子どもが親から虐待を受ける事件が後を絶たない。県内でも死亡事件が過去5年間に5件発生。県によると、虐待相談件数は年々増え、児童1000人当たりでは全国で最も多い。背景には、家庭の事情による増加に加え、関係機関の連携が進んで、これまで潜在化していた虐待も発見されるようになった面もある。悲惨な事件を未然に防ぐ対策は急務だ。 (浅井弘美)
虐待は、経済的な困窮に伴う親のストレスや、ドメスティックバイオレンス(DV)による家庭崩壊など複合的な要因で増えている。県子ども・青少年局によると、県内の市町に寄せられた相談件数(通報含む)は、2008年度は2307件、09年度は12月末時点ですでに2383件と、前年度を上回っている。
内容(08年度分)は(1)食事を与えず放置するなどのネグレクト(保護の怠慢または拒否)が48・8%(2)暴行を加えたり、けがをさせる身体的虐待が26・5%(3)両親のけんかを見せつけるなどの心理的虐待が23・5%(4)わいせつな行為をする性的虐待が1・2%-となっている。
県警少年課によると、過去5年間で児童虐待の摘発は23件。うち死亡に至った5件は、06年に高島市で2歳女児に熱湯をかけた事件など、身体的虐待によるものだ。最近では、昨年2月に湖南市で母親が娘2人の首を絞めて無理心中を図った事件など、子どもが危険にさらされる事案は続いている。
ネグレクトは発見が難しいとされ、今年3月、奈良県桜井市で起きた5歳男児の餓死事件では乳幼児健診の未受診期間が長い上、保育園や幼稚園に通っておらず、関係機関が察知できなかった。県内の乳幼児健診の受診率は3歳6カ月で89・8%と全国的に見ても高いというが、10人に1人は未受診のため、ネグレクトがあっても分からない恐れは残る。
【写真:児童福祉士たちが子どもの命を救うため日夜相談に応じている=彦根市小泉町の彦根子ども家庭相談センターで】
県は、児童虐待防止法が施行された2000年以降、学校や保育園などの機関と自治体でネットワークをつくってきた。関係機関からの通報などによる相談が増え、児童虐待に詳しい龍谷大社会学部臨床福祉学科の山田容准教授は「虐待の小さな兆しに気づく力が関係機関に育ってきているからではないか」と評価している。
ただ、現場は対応に追われており「命がかかっているから先延ばしできない。毎日が野戦病院のようだ」(彦根市小泉町の彦根子ども家庭相談センター)とぎりぎりの状態。県子ども・青少年局は「細かなケアが必要だが、電話対応を1回で終わらざるをえないこともある」と話す。
奈良などの事件を受け、県は15日に市町の管理職を集めた緊急会議を開き、乳幼児健診の未受診者への家庭訪問で状況把握や安全確認をするよう協力を求める。山田准教授は「虐待の発見と子育てがうまくいかない人を支えることをセットに施策を考えないと、子育てを監視するようなものになる。母親にプレッシャーを与え、支援機関を敬遠してしまうことにつながりかねない」と注意を促している。
【関連ニュース番号:1003/18、3月3日;1001/124、1月18日など】
(4月4日付け中日新聞・電子版)
http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20100404/CK2010040402000008.html
虐待は、経済的な困窮に伴う親のストレスや、ドメスティックバイオレンス(DV)による家庭崩壊など複合的な要因で増えている。県子ども・青少年局によると、県内の市町に寄せられた相談件数(通報含む)は、2008年度は2307件、09年度は12月末時点ですでに2383件と、前年度を上回っている。
内容(08年度分)は(1)食事を与えず放置するなどのネグレクト(保護の怠慢または拒否)が48・8%(2)暴行を加えたり、けがをさせる身体的虐待が26・5%(3)両親のけんかを見せつけるなどの心理的虐待が23・5%(4)わいせつな行為をする性的虐待が1・2%-となっている。
県警少年課によると、過去5年間で児童虐待の摘発は23件。うち死亡に至った5件は、06年に高島市で2歳女児に熱湯をかけた事件など、身体的虐待によるものだ。最近では、昨年2月に湖南市で母親が娘2人の首を絞めて無理心中を図った事件など、子どもが危険にさらされる事案は続いている。
ネグレクトは発見が難しいとされ、今年3月、奈良県桜井市で起きた5歳男児の餓死事件では乳幼児健診の未受診期間が長い上、保育園や幼稚園に通っておらず、関係機関が察知できなかった。県内の乳幼児健診の受診率は3歳6カ月で89・8%と全国的に見ても高いというが、10人に1人は未受診のため、ネグレクトがあっても分からない恐れは残る。
【写真:児童福祉士たちが子どもの命を救うため日夜相談に応じている=彦根市小泉町の彦根子ども家庭相談センターで】
県は、児童虐待防止法が施行された2000年以降、学校や保育園などの機関と自治体でネットワークをつくってきた。関係機関からの通報などによる相談が増え、児童虐待に詳しい龍谷大社会学部臨床福祉学科の山田容准教授は「虐待の小さな兆しに気づく力が関係機関に育ってきているからではないか」と評価している。
ただ、現場は対応に追われており「命がかかっているから先延ばしできない。毎日が野戦病院のようだ」(彦根市小泉町の彦根子ども家庭相談センター)とぎりぎりの状態。県子ども・青少年局は「細かなケアが必要だが、電話対応を1回で終わらざるをえないこともある」と話す。
奈良などの事件を受け、県は15日に市町の管理職を集めた緊急会議を開き、乳幼児健診の未受診者への家庭訪問で状況把握や安全確認をするよう協力を求める。山田准教授は「虐待の発見と子育てがうまくいかない人を支えることをセットに施策を考えないと、子育てを監視するようなものになる。母親にプレッシャーを与え、支援機関を敬遠してしまうことにつながりかねない」と注意を促している。
【関連ニュース番号:1003/18、3月3日;1001/124、1月18日など】
(4月4日付け中日新聞・電子版)
http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20100404/CK2010040402000008.html