日々の覚書

MFCオーナーのブログ

想い出のアルバム-GEORGE HARRISON

2006年11月30日 00時02分29秒 | 想い出のアルバムシリーズ

Georgeharrison

慈愛の輝き/ジョージ・ハリスン(1979)

1.愛はすべての人に
2.ノット・ギルティ
3.ヒア・カムズ・ザ・ムーン
4.ソフト・ハーテッド・ハナ
5.ブロー・アウェイ
6.ファースター
7.ダーク・スイート・レディ
8.永遠の愛
9.ソフト・タッチ
10.イフ・ユー・ビリーブ

既に皆さんご存知のように、ジョージ・ハリスンが11月30日に癌のため亡くなった。ここ数年の闘病生活の末の死である。様々な意味で彼の死に対してやりきれない思いでいっぱいである。

僕はどういう訳か、ビートルズの中ではジョージが一番好きだった。ジョン・レノンとポール・マッカートニーという2大巨頭の影に隠れ、ファン以外の人には非常に地味な印象しか与えなかったけれど、アルバムに1~2曲入っている彼の曲に妙に惹かれたのだ。有名な「サムシング」「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」はもちろんのこと、「恋をするなら」「アイ・ウォント・トゥー・テル・ユー」「オールド・ブラウン・シュー」「オンリー・ア・ノーザン・ソング」「フォー・ユー・ブルー」といった一般の人だったら聴き逃してしまうような曲が逆に印象に残り、ジョンもポールも凄いけどジョージだって捨てたもんじゃない、と思うようになっていた。やはり、へそ曲がりだったのかな(笑)

ビートルズ解散後は、ジョージのソロを一番熱心に聴いていた。ポールほどヒット曲は多くなかったけど、その優しげな世界に浸るうちに僕にとってジョージ・ハリスンはフェイバリット・ミュージシャンの一人になったのである。彼のアルバムの中では、初めて聴いたせいかもしれないけど、1975年の『ジョージ・ハリスン帝国』が一番好きだ。とてもジョージらしいアルバムだと思う。一般的には『オール・シングス・マスト・パス』が彼の最高傑作ということになっているけど、3枚組というボリュームや豪華なゲスト陣、かなりスワンプっぽい音などに惑わされて、一ミュージシャンとしてのジョージ・ハリスンの姿がぼやけているような感じがする。それより『オール~』以降の『リビング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』や前述の『ジョージ・ハリスン帝国』、または1979年の『慈愛の輝き』といったアルバムの方が、ジョージ・ハリスンの特性というか個性がはっきり出ているのではないだろうか。こういう曲を書き、こういうサウンドを好み、このようなギターを弾く人なんだよ、という彼の資質がとてもよく分かるのだ。『オール~』はロック史に残るアルバムだが、ジョージ個人のアルバムとは言い難い。

ジョージが世に送り出した数々の名曲の中でも、僕が最も好きな曲と言っていいのが「ブロウ・アウェイ」である。『慈愛の輝き』収録曲で、シングルカットされてそこそこヒットした。このアルバムは、長い間公私に渡るゴタゴタに悩まされたジョージが初めて子供を授かり、本当の幸せを掴んだ時期に発表されたもので、全てを吹っ切った明るいジョージの表情が感動的だ。彼のキャリアの中でも、この時ほど充実していた時はなかったのではないか、とすら思わせる。アルバムが出た時も湯川れい子氏がライナーでその事について触れ、真実の愛を得ると人間ここまで成長するものなのか、とアルバムを絶賛している。そんなジョージを象徴するかのような曲が「プロウ・アウェイ」なのだ。タイトルが示す通り、イヤな事もコダコダも全て吹き飛ばしてしまえ、と歌う曲だ。この曲を聴くと、自分までが元気になったような気がしてしまう。本当に素晴らしい曲なのである。実のところ、ジョージの訃報を聴いて真っ先に頭に浮かんできたのが「ブロウ・アウェイ」のフレーズだった。病気なんか、ほんとに吹き飛ばして欲しかったのに。

少し話はそれるけど、ロックが誕生して45年近く経過した。つまり、それなりの歴史を持つ音楽になってしまった訳だ。ロックが若者の音楽であった時代は過去のものとなり、アーティストたちも年をとる。必然的に成人病などで亡くなるアーティストも出てくるのだ。今回のジョージ・ハリスンのように。ロック・アーティストの死因といえば、ドラッグ絡みか自殺、というばかりではなくなっている。ロックは年をとった。この現実をかつてのロック少年たちはどのように受け止めるのか。射殺というあまりにもロック的な最期を遂げたジョン・レノンと、癌で死んでしまったジョージ。元ビートル同志の最期はあまりにも対照的だ。もう“伝説”は生まれないのだろうか。

やはり、21世紀を迎え、確実に何かが変わり始めているような気がしてならない。ジョージ・ハリスンの訃報はふとそんな事を感じさせた。

ジョージ・ハリスンよ、永遠に。聞く所によると、彼は亡くなる前にレコーデングしていたマテリアルを自分の死後発表するようにと遺言したそうな。待ちわびていたジョージの新作を、こんな形で聴く事になろうとは...。まだ発表されるかどうかははっきりしないらしいけど。

心よりご冥福をお祈り致します。

断るまでもないが(笑)、上記の文章は、「ジョージ・ハリスンを悼む」というタイトルで、ジョージが亡くなった5年前に書いて、ブログ化する遥か以前の「日々の覚書」に掲載したものである。あの頃は、開設して丁度2年、ようやく10000ヒットを達成したばかりで、当然読んで下さった方も少なかったろう、と思われるので、ここに原文のママ(笑)再録させて頂く事にした。5年経っても、ジョージの命日が近づくたびに、僕は同じ事を思ってしまう訳で、昔と変わらないのなら昔の文章でもよかろう(笑)、という訳だ。5年経っても、考えにブレがないというのは、確固たる信念を持っているからなのか、それとも進歩がないのか...

ジョージの命日が近づいてくると、やはり聴きたくなるのはこのアルバムである。明るく柔らかなトーンで貫かれたアルバムだが、そこはかとなく伝わってくる哀愁がたまらない。いや、哀愁というのは正しくない。哀しいというほどではない、ちょっとセンチな雰囲気、とでも言おうか。ジョージの音楽には、いつもそんな雰囲気がある。優しくて暖かくてちょっぴり哀しくて...聴く人全てを善人にしてしまうような、正に慈愛に溢れた音楽をジョージはずっと作ってきた。同じ元ビートルでも、ジョンのようにアジるのでもなく、ポールのようにメロディの魅力でねじ伏せるのでもない、地味でインパクトに欠けるようでいて、いつの間にか心の中にしっかりと根を張っている、それがジョージなのだ。

「愛はすべての人に」「ブロー・アウェイ」の2大名曲を含むこのアルバム、確かに強烈ではないけれど、そんなジョージの優しさ(はかなさ?)がじわーっと染みてくる。ジョージのアルバムをどれか聴いてみたい、という人には絶対これがお薦めだ。決して『オール・シングス・マスト・パス』ではないので念のため(爆)

文中にもあるけど、ジョージが生前録音していたマテリアルは、一年後にアルバム『ブレインウォッシュド』として発売された。これがまた、聴いてて悲しくなってしまうくらい素晴らしい出来栄えなのである。とても、2~3年後には死んでしまう人が作ったとは思えないほど、ポジティブで若々しさに満ちたアルバムだ。本当に、神は残酷なことをするものだと思った。

今年もまた11月30日がやってくる...いつの間にか、この時期は(ある年代の)ロック・ファンにとっては、次から次へと悲しい事を思い出す季節となってしまった...

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10 コメント

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おぉ!ブロウ・アウェイ! (いまち)
2006-11-30 00:29:43
おぉ!ブロウ・アウェイ!
ふむふむ、激しく同意いたします。
慈愛の輝きを聞くとほっとしますね。
♪いまちさん (MFCオーナー)
2006-11-30 01:01:09
♪いまちさん

>激しく同意いたします
いやほんと、名曲です。なぜ、この曲が世間に知られていないのか、理解に苦しみます(笑)

>慈愛の輝きを聞くとほっとしますね
同じ意見の人がいて嬉しいです。もしかして、いまちさんもジョージのファンですか?(笑)
今日は、ジョージの命日。 (那由他)
2006-11-30 16:05:59
今日は、ジョージの命日。

ジョージは、ビートルズでは、最年少で、なんとなく、控え目な感じでしたね。

でも、彼の曲と、繊細な歌声は、清涼感というか、清潔感がありました。

ジョージ・ハリスンのソロは知らないのですが、「ヒア・カムズ・ザ・サン」や」「オールド・ブラウン・シュー」など、ジョージの歌声の優しさは、印象に残っています。

「レット・イット・ビー」で、ジョージとリンゴは、「オクトパス・ガーデン」を合わせ始めたところに、ポールやジョンが、加わっていく場面があったんですが、その時、ジョージのとても優しい人柄が感じられました。
「レット・イット・ビー」の中で、一番、暖かい雰囲気が流れている気がしました。

「慈愛の輝き」、聴きたくなりました。
レンタル屋さんに行こうかな。
ああジョージ・・・・今日だったのね。「旅立ちの... (アデリーペンギン)
2006-11-30 19:59:20
ああジョージ・・・・今日だったのね。「旅立ちの日」・・・
すっかり忘れていた悪い子です (ーー;)
「私の音楽史」、ビートルズ、ジョージとの出会い@中2・・・それから全てが始まりました。
とにかくジョージが大好きで、「Something」「While~」「Here Comes The Sun」「Taxman」などなど、彼の作品はどれもたまらなく好きでした。確かにギターのテクニックは下手かもしれないけど、それを越えたミュージシャンとしての「魅力」が彼にはありました。

「慈愛の輝き」、私持ってました・・・今は嫁入り資金に化けてしまってありません(大汗)
近く輸入盤でも買おうと思います。
「愛はすべての人に」、私が自分の披露宴で使うはずだった曲です・・・
先日友人の結婚披露宴に出席しまして、プレゼントと一緒にこの曲を含めた自作のMDをあげました。果たして聴いてくれたのか・・・?
続けてすみません。 (アデリーペンギン)
2006-11-30 23:02:49
続けてすみません。
現在再発(?)になっているジョージのソロ、国内盤はみんなCCCDなんですね。
がっくし。
輸入盤でも買おうかと、という私の選択、正解だったかも?(爆)
♪那由他さん (MFCオーナー)
2006-11-30 23:32:41
♪那由他さん

>彼の曲と、繊細な歌声は、清涼感というか、清潔感がありました
言われてみれば、そうですね^^ 昔から女性のファンが多いのも頷けます。
>「レット・イット・ビー」の中で、一番、暖かい雰囲気が流れている気がしました
この映画でジョージ絡みのシーンというと、ギタープレイに関してポールと口論になって、家に帰ってしまった、というのが有名ですが、そういうのだけではない、ほのぼのとした場面もあるんですよね。
>レンタル屋さんに行こうかな
買って下さい(笑)

♪アデリーペンギンさん

>確かにギターのテクニックは下手かもしれないけど、それを越えたミュージシャンとしての「魅力」が彼にはありました。
ジョージは下手じゃないですよ^^ 『ローリング・ストーン』誌が選んだ偉大なギタリスト100の仲で、ジョージは21位にランクされているそうです。誰も彼のようには弾けません。だから、偉大なんです。自信もちましょう(笑)
>「慈愛の輝き」、私持ってました・・・今は嫁入り資金に化けてしまってありません(大汗)
かなりいい値で売れたんですね(笑)
>近く輸入盤でも買おうと思います
はい、是非買って下さい。輸入盤の方がいいですよ。なぜなら、
>ジョージのソロ、国内盤はみんなCCCDなんですね
あ、言おうとしたら言われてしまった(爆)
私は、「Give Me Love」が好きでした。 (メリー)
2006-12-01 22:01:04
私は、「Give Me Love」が好きでした。
ヒットした時、ちょうど中学生だったので、
今も思い出すだけで、あの頃を思い出して胸きゅんになります。
「ブロー・アウェイ」とか「愛はすべての人に」の曲が浮かばないけど
きっと知ってるんだと思うなぁ~
借りてこようかな・・・(買って下さいといわれるな・・・^^)
♪メリーさん (MFCオーナー)
2006-12-01 22:59:26
♪メリーさん

>「Give Me Love」が好きでした
これもいい曲ですよね。僕も好きです。

>「ブロー・アウェイ」とか「愛はすべての人に」の曲が浮かばないけど、きっと知ってるんだと思うなぁ
多分ご存知ですよ^^ 12/10のBBAセッションでも、この2曲演奏されますので、お楽しみに^^

>借りてこようかな・・・(買って下さいといわれるな・・・^^)
買って下さい(爆爆)
Georgeの素晴らしさがなぜ知られていないのか不思議 (Georgeファン)
2018-08-02 12:02:28
ジュージハリスン大好きです。
もちろん、ビートルズ、ポール、ジョン全部好きですが、今は、ほとんどジョージばかり。高校大学時代の雰囲気が脳裏に蘇ってきます。オール、33と1/3、ダークホース、マテリアルワールド、帝国、聞き飽きないですね~
ジョージ最高! (MFCオーナー)
2018-08-02 23:27:49
♪Georgeファンさま

名も無きブログにコメントありがとうございます。これからもご贔屓にお願いします。

ジョージ・ハリスンお好きとのこと、同好の士がいて嬉しいです^^ ほんと、なんか地味な存在なんですよね。なんでだろう? 分かる気もしますけど(笑)

僕は、アルバムだと『ジョージ・ハリスン帝国』『慈愛の輝き』『33&1/3』あたりが好きです。ほんと、10代の頃が蘇りますね(笑) 大ヒットした『クラウド・ナイン』も良いのですが、ジェフ・リン絡み、というのがマイナス・ポイントです。ジェフ・リンと組んだのは、フィル・スペクターと組んだ時以上に、ジョージにとっては汚点ではないかと^^;

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