イーダちゃんの「晴れときどき瞑想」♪

美味しい人生、というのが目標。毎日を豊かにする音楽、温泉、本なぞについて、徒然なるままに語っていきたいですねえ(^^;>

徒然その182☆ Be-Pop-A-Night in 町田!☆

2014-09-19 23:50:07 | ☆ザ・ぐれいとミュージシャン☆
           


 2014年9月12日、神奈川の町田市の Jazz Live House「NICA'S(ニカズ)」に、jazz友の誘いで Be-Popを聴きにいってきました。
 あのね、Be-Pop(ビパップ)っていうのは、Jazzの一形態。
 50年代に全盛を極めることになる、ハードパップの前身のJazzの呼び名なんです。
 あ。かつての人気マンガ「Be-pop-Highschool」 とはまったく無関係なんで念のため。
 あの伝説の天才ミュージシャン---バードことチャーリー・パーカー! やデージー・ガレスピーなんかがはじめた、火の吹くようなアドリブが主体になった、限りなくシンプルでいて奥深かつ風雅な Jazz の呼称がビパップ。
 ここだけの話、僕は、Jazz のなかでは、このビパップがいちばん好きなんです。
 ハードパップは、コルトレーンなんかのイメージで代表されるように、とにかくアドリブが長いんですわ。
 聴きながらちょっと居眠りこいて、目覚めてもまださきほどのテナーのアドリブがつづいててビックリ、みたいなそーんな世界。
 まるでブルックナーみたいではないですか。
 それはそれでスリルがあって、ま、僕はそっち系の HotJazzもなかなか好きなんですが、こと46、7年から50年代初期あたりに全盛を極めたパップの魅力には、ちょっとかなわない。
 もー Be-Pop ったら、超・凄いんですってば---!
 僕は、音楽史上、Mozart の次に才能があったのがチャーリー・パーカーだって、いまもって堅く信じてます。
 うん、僕の大贔屓のホロヴィッツよりも、持って生まれた才能って点でいえば、パーカーのほうが上だったと思うな。
 お疑いの方があれば、なにもいわず Charlie Parker on Dail-- completed--を聴いてみるよろし。
 ええ、これこそ、人類史上最高最上のアドリブ(即興演奏)ですとも。
 これは、耳のある方なら一瞬で感知可能でせう。
 もう、それっくらいモノがちがうんだな、パーカーは…。(ToT)

 しっかし、パーカーの音楽について記述するだけの筆力は、残念ながらいまの僕にはありませんし、Jazz的な文法にも正直疎い、それに、今回のページはパーカーについて語るのがテーマではないので、そのへんはキッパリ切り捨てて、9.21 Night の話に進みたいと思います。

 この夜、イーダちゃんは、Jazz友の誘いではるばる町田市まできてたんですよ。

 Jazz Coffee & Whisky 「 NICA’Sーニカズー」---
  神奈川県町田市森野1-13-22 渋谷ビル3F
      042-729-8048


 出演バンドは、村田博氏(tp)率いる、<Time FOR Fun>!
 ちなみに、バンド面子は以下の通りです---


                


 僕は、それまで生でビパップを演ってる店があるなんて知らなかったんですよ。
 新宿によくJazzを聴きにいったのは、だいたい20年くらいむかしのことでしたし、まさか、この21世紀に、アチチなビパップが聴けるとは思ってもみなかった。
 これは、すべてにおいて Jazz友であるS氏のお蔭デス---Sさん、感謝!

 で、PM7:15に待ちあわせて店いって、だいたいPM8:00に演奏がはじまったんですけど、もー このギグ、超・渋かったなあ…。

 リーダーんの村田さんは、この道47年の71才のベテラン・トランペッター。
 僕ははじめて聴いたんだけど、素晴らしかったな…。
 なんちゅーか、吹くフレーズフレーズにいちいち説得力があるんスよ。
 染みるっていうのかな? もちろん、演奏そのものはテーマが終ったら個々のアドリブですから、言葉と音楽はちがうし、彼の音楽が具体的になにをいってるのかは分からない。
 でも、なんかくるんスよ---音量そのものはそれほど大きくないし、曲芸みたいに裏のリズムを強調したりすることもない---でも、この方、あとノリのリズム感が絶妙でした!---どっちかというと地味めのトーンで、あくまで抑制をきかせながら淡々と吹くって感じなんですけど、この村田さんのソロになると、ステージの空気感がぱっと変わるんだな。
 で、バンドのメンバーと客席にそのチェンジが一瞬で伝わって、店全体にふしぎな緊張感がさっと生まれるの。
 なんだろう、あの自信に満ちた一種いいがたい貫禄は…?
 やっぱ、経験? 年輪? 
 あいにくのこと、僕は、それを明示することはできないんですが、ひとつだけたしかだったことは、氏が当夜奏でたのは「極上のブルーズ」だったということです。
 安っぽい、タレビでよくたれ流してるような、テカテカ光った受け狙いの音楽ショーなんかじゃないのよ。
 苦くて、辛くて、淋しくって、でも、笑おうとして、唇のはしを常にもちあげようとしているブルーズの結晶が、そこにはありました。
 僕、聴きながら、テーブルに指でバックビートを刻みながら、「うん、そうだ」「そうだ、そうだ」と心のなかでずーっとつぶやいてましたもん。
 そうして、そうした語りのなかに、ときおり名状しがたい悲しみの影がふっと差しこんできて、ドキッとするの。
 それがいつくるか分かんないから、こっちはもう全身耳にして聴いてるしかない。
 こんなに前のめりになって音楽聴いたのはひさしぶり---村田さんの演奏には、僕にそうさせるだけの何物かがありました。
 それは、技量に優れた、ほかのメンバーの演奏にはない「なにか」です。
 僕は、氏のプレイのなかのその独自の「香り」と「苦み」とに魅了されました。
 氏だけが奏でられるオンリーワンのスモーキーな抒情---ええ、めっちゃ渋かったんですよ、村田さんってば……。(ToT>





 氏の次にソロを受けついでいたテナーの岡田さんは、ずいぶん若い感じでした。
 推測だけど、まだ30代そこそこなんじゃないだろうか?
 彼がまたね、実力あるひとなのよ---村田氏とちがって、あんまり抑制臭を感じないんです、若さを隠さないっていうか---伸びと張りのあるトーン、それと、気持ちのままに、なんとも官能的な息の長いフレーズを次々と途切れめなく吹きまくっていくんです。
 僕は、彼には、凄い才能を感じました。
 天性ののびのびした「歌心」っていうのかな? ときどき走りすぎたり、フレーズが字余りになって聴こえるときもしばしばあるんだけど、そうした風情までが絵になるっていうか…。
 うん、僕は、彼、「大器」だと思いますね。
 ただ、岡田さんには、ブラックというよりは、ロリンズみたいなラテン系統の「血」を感じたな---。

 で、トップの写真で村田さんといっしょに写っている、ピアニストの紅野さんなんですが、僕がこの夜、村田さんのトランペットとともに魅せられたのが、彼のピアノプレイなんでありました。
 紅野さんのピアノは、まず、緊密な音、それから確実かつコンパクトなタッチで僕をはっとさせました。

----お。うめえ!

 ま、Jazz Pianist ならほぼ例外なくみんなうまいんですが、やたらブラックぶらず、どっちかというとクラシカルなタッチで、しっとりと己が世界を綴っていく氏のピアノに、僕はだんだんと惹きつけられていきました。
 モンクやバド・パウエルみたいな、なんじゃ、こりゃ!? といったタイプの野性味満載のピアノじゃない。
 氏は、もちまえの緊密な音とコンパクトなリズム感でもって、ちょっとクールに自分の世界を描いていくんです。
 ここを聴け! とか、ほらほら、ここが見せ場だぞ! みたいな香具師的な手口は、まず使わない。
 だもんで、最初は僕、氏のピアノが地味っぽく聴こえてたんですね。
 でも、それ、ちがってた---氏のピアノ、実はとっても熱かったんです。
 なんちゅーか、緊密でキャッチーなフレーズを幾重にも織りかさねていって、氏は、氏独自のクライマックスをじわじわ作りあげていくんです。
 要するに瞬発系じゃない、音楽の底からじわりじわりと自分のテンションが滲んでくるのを、じっと待ちうけている持久系のピアニズムとでもいうのかな…?
 だっから、ゆーっくりしたソロのほとんど最後尾で、氏のピアノが静かに爆発したのを最初に目撃したとき、僕は、かなりびっくりしました。

----うお。凄え…!

 そう、フレーズ自体はスピーディーだったけど、ものすごーく息の長いソロだったんですよ、それは。
 フツーなら3、4個のフレーズを基礎にソロなんか組みたてていくもんだと思うのですが、氏のピアノでは、20~25くらいのフレーズがなだらかな山裾になって、その上の頂きにテンションのクライマックスが築かれていくのです。
 世界はぜんぜんちがうけど、僕は、彼のピアノを聴いて、クラッシックのラフマニノフをちょっと連想しました。
 似てないけど、なんか、音楽の作り---というか感性が似てるように感じたな。
 
 ええ、紅野さん、僕的には、大好きなピアニストです---。

 ソロじゃない、バッキングのセンスもたまらんかった。
 パーカーの、曲名忘れたけど、かなーり激しいイケイケの曲で、彼、村田さんのペットにひっそりとバックをつけてたんですけど、ぜんぜんイケイケ・リズムじゃない、和音のさざ波みたいなバックをつけてたときがあって、あれにはマジやられた…。

 あと、ジャズ友のSさんが日本一のジャズ・ドラマーと贔屓にする、宮岡さんのドラムも凄かった。
 インタープレイっていうんですか? ピアノとの絡み、ベースとの絡みとの瞬時の反応が、超・素晴らしい。
 繊細でいて、しかも、爽快で豪気な氏のドラミングは、ひとことでいって風通しがいいったらないの!
 この日の氏の出来は、はっちゃけてなくてイマイチだ---と常連でああるSさんはいってましたが、僕は、ソウルフルないいプレイだと思ったな。

 ベースは、この夜は、正規のベーシストの矢野さんじゃなくて、臨時の山口さんっていうスキンヘッドの方でしたけど、このひともなかなかよかった---ドラムの宮岡さんとの絡みは白眉でしたね、この夜の----。


          


 Jazzは、ただ、いまはあんま人気ないみたいっスね…。
 この夜の NICA'S のお客は、ちょっと少なかった---あーんないいプレイなのにもったいないよなあ---!
 これが70年代だったら、まちがいなくお客が殺到して立ち見になると僕は思うんですけど。
 ま、そのおかげでバンドの皆さんのサインがもらえたり---ええ、僕、彼等のCD買ったんスよ!---あまつさえリーダーの村岡さんのお話まで聴けたんで、文句なんていえた筋じゃないっていうのは分かっちゃいるんですが…。

 いずれにしても素晴らしいビパップを生の至近距離で聴けて、この夜は、イーダちゃんにとって極上の夜となりました。
 酒も、ピザも、ソーセージも美味しかった。
 あなたと夜と音楽と---いっしょにいった相手が男性のSさんだったんで、肝心の「あなた」が欠けている色気のない夜だったのはたしかなんですが、なに、これほどいい音楽が聴ければそんな些事はどうだっていいやね。
 というわけで、神奈川・町田にある Jazz House「NICA’S--ニカズ--」を推薦します。
 Sさん、ここ、また行きませうねえ---!
 たったいまこれを読んでくれている未知のあなたとも、いつかNICA’Sで顔をあわせることができたら嬉しいなって僕は思っています---おやすみなさい…。(^.^;>