリスクを理解できない愚かな親子を嘆いている。留学経験がもてはやされ、厚遇を受けるのは、中級幹部に直接登用されるケースくらいのものだ。すみやかに投資を回収するつもりで、身の丈に合わない自費留学(これができるのは日本留学くらい。ビザの制約でバイトのできない欧米では無理。)をするのはまことに愚かである。
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2012年11月24日(親中にあらず)

2019-03-24 13:15:09 | 日記
朝日新聞 "「中国に親しみ」最低の18%、内閣府調査"
「親しむ」と「好き」と「関心がある」は別の概念である。世間の人々は、小生を親中派の頭目のように思っているかもしれないが、小生は「関心がある」のであって、「好き」だからつきあっているわけではない。
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2012年11月26日(薩摩藩では)

2019-03-24 13:13:25 | 日記
幕末期、薩摩藩では4人の農民が1人の武士を養っていた。もっとも、郷士階層は自分で農業をやっていたので実際4:1の扶養比率ではない。新浪で、中国における歴史上の官民人口比率を紹介していた。これに日本の数値を重ねてみよう。ある地方では、腐敗した役人が吸血鬼のごとく搾取を重ねているのだろう。
現代の中国では30人の農民が1人の幹部を支えているが、陝西省のある地方では9人の農民で支えているという。
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2012年11月26日(北朝鮮からのジャンクメール)

2019-03-24 13:12:41 | 日記

最近は北朝鮮からもジャンクメールがやってくる。
UNEPで正式の代表とお話しする機会もあるからちょっと聞いてみようかな。
この人はUNCO? 小生の不勉強からなのか、聞いたこともない。ウン★ですか?

subject: Business From Korean
from: "Mr Nam Doo"
reply-to: unreporter@live.com
to: undisclosed-recipients:;
date: Mon, 26 Nov 2012 08:37:50
jump to attachment file
--------------------------------------------------------------------------------
Sir/Madam,
My name are Mr Nam from Korean, a United Nation humanitarian abuse reporter, I have an important business to discus with you. Respond for details.
Mr Doo Nam
United Nation Coordinators Office.
P.O. Box 27, Pyongyang, DPR Korea
E-mail: un003lz@imail.com

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2012年11月29日(質の悪い日本人)

2019-03-24 13:11:43 | 日記
"国際化に走る企業、即戦力確保狙う. 大学卒業しても就職できない新卒学生が多い中、外国人留学生の求人急増。"
学部から留学する人に高い専門性を求めるのは無理なのだろうけど。日本語だけ、というのは、奨学金でもないかぎり、先生にコンタクトしても相手にしてもらえないでしょう。留学生には国際人としての才能を期待しているので、単なる「質の悪い日本人」にはなってほしくないですね。
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2012年11月29日(空母style)

2019-03-24 13:11:01 | 日記
「江南style」から派生して、今中国では"空母style (航母style)"が流行っているらしい。ワリヤーク(遼寧)の運用開始のニュースで拡散したのかな。これは中国のオリジナルと認めます。
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2012年11月30日(推薦入試と一般入試)

2019-03-24 13:10:12 | 日記
日本の難関私大における推薦入試合格者と、一般入試合格者の学力差はどのくらい?
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2012年11月30日(日本の政党)

2019-03-24 13:06:52 | 日記

中国Twitter新浪微博のフォロワーの皆さんとこんなダイアグラムを描いてみた。日本の現政権は中国にとってもバランスのとれたよい選択肢だったのでは、と「今更言うなよ」って感じの意見がちらほら。右傾化はみなさんの自業自得です、って小生はまだあきらめてはいませんよ。


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