国立滋賀病院の市民公開講座が7月6日午後3時から同病院二階会議室で開かれた。第10回を迎えた今回は、近年、社会問題として大きくクローズアップされている児童虐待をテーマに開催されました。全国の児童相談所に寄せられる虐待の相談件数は年毎に増加、中でも何も抵抗できない小児虐待についてはここ数年で十倍に急増している現状があります。
小児虐待は、負傷後、病院に運ばれることで発覚するケースが多く、診察に当たる医療関係者は、負傷の状態を診て不審を抱き、保護者などから事情を訊くことでその実態を把握できる立場にいます。再発防止につなげられる重要な砦の役割を担っていることを再認識し、日常の診察業務に活かそうと開かれました。
講師に大阪医療センター名誉院長で四条畷学園大学学長・廣島和夫氏を招き、小児整形外科医の豊富な経験からみた講演「小児虐待の実情」に院内の医療関係者や一般市民ら合わせて40人が耳を傾けました。
廣島氏は、虐待による幼児の骨折について詳しく解説。その中で「本来、親や家族の保護の下で育てられている乳幼児が骨折するようなことは、極めて稀である。まして普通考えられないような骨折があれば、虐待があっったとの疑いを持って診察にあたることが大切」と前置きした上で、①負傷してから診察に訪れるまでに時間がかかっている②ケガをした状況説明に矛盾が多い③乳幼児が負傷した目撃者がいない③子どもの衣服の乱れや汚れ、栄養不良④普段、起こり得ない骨折⑤(父)親を呼び出しても来ないなど状況が重なれば、より慎重に診察にあたり、疑いが濃くなれば児童相談所に連絡して子どもを助け出すことが大切、と説きました。
また、子ども虐待は、昔からあったことだが、近年では反復される事例が目立っている、さらに、宗教的な理由で親が手術などの治療を承諾しない「医療ネグレクト」の問題など、虐待の問題が複雑化している実態を紹介しました。加害者側の要因に①親自身が子どもの頃に虐待された経験がある②生活上のストレスが多い③社会的に孤立している④親が満足出来ない子ども、愛情形成が困難な子どもと思いこんでいるなどが考えられると話しました。
最後に、参加した医師から「虐待であることが分かった場合、どのタイミングで加害者に話すればいいのか」との質問に「負傷の症状を医学的な見地から説明し、矛盾点の状況説明を求めるとほとんどの加害者(親)は、黙ってしまうことが多い。加害者が話を聞けるような状態に落ち着いた時に児童相談所に連絡すると解決が早まることが多い」と答えました。
同病院では、今月末から小児整形専門外来に廣島氏を迎え、月二回診療業務に当たってもらうことにしており、児童虐待の防止に向けた体制づくりに取り組むことにしています。
(7月9日付け滋賀報知が報道)
http://www.bcap.co.jp/s-hochi/n070709.html#5