手厚い住民サービスを続けてきた滋賀県栗東市が、膨らんだ借金と新幹線新駅中止の対応に迫られ、事業の見直しに大きくかじを切り出した。先月(2月)26日発表の2008年度当初予算案では、「今回は市民に直接影響する見直しは避けた」(北野一郎総務部長)としているが、独自事業を縮小・廃止する「やりくり」で急場をしのいだ形だ。
子どもの芸術鑑賞事業も「芸術に触れる機会はほかにもある」(同)として廃止される。市内の幼、保、小、中学校に通う4歳から13歳の子ども全員が年1回、プロの演劇や音楽を栗東芸術文化さきらで楽しむ市独自の取り組みで、「まちづくり、ひとづくり」の拠点とするさきら開館時から続いていた。削減額は1000万円に上る。
市営火葬場のない同市の市民は、草津市などの火葬場を市外料金で利用している。市内料金との差額が4万円以上あり、市は利用料を補助してきたが、従来の大人3万円から1万円に減額。見直しによる経費削減は500万円を見込む。
高齢者向けのバスの無料回数券は、最大で1万4400円分が支給されていたのが半額になる。「バスの利用促進など当初の目的は定着しつつある」(市財政課)という。削減額は500万円。
見直しに対し、「直接の利用者にはこたえるかもしれない」と心配するのは、市老人クラブ連合会の青木藤和会長(71)。一方、2人の子を育てる母親の林史代ウイング・ビュー自治会長(41)=綣2丁目=は、芸術鑑賞事業の廃止を「残念です」としつつも、「財政状況を考え、我慢することも多少は必要。あとは丁寧に説明を尽くしてほしい」と話す。
市は、「財政再構築プログラム」を08年度早期に策定し、事業や各種料金などのさらなる見直しを進めることも明らかにしている。3月議会は市が担うサービスを問い直す手始めとなりそう。
(3月2日付け京都新聞)
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008030200063&genre=A2&area=S10