■県議中心に主戦論/前回のリベンジ
【写真:自民党の参院選立候補予定者の事務所開きに出席する上野氏(左)=大津市で】
「(元蔵相の)武村正義さんだって、知事時代が無駄ではなかったと言っている」「知事から衆院議員になった人もいる。国政を目指す志から外れるとは言えない」。5月27日、大津市内の企業の一室で、前自民党衆院議員の上野賢一郎氏(44)は、県議3人と2市長に囲まれ、知事選へ立候補するよう要請されていた。
昨夏の衆院選滋賀1~4区で、自民党は上野氏を含めた候補4人が民主党候補に敗れ、県選出の国会議員はゼロに。昨年12月に県連会長に就任し、党再生に向けて始動した上野氏は、参院選滋賀選挙区の候補者を3月に公募でようやく擁立。知事選でも、水面下で独自候補の擁立を模索していたが、対応は事実上、後手に回っていた。
そんな状況下、再選を目指す現職の嘉田由紀子氏(60)が4月下旬、自民党県連に支援を要請。これまでの経緯を踏まえれば、受け入れは難しかったが、内部では「もうあきらめて知事に寄ろう」「民主党よりも先に知事支援を打ち出したほうがいい」という意見も出始めた。
【写真:事務所開きで気勢を上げる丸岡氏(右から2人目)=大津市で】
だが、嘉田氏の支援は見送られることになる。
5月に政治資金パーティーを開くため、県連関係者は入場券販売に奔走したが、支援者の関心は参院選より知事選の方が高く、「まさか不戦敗じゃないだろうな」「はよ候補者、出さんかい」と突きつけられた。
さらに、民主党県連と、嘉田氏を支持する政治団体「対話でつなごう滋賀の会」が、来春の県議選で過半数の議席獲得を目指し、選挙協力することで合意。「知事の仕業なのか。腹の内が読めん」。自民党県連内で、県議を中心に主戦論が再び高まった。
結局、告示日まで残り約1か月という土壇場で、上野氏は出馬要請を受け入れ、離党して無所属で戦う道を選んだ。自民党関係者らの個人的な協力に支えられた選挙戦になりそうだが、5月の県連定期大会で、自ら「党は崩壊寸前」と指摘したように、県内の党員は1万人を切り、10年前の3分の1以下となった窮状は、回復の兆しを見せていない。
◇
「嘉田知事のもったいないという言葉は、県民に使う金がもったいないという意味だ」
前県労連議長の丸岡英明氏(61)(共産党推薦)は5月28日、共産党県委員会などで結成した「明るい滋賀県政をつくる会」の会合で、嘉田氏を痛烈に批判した。
2006年の前回選で、嘉田氏が21万票以上獲得したのに対し、共産党が推した候補は7万票しか集められなかった。「我々も新幹線新駅やダムの建設に反対したのに、嘉田氏に票を奪われた」と、党県委員会の奥谷和美委員長は悔やむ。
それだけに、嘉田氏が2月に出馬表明した以降、党県委員会は“対嘉田戦略”に集中。弱点をつくため、雇用促進や教育の充実など暮らしの向上に重点を置いた政策を訴えることを決めた。
奥谷委員長らからの出馬要請を一時は断ったものの、2か月近く説得をされて出馬を決めた丸岡氏は「県民のためにも、4年前のリベンジ(雪辱)を果たす」と力を込める。
ただ、丸岡氏と同様に、舌鋒(ぜっぽう)鋭く嘉田県政を追及する上野氏の登場で、批判票が奪い合いになる可能性も浮上。激しさを増す戦局に、陣営はさらなる戦略の必要性を感じている。
(この連載は浦野親典、横田加奈が担当しました)
【関連ニュース番号:1006/136、6月19日】
(6月19日付け読売新聞・電子版)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/shiga/news/20100618-OYT8T01225.htm
【写真:自民党の参院選立候補予定者の事務所開きに出席する上野氏(左)=大津市で】
「(元蔵相の)武村正義さんだって、知事時代が無駄ではなかったと言っている」「知事から衆院議員になった人もいる。国政を目指す志から外れるとは言えない」。5月27日、大津市内の企業の一室で、前自民党衆院議員の上野賢一郎氏(44)は、県議3人と2市長に囲まれ、知事選へ立候補するよう要請されていた。
昨夏の衆院選滋賀1~4区で、自民党は上野氏を含めた候補4人が民主党候補に敗れ、県選出の国会議員はゼロに。昨年12月に県連会長に就任し、党再生に向けて始動した上野氏は、参院選滋賀選挙区の候補者を3月に公募でようやく擁立。知事選でも、水面下で独自候補の擁立を模索していたが、対応は事実上、後手に回っていた。
そんな状況下、再選を目指す現職の嘉田由紀子氏(60)が4月下旬、自民党県連に支援を要請。これまでの経緯を踏まえれば、受け入れは難しかったが、内部では「もうあきらめて知事に寄ろう」「民主党よりも先に知事支援を打ち出したほうがいい」という意見も出始めた。
【写真:事務所開きで気勢を上げる丸岡氏(右から2人目)=大津市で】
だが、嘉田氏の支援は見送られることになる。
5月に政治資金パーティーを開くため、県連関係者は入場券販売に奔走したが、支援者の関心は参院選より知事選の方が高く、「まさか不戦敗じゃないだろうな」「はよ候補者、出さんかい」と突きつけられた。
さらに、民主党県連と、嘉田氏を支持する政治団体「対話でつなごう滋賀の会」が、来春の県議選で過半数の議席獲得を目指し、選挙協力することで合意。「知事の仕業なのか。腹の内が読めん」。自民党県連内で、県議を中心に主戦論が再び高まった。
結局、告示日まで残り約1か月という土壇場で、上野氏は出馬要請を受け入れ、離党して無所属で戦う道を選んだ。自民党関係者らの個人的な協力に支えられた選挙戦になりそうだが、5月の県連定期大会で、自ら「党は崩壊寸前」と指摘したように、県内の党員は1万人を切り、10年前の3分の1以下となった窮状は、回復の兆しを見せていない。
◇
「嘉田知事のもったいないという言葉は、県民に使う金がもったいないという意味だ」
前県労連議長の丸岡英明氏(61)(共産党推薦)は5月28日、共産党県委員会などで結成した「明るい滋賀県政をつくる会」の会合で、嘉田氏を痛烈に批判した。
2006年の前回選で、嘉田氏が21万票以上獲得したのに対し、共産党が推した候補は7万票しか集められなかった。「我々も新幹線新駅やダムの建設に反対したのに、嘉田氏に票を奪われた」と、党県委員会の奥谷和美委員長は悔やむ。
それだけに、嘉田氏が2月に出馬表明した以降、党県委員会は“対嘉田戦略”に集中。弱点をつくため、雇用促進や教育の充実など暮らしの向上に重点を置いた政策を訴えることを決めた。
奥谷委員長らからの出馬要請を一時は断ったものの、2か月近く説得をされて出馬を決めた丸岡氏は「県民のためにも、4年前のリベンジ(雪辱)を果たす」と力を込める。
ただ、丸岡氏と同様に、舌鋒(ぜっぽう)鋭く嘉田県政を追及する上野氏の登場で、批判票が奪い合いになる可能性も浮上。激しさを増す戦局に、陣営はさらなる戦略の必要性を感じている。
(この連載は浦野親典、横田加奈が担当しました)
【関連ニュース番号:1006/136、6月19日】
(6月19日付け読売新聞・電子版)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/shiga/news/20100618-OYT8T01225.htm