横浜スローライフ -- My slow life in Yokohama

位置情報、地理情報に関するサービス、その他日常生活から思ったことを気ままに記す不定期のんびり日記

ソーシャルプレーヤーがジオメディアサミットに大合流

2010年04月03日 23時57分45秒 | 地理情報関連
 昨日は、第5回ジオメディアサミットが開催された。場所は260名収容の東大駒場リサーチキャンパスのコンベンションホール。立ち見とキャンセルを見込んで300名を定員としたところ、多数のキャンセル待ちを含む370名を超える参加申し込みがあった。

 いったいこの勢いは何だ!?

 昨年末に恵比寿で開催されたジオメディア忘年会は、一昨年の人出よりも少なく、”第一次ジオメディアブーム”は終焉を迎えたのだと判断していた。”ジオ”であることにアイデンティティを持つ人達は、「ジオメディア」という言葉の”ジオ”を重視するが”メディア”への理解はそれほどでもない。ただ、ジオ的な事業領域の拡大に興味と期待を持ち、何らかのマネタイズができないものかと集ってくる。しかし、実際には2000年頃からの歴史が物語っているように、ジオ関連領域で新たなジオなマネタイズを求めてみても、それを見いだすのはきわめて難しい。「期待して参加したけど、やっぱりこれじゃあ儲からないじゃん」ってことになってしまう。せいぜい「中長期的な視点でWatchをしておかないと・・・」とレベルで参加し、だんだん関心が薄れてしまう。

 そして昨日。果たしてその謎が解ける。関さんからの「今回初参加の人は?」との質問に、会場の7割位の人が挙手をしたのだ。その人達の多くが「ソーシャルアプリ」を手がけていたり、そこに興味があって、位置や場所情報をからめたサービスに普通に着目しているようなのだ。

 わずか2~3年前までは、ソーシャルアプリも今のように認知はされていなかったし、位置や場所情報を上手に取り込んで・・・という展開にも至らなかった。理由は簡単で、それを手軽に利用できるインフラが普及していなかったからだ。言い換えると、その頃まではサービス提供者がジオ系の機能を気楽に使えるような状態ではなかった。測地系や投影法などの専門っぽい知識を全く持たずに、単にWebアプリ開発のスキルだけで位置情報を扱えるような仕組みが無かった。だからこそ、昔ながらのジオな人達は、その領域の専門知識と取り扱いスキルを上手に使いながら商売ができたのだが。
 
 Google Mapsがクラウド側の代表的なインフラとすれば、デバイス側はiPhoneがインフラである。そこでは、ジオな専門知識は不要だ。誰でもユーザーがほしいサービスを構築することができるようになった。このパラダイムの変化は、最初はジオな領域や周辺にいる人達に影響を与え、今やこうしたインフラがあることが大前提の時代になった。こうなると、昔の常識や専門知識で事業をしようとしても空振りになるだけで、むしろそういった知識は全くなく、ユーザーの視点で柔軟なサービスを提供しようとする事業者がメインプレーヤーとなる時代になる。これが、たまたま今Webサービスで伸び盛りのソーシャルアプリプレーヤーがジオに合流したに過ぎない。

 昨日のジオメディアサミットの懇親会の最後に、ゴーガの小山さんに「(ジオメディアサミット運営メンバー中の)長老」として紹介された小生だが、長く生きているとわかることもある。ジオな視点から見ても、いわゆるネットの世界はどんどん印刷メディア並のコモディティ性を得て、それに取って代わろうとしていると。

 印刷物は、リッチな情報を配布・利用するには最も安価なメディアである。紙地図は道案内という機能性は早々にカーナビに取って代わられたが、なおも長らく印刷物の特性を発揮できる優れた領域としてかろうじて残っていた。少なくともiPhoneが出るまでは、私は携帯電話で地図を見ることの実用性はほとんど感じられなかった。iPhoneに刺激されて最近出てきたAndroidのスマートフォンでの地図表示は、まさに紙地図クオリティと言っても良く、現在地表示や検索など、紙地図では得られない様々な機能が加わっている点で、それを超えてしまっている。なので、「地図」を語る時にはもはや紙地図を除外してもほとんど問題は無くなってきた。

 そして、地図と並んで”ジオ系”印刷物でポピュラーだったのはガイドブック類だ。90年代まではおびただしい数のガイドブックが書店にあふれていた。行き先の選定、宿の選定、旅程の計画には必須のツールで、そこには様々なガイドマップが挿入されていた。ガイドブックを作成する際には、ガイドマップは無いと困るが、あくまでもコンテンツの一つに過ぎない。ところがそのガイドマップのコストが悩みどころで、地図会社的な真面目さで作ると高くなり過ぎて採算が合わず、イラスト書き程度にすれば安くあがるが、地図としての実用性を失ってしまう。結局は中途半端なものが多くて、ガイドブックの利用者の不満の筆頭に来るのがガイドマップの実用性だった。このように、ガイドマップのコストがガイドブックの満足度向上のネックになっていて、昭文社のような地図出版会社がガイドブック事業でも地図製作コストの共通化を行うことで、JTBなどの他の事業者よりも有利に展開することができていた。

 これからのソーシャルアプリにとってのジオ機能は、ガイドブックにおけるガイドマップのような位置づけになるだろう。無いと困るけれどもメインの存在ではない。ガイドブックと違うところは、実用性が高いジオ機能インフラが「巨人」達によって事実上無償で提供されていることだ。豊富な機能をだれでも存分に使え、ジオ機能はソーシャルアプリの標準装備になるだろう。一方、既にインフラが「巨人」達によって提供されてしまっているわけだから、いわゆる地図会社はその事業で有利にはなり得ない。地図会社に限らず、昔ながらのジオな領域で商売をしている人達には事業機会はごく限られてしまう。

 ネットが印刷物に匹敵するほどのコモディティ性を持つメディアになってきているので、昨年半ば頃まではニッチな個性をまだまだ放っていたジオメディアの世界も、今回のジオメディアサミットを見ると、いよいよマスに取り込まれた感がある。それがいいこととか悪いこととかではなくて、いつかは来る必然なのだから受け入れていくしかない。どんなプレーヤーも、ネットがメディアとして成熟していることと、そのインフラを担う巨人が既にいることを前提に、どの領域でどの立場で事業を展開するのかを組み立てていくしかない。

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