いまジャーナリストとして

 いま私たちの目の前に、次々と現れるニュースをどうとらえ、どう判断するか・・・ジャーナリストの日誌。

日本経済の空洞化・・・日本企業はいったい何を考えているのでしょう。企業には愛国心はないのでしょうか。

2011年10月24日 11時30分00秒 | 日記

 政府は、円高対策を策定中です。
 同じころ、タイで大規模な洪水が起きて工業団地が次々に水没し
ましたが、タイの工業団地に入っているのは、その多くが、自動車
や電機の日本企業です。皮肉なことに、タイの洪水によって、日本
企業がいかにたくさんタイ、つまり海外に工場を移転しているか、
改めて、よく分かりました。
 
 円高対策と、タイの洪水で水没した日本企業の工場を対比すると、
むなしくなってきました。

 円高対策の中身は、
1)日本企業が日本国内に立地することを促すよう、補助金をつけ
る。
2)日本国内で雇用につながるような事業に補助金をつける。
 ーーなどが中心です。

 この2つ、もちろん、やらないよりやったほうがマシですが、し
かし、本当にむなしい対策です。

 まず、1)ですが、日本企業が日本国内に立地するようというの
は、日本企業は日本国内に工場を作ってほしいーーということです。
 日本国内に工場を作る場合は、補助金を出すなりして、優遇措置
を取るということです。

 しかし、タイの洪水で水没した日本企業の工場を見て分かるよう
に、では、なぜ、タイに進出する前に、日本国内に工場を作るよう、
促さなかったのか、ということです。

 いま、ここに書いているのは、経済学的、あるいは、経営的には、
理屈にあっていないという批判が出るのを、すべて承知で、書いて
いることです。
 
 企業の経営者からすれば、これだけ円高が進んだのだから、日本
より海外で生産したほうがいい。それは当然でしょう。
 そんなことは分かっている。

 しかし、いまここで、これだけ海外に出て行ってしまったあとで、
日本政府が「日本国内に工場を作ってください。作ってくれたら補
助をします」というのは、滑稽ではありませんか。
 滑稽というより、悲しいですね。

 その補助政策を、なぜ、海外に出て行く前に、しなかったのでし
ょう。
 円高は1985年のプラザ合意で始まりました。
 日本企業は、その後、長い間に、海外に移転していったのです。
 ですから、政府としては、民主党ではなく、自民党政府の時代の
責任です。

 円高で海外展開するのは経済学的に当然だ、経営的に当たり前の
話だといって、放置してしまったツケが、いま、回ってきたのです。

 さらに滑稽で、悲しいのは、2)の雇用対策でしょう。
 これは、日本国内で雇用につながるような事業をした場合には、
補助金を出しましょうーーということです。
 
 しかし、タイを見てください。
 日本企業の工場があれだけタイに進出しているのです。
 それは、「雇用の輸出」です。
 反対にいえば、「失業の輸入」です。

 日本企業は、タイで、たくさんの雇用を創出した。
 
 これも、経済学的、経営学的には、むちゃくちゃであることを覚
悟の上で書いています。

 日本企業は、タイで、たくさんの雇用を創出した。
 もし、その日本企業の工場が、日本国内に立地していれば、日本
国内でたくさんの雇用が創出されていたのです。

 それを、いまごろになって、政府が、「雇用につながる事業には
補助金を出す」というのは、ほとんどブラックユーモアでしょう。

 経済学的、経営的に、円高の下で日本企業が海外に工場を移転す
るのは当然だというのであれば、その帰結として、日本で雇用が減
るのも当然です。当然のことが起きているのであれば、放っておい
てもいいのではないでしょうか?
 経済学者、経営者は、なんと答えますか?

 放っておけないから、政府は、雇用対策を打たざるをえないので
す。

 それであれば、日本企業が海外に工場を移転するのを、なぜ、も
っと早い段階で、引き留めなかったのか?ということになります。

 東京は、ほとんど1年中、就職活動、シューカツの学生であふれ
ています。
 年中、シューカツをしているので、大学の講義にも影響が出ます。
 そして、それだけシューカツをしても、なかなか内定が出ないの
です。
 ところが、タイでは、それだけの雇用機会があるわけです。
 もし、あれだけ海外に出て行った工場が、半分でも日本に残って
いたら、大学生も、これほど苦労しなくていいだろうにと、大学生
諸君がかわいそうでなりません。

 もうひとつ。
 タイで日本企業が生産する自動車は年間150万台に達するそう
です。
 「日本車」とは呼べません。「タイ車」です。
 そして、この生産は、タイのGDP(国内総生産)にカウントさ
れます。
 もし、この自動車が、日本国内で生産されていれば、日本のGD
Pはいまよりもっと大きく、なにも、中国に抜かれて3位に転落す
る必要はなかったのです。

 日本経済は、すでに、空洞化しています。
 
いつかのブログで、
 「日本企業には愛国心はないのか」
 と問いました。
 再度、問いたいと思います。
 日本の経営者のみなさん。
 あなたたちには、愛国心はないのでしょうか。
 日本がどうなってもいいのでしょうか?

 経団連の米倉会長には、とくに問いたい。
 政府に円高対策を求める前に、日本企業自身で、なんとかしない
といけないのではないですか?
 このままでは、
 「国滅びて 企業あり」
 です。
 まさか、経団連は、それでもいいと考えているわけではないでし
ょうね?