イワシの翻訳LOVE

はしくれトランスレータ「イワシ」が、翻訳への愛をつれづれなるままに記します。

Translator, Traitor

2008年09月03日 01時15分48秒 | Weblog
某Fアカデミーで久々に某ゼミの授業に出席(8月は授業がなかったのです)。
実務翻訳、ノンフィクション出版とはまた違う、フィクション翻訳の世界があることをあらためて実感。日ごろ翻訳に近いところでほとんどの時間を過ごしてはいる。だけど、遠くて近きはフィクションの世界なのであって、やはり勝手が全然違うのである。Four letter wordをどう訳すかなんて、普段は考えてないよな~、と思う。

いい意味でも、悪い意味でも、翻訳者は、裏切り者だ。で、相手をうまく騙せたときというのは、それは相手のためになる騙し方なのだ。相手のためにならない騙し方というのは、それは相手にとっての不利益になる。それは、騙したのではなく、ごまかしであったのかもしれないと思う。

翻訳をしていると、どうにかして原文を日本語にしなくてはならないから、だんだん嘘が上手になっていく。だって、原文のすべてを訳せるわけじゃない。いくら考えても、確信がもてないまま、訳文を作らざるを得ないときがある。ある意味、それは相手にとっては幸福なことだ。何も知らずに幸せな気持ちを維持できるのだから。だけど、嘘をつくことに慣れすぎてしまう自分を感じるとき、それはやっぱり
悲しいことだと思う。嘘をつくのは仕方がない。だけどそれは、せめてぎりぎりの誠意を尽くした上で、それでも放つ断腸の嘘でなければならないと思う。

容易に嘘をつける人。翻訳をすることで、そんな安っぽい人間になってしまうことだけは、避けたいと思うのだ。といいつつ、この文章もまた、一つの嘘ではあるのだけども。

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