イワシの翻訳LOVE

はしくれトランスレータ「イワシ」が、翻訳への愛をつれづれなるままに記します。

ついに生還、しばし静観、気がつけばちょっと精悍、そして性感

2010年02月18日 22時07分53秒 | Weblog
1時間に400ワード前後の処理速度で、1日12時間ほど作業すれば、たとえば4000ワード/日は決して不可能な数字ではない。実際ここ数日はそんな感じで仕事をしていた。

ただしこれができるのは、ある程度ボリュームのある案件で、用語や内容の理解・把握がそれなりにできていることが前提になる。それに、無理をした翌日はパフォーマンスが格段に落ちたりもするから、1年365日このペースを維持できるわけではない。実際いま、「動悸が不順」になるくらい身体の状態も尋常ではない。

ただ、初犯じゃなくて諸般の都合(すなわち納期)で、そうせざるを得なかったのだ。

とはいえ、これは現在の自分の実力からすれば満足すべき処理量ではあると思うし、質に関しても、あくまで自分なりの基準に照らしてのことだけど、意外にもそれほど不味いものにはなっていないと思われる。量をこなすことで逆によい効果が上がっていると感じられる部分もあるのだ(でもやっぱり、十分な時間をかけて入魂のレビューをしたときのような、その時点の自分にとってのベストを尽くしたという感覚は残念ながらあまりなく、多少は後ろ髪を引かれている)。

余裕も何もなくて、人間らしい生活とは言い難い日々ではあったが、レッドゾーンに入ってしまったようなこの数日間は、火中の栗を拾うような非日常とスリルを感じさせてくれるものであり、いろいろな気づきや洞察を得ることができたのではないかと思う。

ごくわずかではあるが、確かな成長を実感しつつも、まだまだまだまだ実力が大いに不足している、自分はホンマモンではないというリアルな感覚が同居していて、グルグルと渦巻いている。

ごく一般的な単語ひとつとっても、文脈に応じてどの訳語を当てはめるべきかというブレが大き過ぎるし、自分のなかに明確な基準がないことに気付いて、唖然とする。

たとえば「過去数日にこれだけの仕事を成し遂げた自分」が、多少の自負心を抱えて新しい仕事にやおら取り組み、最初に出くわす"operation"という語。「運用」とするのか、「運転」とするのか、「運営」とするのか、「オペレーション」とするのか、はたまたその他さまざまな候補を検討するのか、まったくわからず途方に暮れる。どれを選んでも釈然としない。要は、英語の真髄も、コンテキストも、生きた日本語も、まったくわかっていないのだ。

突然、何の脈略もなく砂漠に放り出されたような感覚。磁石もテントも持たずに、どうやってこの昼間の灼熱の太陽と、来るべき夜の氷の冷たさに耐えればよいのかというような、まったくの方策のなさは、いったいどういうことだろう。ネットの辞書や検索サイトで語を調べ、適当な訳語はないかと目を走らす。だが、どこにもその答えは書かれていない。

翻訳は斯様に難しい。なまじ簡単に置き換えが可能だからこそ、その背後に隠れている、非情なほどに恐ろしい世界がやけにおどろおどろしく見えて、うそ寒い気持ちになる。だが、だからこそ、この営みは、とてつもないほどに奥深く、面白く、探求のしがいがあるものなのだ。

翻訳が上達する秘訣は「多くの文章に触れること」であると人は言う。だが、目を見開かなくては、「翻訳をする者」としての特別な意識を持って言葉にぶつかっていかなくては、翻訳の本質に触れることはできないのだと強く思う。

さんざん苦しみ抜いた後だけに、英語を読む端から、頭のどこかから自然に訳文が湧き出てくるような十全さが、喉から手が出るほど欲しいと感じる。そう感じるからこそ、きっとこれまでとは少しだけ違った微細な感覚で、言葉に接することができるのではないかと期待する。つかの間の解放感が生み出す、幻なのかもしれないけれど。

というわけで、疲れていて、かつ微妙に躁状態にあるため、なんだか妙にシリアス?な文章になってしまいました。すみません!

===告知===

そぞろ歩きの会6「湯島・本郷編」いよいよ明後日、2/20に開催します。

現在のところ7名もの方々に、参加表明をいただいております!
今回は「死神王子」の異名を持つ(といいつつ、そう呼んでるのは僕だけ)業界の若きホープ、イケメン翻訳者S崎君が満を持しての初参加! さらに豊富なフリーランス歴に裏打ちされた真の実力者T川氏も臨戦態勢を整えており、まったく予断を許さない魅惑の展開が期待できます。まさにかつての新日本プロレス黄金期の「マジソンスクエアガーデンシリーズ」並に豪華な面々で全国のプロレスファンの皆様のご期待に応えます(なんだかよくわかりません)。

翻訳Loveな人であればどなたでも大歓迎! 皆様の参加をお待ちしております。

寒い日が続きますが、みんなで歩けば怖くない(^^) 今回は、散策の後、韓国語翻訳者Iさんに解説していただきながらの韓国料理ランチを予定しております。たっぷり歩いて話した後は、美味しい料理を楽しみながら、マッコリで泥酔、じゃなくて乾杯しましょう! みなさまよろしければご参加くださいませ。そぞろ歩きの会のブログに告知を掲載しております。

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