アドラー心理学に基づく勇気づけの研修(外部研修も)とカウンセリング、コンサルティングを行っています。
アドラー心理学による勇気づけ一筋40年 「勇気の伝道師」   ヒューマン・ギルド岩井俊憲の公式ブログ



おはようございます。ヒューマン・ギルドの岩井俊憲です。

H.オーグラー著『アドラー心理学入門』シリーズの第23回目。

第3部「個人心理学の実際的応用」第1章の「教育」の2回目です。

前回は、H.オーグラーの有名な言葉を引用しました。

我々は、何としても、子どもが人生に対して敵意ある態度を身につけることを防がねばならない。そうした態度は、つねにその子どもの劣等感を深めることになるからである。


子どもに敵意ある態度(注:アドラーはこの表現をよく使っている)を身につけさせかねない親の対応としては、典型的なものとして次の点があげられます。

他者との比較、子どもへの非難、がみがみ言うこと、叱ること、戒めること、殴ること・・・・

これらの態度は、子どもの劣等感を深めることになる、と言うのです。


アドラーの心理学は、問題点だけ指摘して終わる理論ではありません。しっかりと「どうすれば?」に回答を与える心理学です。

H.オーグラーは、具体策の前に次のことを書いています。

我々は、もちろん、間違った行為や無作法な行為を無視してはならない。しかし、子どもの欠点を直すためにどなりつける必要はない。間接的に彼/彼女の誤りに注意を引く方が優っている。たとえば、「よし、お前はそれを今回はよくやったが、この次は、もっとずっとよくやるようにしなければね」と言いながら・・・・。

また、この項の最後に近い部分では、こんな書き方もしています。

どんな保護も、子どもが迷いの路へ入リ込むのを防ぐことはできない。唯一の手段は、子どもが積極的なライフ・スタイルを発達させるように自覚させ、権威的な養育を避けることである。自主的に考え、責任を引き受けることを学んだ子どもだけが、悪い影響に抵抗することができるだろう。


これからは、箇条書きで具体的な対応を書きます。今日でも使えるやり方がたくさんあります。

1.アドラーは、家族が全員集まっている食卓では、平和で、朗らかで、好意的な雰囲気 ― このような雰囲気の中では、子どもは世間をもっと別の目で見るようになれる ― がみなぎっていることが大切だ、と大いに強調した。とりわけ今日、我々の忙しい生活がかなりの程度に神経を緊張させているとき、家族の食卓は、元気回復のための集合場所でなければならない。

2.家族布置の中で子どもの位置がたいへん重要なので、両親は、子どもたちの間に競争の起きることを避けることは重要。最初に生まれた子どもは、第2子を競争相手とみなしがちなので、第1子には第2子の誕生に対する心の準備をさせることが大切。

3.ある子どもが他の子どもと集い合い、友だちになるということは重要である。遊びの中で、また、スポーツの中で、子どもはよいスポーツマンになることや、協力することを学ぶのである。

4.子どもたちは、幼い時に、規則に注意を払い、他人に思いやりを持つようにしつけられなければならない。

5.子どもたちに職業の準備をするためには、物事をやり遂げたときの快感を経験させるようにしなければならない。

6.小さな成功は、子どもたちに学業への興味を呼び起こし、彼らは、もっと進んで、もっと努力して、より大きな成功を得るために、その上の課業をやり遂げようとする。

7.思春期とは、子どもたちにとってさまざまな困難な問題をもたらす時期である。若い人が不安と疑惑に満たされ、あらゆるものがその心を揺さぶるように見えるこの移行期には、教育者は、頼みになる同志にならなければならない。

8.子どもが積極的な適応性、楽観主義、勇気、自信、および共同体感覚を示すとき、さらに協力し、貢献することを学んだとき、教育者は、本当に自分の仕事を成し遂げたことになるのである。

私見を述べれば、7.の「教育者は、頼みになる同志にならなければならない」という表現に引かれます。

次に、アドラー式子育ては、自由放任主義ではありません。4.にあるように、「規則を守り、他人に思いやりを持つようにしつけられなければならない」という点にご注目ください。

さらに、8.は、教育者が目標とすべきこととして伝わってきます。

ところで、この章の最後に、アドラーの講演に続く討議の間に、ある人が上のような「アドラー式の教育法で出発できるより先に社会的条件の方が変えれなければならない」と言ったことに対して、アドラーは、次のように答えたのだそうです。

社会的条件を改善することが望ましいのはもちろんだが、しかし、人間同士になるように育て上げられた人びとだけが社会的条件を変えようと務めるだろう

これは、「まずは、社会が/学校が変わらなければ・・・・」と、よく言われるここと関連していますね。

すると、1人の女性が立ち上がって言ったのだそうです。

「講演者(注:アドラーのこと)が言ったことは正しいです。私たちは、社会的条件をそんなに早く変えることはできません。でも、私は、私の子どもたちを育てる方法を変えることはできます。そして、私は、明日から始めるつもりです」

1人の女性の発言には、アドラー以上の迫力があります。子どもを現実に育てている人こそが一番早く変化に取り組むのです。
子どもを現実に育てている人は、日々切実さに直面し、変化に取り組む勇気を持っているのです。


<お目休めコーナー> 社会的条件に関わらず咲くユリの花



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コメント
 
 
 
楽観主義 (hkimi)
2010-03-13 11:07:55
という言葉に惹かれます。奥が深いと思うので。
さらに「闘う楽観主義」という言葉が好きですね。

ここ数日自分の中では「感謝>お願い」こそ楽観主義の本質のような気がしています。

こちらはこぶしが花をが咲かせ始めました。
 
 
 
こぶしが花を咲かせ始めましたか (岩井俊憲)
2010-03-13 11:16:58
hkimi様

こぶしが花を咲かせ始めましたか。

春ですね。

「感謝>お願い」こそ楽観主義の本質、同感です。
 
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