パブロ・クルーズの名前を知ったのは1977年頃と思う。最初はサーフ・ロック(当時はこんな言葉なかったかも^^;)のバンドと思っていた。何故なら、とある雑誌でカラパナあたりと一緒に紹介されていたからだ。
あの頃、ブームという程ではないが、ハワイのロック・バンドに注目が集まっており、僕もカラパナとかは知ってて、FMで曲を聴いて、やや軟弱な印象を持っていたもんだから(笑)、パブロ・クルーズも似たようなバンドと勝手に思っていたのだ。当時のアルバム・ジャケットで、メンバー4人が上半身裸で写ってるのがあって(これ)、海辺て遊んでるから軟弱、みたいな(笑) ただ、このジャケ写、今見ると大変暑苦しい(爆) 当時はこれ見て爽やかとか思ったんだろうか?(爆爆) アルバム・タイトルも『ライフライン』だから、サーファーというよりライフ・セーバーだな。
と、決して印象の良くなかったパブロ・クルーズだが、それがひっくり返されたのが「恋の水平線(Love Will Find A Way)」である。1978年ちょうど夏頃のヒット曲。いやほんと名曲である。素晴らしい。20世紀が誇るべきマスターピースと言っても過言ではない(笑)くらいの超名曲だ。高校生をノックアウトするには十分。この一曲で、軟弱なバンドという、僕のパブロ・クルーズに対する印象は一変した。いや、別に「恋の水平線」がハード或いはヘヴィな曲というのではなく、実に洗練された雰囲気の曲で、人によっては軟弱と感じるのだろうが(笑)、ま、一年程の間に趣味も変わったんだろう、この曲が大のお気に入りになってしまった訳だ。多感な年頃という事で勘弁して(笑)
それからしばらくして、「恋の水平線」を含むアルバム『世界は彼方に(Worlds Away)』をFMで聴いて(全曲ではなかったが)、さらに僕のパブロ・クルーズ熱は上がってしまった。FMでかかったアルバムの曲がめちゃカッコ良かったのだ。当時、僕が最も熱中していたバンドはフォリナーだったが、パブロ・クルーズはその次くらいの位置にきていた。アルバムを聴いてみたいと思ってはいたものの、周囲は誰もパブロ・クルーズなんて持ってなかったし(というか、知ってる方が珍しかった)、10代の頃はLP一枚買うのにも一大決心が必要で、一曲しか知らないアルバムなんて、怖くてなかなか決心がつかなかったのだが、FMで聴いた「恋の水平線」以外の曲が好印象だった事にも後押しされ、小遣いを貯めて『世界は彼方に』を買ったのである。MFCオーナーまだ16歳の時だった(爆)
で、その『世界は彼方に』だが、いざ針を落としてみたら、ちょっと印象が違った。思うてたんとちゃう、みたいな。僕としては、「恋の水平線」みたいな洗練された感じと、FMで聴いたようなフュージョン的アプローチが全編に渡って展開されているのを期待したのだが、そうでもなかった。洗練というかポップな曲が多くて、インパクトが弱かったのだ。曲によって出来に差があったりしたし。意外とフツーだな、というのが当時の偽らざる感想だった。
でも、よく聴いてたな。「恋の水平線」はもちろん超名曲だが、第二弾シングルとなった「愛の確信(Don't Want To Live Without It)」もファンクっぽさを取り入れた実にカッコいい曲だし、「アウト・トゥー・ルーズ(You're Out To Lose)」もフュージョン風の曲展開で素晴らしい。浮遊感のあるイントロからダイナミックに展開する「ファミリー・マン」、賑やかな「アイ・ゴー・トゥー・リオ」も楽しい。でも、他の曲はやはり今イチだったかな。悪くはないんだけど...ここいらがこのバンドの限界なんだろうか。惜しいなぁ。なんとなくプレイヤーと雰囲気近いかも。
この後、パブロ・クルーズのレコードは買ってない^^; フォリナーに次ぐ2番手の位置からも滑り落ちてしまった(笑) けど、パブロ・クルーズは順調に活動を続けて、アルバムを発表し、ヒットも出した。僕も買わなかったものの、「アイ・ウォント・ユー・トゥナイト」とか「クール・ラブ」といったヒット曲は結構好きだったな。その後浮き沈みはあったものの、現在でも活動を続けており、数年前には来日公演も行ったとか。こういう話を聞くとホッとするね^^
現在では、パブロ・クルーズはAORに分類されるらしい。そんなにオシャレではないような気がするが(笑) 確かにウェスト・コーストのバンドらしい清涼感とかはあったと思う。椰子の木をあしらったバンドロゴは、完全にサーフ・ロックのイメージだけどね。でも、本質はちょっといなたいアメリカン・ロックだったのかもしれない。ここんとこ、AOR或いは入手困難盤の再発企画で、パブロ・クルーズの70~80年代のアルバムが出てるので、『世界は彼方に』から40ン年を経た今、改めて聴いてみたい気もする。前述の「クール・ラブ」収録の1981年の『リフレクター』とか。このアルバム、トム・ダウドのプロデュースだし、案外良いかも、なんて思ったりもして。本当は、ベスト盤でもいいのだが、パブロ・クルーズって、この手のバンドには珍しく、意外とベスト盤がないのだ。ちょっと不思議。
余談だが、1990年頃に公開されたスティーブ・クローブス監督の『恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』という映画があって、ご存知の人も多いと思うが、バーでピアノ演奏をする兄弟の物語で、現状を打破する為に女性シンガーを入れようと、オーディションをするシーンがある。数人の女性が数秒間歌うカットをつなげているのだが、その中の一人が「アイ・ゴー・トゥー・リオ」を歌っていた。何故か覚えている。
最後に疑問。実は、そのイメージとは裏腹に、パブロ・クルーズのメンバーにサーファーはいない、と聞いたことがあるが実際はどうなんだろう? いや、別にどうでもいいことですが(爆)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます