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【1004/06:県立淡海学園】「園の経験」力に決意新た 「学校不適応」越え、9人卒業 

2010-04-01 23:40:29 | Weblog
◇創立100周年--「寮母さんに救われた」

 この学園で学んだことを生かし、絶対に高校を卒業してみせます--。創立100年を迎えた県立淡海(たんかい)学園(甲賀市土山町)でこの春、15歳の男女9人が巣立った。非行や複雑な家庭環境など、さまざまな事情で学校にうまく適応できなかった子どもたち。少女の一人は「学園に来て本当に良かった」と話す。9人はそれぞれの目標を胸に新たな一歩を踏み出した。【金志尚】

 先月17日夜、いつも午後9時半に消灯する女子寮の部屋は、日付が変わっても明るかった。18日は卒業式。去り行く5人が、寮長と寮母、そして共に過ごした仲間に感謝の言葉を伝えていく。最後に直子(仮名)が言った。「ほんまの親がいないぶん、寮母さん……。寮母さんの笑顔に救われました」。言葉にならず、目には涙が浮かんでいた。

 3年前の夏に入園する前、直子は喫煙や飲酒を繰り返し、生活が荒れていた。生まれてすぐに両親が離婚。母方の祖母に引き取られた。今も「捨てられた」という思いがある。昨年5月、母の日を前に書いた作文には「許さへん」と記す一方、「母がいたらこんなんなってへんかもしれへん。一緒にいてほしかった」と、複雑な心境をうかがわせた。

 勉強嫌いだったが、入園して考え方が変わった。猛勉強し、県立高校に合格。「ここに来て、『ありがとう』『ごめん』と言えるようになった」と学園生活を振り返った。

 学園は全寮制で、09年度は小4~中3の男女25人が在籍。女子寮では寮長、寮母として吉川康之さん(48)、正美さん(45)夫婦が親代わりとなって子どもたちを指導する。26年のベテランの吉川寮長は、子どもたちに日記を書かせ、返事を書く時はその子の良い部分を褒めるように努めている。「ちゃんと見ているよ」というメッセージが子どもたちの安心につながるのだという。

 学園が昨秋、園生の家庭状況を調べたところ、実の両親に育てられたのは4人。大半の子が虐待やネグレクトを受けた経験があり、家庭内暴力を間近で見た子が6割に上った。杉森正園長(現中央子ども家庭相談センター所長)は「これでは『まともに育て』と言う方が無理」と話す。

 学園によると、過去に高校に進んだ園生が、すべて卒業できたわけではない。吉川寮長は直子らにあえて言った。「学園では時間がたてば誰でも卒業できる。何があっても高校を卒業してほしい。喜ぶのはそれからだ」

 卒業式当日。卒業生は一人一人壇上に上がり、大きな声で目標を発表した。就職する一人を除き、全員が「高校卒業」を目標に掲げた。吉川さん夫婦は「現実は厳しいが、学園での経験を今後の人生に生かしてほしい」と話していた。

 ◇全寮制の児童自立支援施設

 ◆淡海学園

 全国に58ある児童自立支援施設の一つ。1910年大津市に開設され、62年に甲賀市に移転した。全寮制で、三重県に近い山あいの敷地約10万6000平方メートルに三つの寮と校舎、グラウンド、体育館、畑などがある。寮は「夫婦小舎制」と呼ばれる運営形態で、職員夫婦が共同生活を送り、子どもたちの生活指導に当たる。子どもたちの学籍は卒業時にかつて在校した学校に戻り、卒業証書には当時の校名が記される。

(4月1日付け毎日新聞・電子版)

http://mainichi.jp/area/shiga/news/20100401ddlk25040674000c.html


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