シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

山本薩夫監督「不毛地帯」(配給・東宝、1976年、181分)☆☆☆★

2021-02-11 10:23:40 | 日本・1970年~


山崎豊子による同名小説の映画化です。ただし、監督は原作で描写されているシベリア抑留に興味がなく、戦闘機買い付けを巡る構造汚職の部分を膨らませました。とはいえ、タイトルの「不毛地帯」はシベリアのことです。また、汚職事件が60年安保のさなかに起きた事件だったので、原作にない安保闘争を絡めて描いています。

この作品は戦闘機をめぐる市場戦争の汚さを濃厚にまとめてあり、そこに多くの犠牲者がでることを教えています。現代日本の縮図です。苦しむのは家族や女性です。仕事(商売)に打ち込み、妻を邪険に扱う父親を娘・直子(秋吉久美子)が非難するシーンは印象的です。

陸軍参謀として関東軍の中枢にいた壱岐正(仲代達矢)は、シベリア抑留から戻り、妻(八千草薫)や子供たちに精神的に支えられて生きていました。

防衛庁からの誘いがあっても家族の反対が強く、彼は結局、近畿商事に勤め、繊維部に配属されます。しかし、社長・大門(山形勲)は壱岐の経験をかい、次期戦闘機買い入れ競争で力を発揮することを期待します。

壱岐はアメリカに研修派遣されます。そこで空軍基地に案内され、ラッキード社(笑)の新型機を見せられます。防衛庁の友人・川又(丹波哲郎)がそこに来ていました。すべて大門社長の仕組んだことで、新鋭機を見た壱岐は血が騒ぎます。そして、次期戦闘機はラッキードでなく、試作機2機をつくっているグラント社のものに決まりそうという情報を川又から得ます。

ここから壱岐は政界、財界を相手に水面下の工作を始め、辣腕を振るいます。
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