イーダちゃんの「晴れときどき瞑想」♪

美味しい人生、というのが目標。毎日を豊かにする音楽、温泉、本なぞについて、徒然なるままに語っていきたいですねえ(^^;>

徒然その101☆なんかふしぎな熱海旅--来宮神社の「大楠」を訪ねて--☆

2012-03-28 00:58:19 | ☆パワースポット探訪☆
                            


 ひさびさの休みがとれたんで、腰の養生もかねて、この3月20日、近場の熱海に1泊2日の湯治としゃれこんでみました。
 なぜ、いま熱海なのか?
 去年の愛車全損事故により足なし状態がつづいていて、電車での遠出がだんだん面倒になってきたため---というのが第一の理由かな?
 で、第二には、新しく就いたいまの仕事では連休がなかなか取りづらいから---といった理由もありでせうか。
 そのような規制事項を踏まえたうえでの1泊2日の熱海旅だったのですが、いやー、それがなんともいえずふしぎな旅となったんですよ、今回は…。
 熱海駅への到着は、お昼すぎでした。ええ、いつもの常宿である「福島屋旅館」さんにまず荷物をおかせてもらって、昼間のさなかから閑散とした---うん、今回の熱海旅、休日前日で、かつ格好の青天という絶好の観光日和だというのに、観光客、恐ろしいほど少なかったんですよ---そんな閑散とした、人気のない、いい日和の熱海の町をぷらぷらと気ままに、まあさすらっていたと思ってください。

                
                       
                          上図:祝日前の晴天日だというのに閑散と静まった熱海銀座の光景

 具体的にいきませう。荷物をおいた「福島屋旅館」さんのそばには、源泉の「風呂の湯」ってのがあるんです。その源泉をちょい上ったさきに、熱海櫻が一本見事に花をつけてるのを見つけたんですよ。

----おおっ、凄っ。満開だ、こりゃ…。と、目を細めて携帯写真をぱちぱち撮っていたら。

 そしたら、上りの坂のところでそんな僕の様子を見ていたおばあさんが、いきなり話しかけてきたんです。

----ねえ、とってもきれいに咲いてますね…、って。

 これが、なんといっても第一のふしぎ事象かと存じます。
 ふりかえると、そこにいたのは上から下まで黒衣に身を包んだ、歯のない70代(推定)のおばあさん。
 僕はこのおばあさんの言葉にこくんとうなずいて、

----ええ、満開、いまが盛りって感じですよね…、とにっこり返しまして。

 それから、その櫻の木の下で、ふたりして延々おしゃべりしちゃいました。
 このおばあさん、聴けば、20年前にヨコハマの保土ヶ谷から移住されてきた方だとか。
 ええ、当時はいまとちがってまだ熱海は景気もよかったころですから、ヤクザ屋さんもいまよりうんと多かったんですよ。そのころの熱海を仕切っていたのは稲川会の系列でね…、

----えっ。稲川会といったらヨコハマじゃないんですか?

 そりゃあ、本家はヨコハマのほうかもしれませんが…、こっちの熱海でも稲川さんの勢いは凄かったんですよ…。もっとも、観光客がこんなに減っちゃってからは、稼ぎもなくなってきて、皆、ヨコハマのほうに移っていっちゃいましたけど、むかしのここいらはホント景気がよかったんですよ。ほら、その証拠に、この坂を上っていった梅園のすぐさきには、稲川さんの豪邸、いまもありますから…。

----へえ、豪邸ですか…。

 あなたと同じ年くらいの私の息子も、若い頃いちどヤクザになりたい、なんて馬鹿なことをいいだしましてね、あたしはヤクザなんてそんなに甘い稼業じゃないんだ、ということを教えてやりたくて、稲川さんの屋敷に息子をでっちにいかせたことがあるんですよ。毎朝タクシーでお屋敷まで送りとどけてやってね…、そうですねえ、2週間くらい頑張ったかしら? 掃除に洗濯に用足しに…それでようやく息子もげんなりして折れてくれまして……

 はらはらと櫻の花びらの舞う、春萌え坂のとちゅうで、遠いむかしの稲川会の興隆話を拝聴するのは、なんというか非常に浮き世離れした、ふしぎな味わいがありました。
 青空と、いまが盛りの熱海櫻と、いい匂いのするむかし話と、春霞のかかった遠くの海と…。
 これが、この日僕が体験した、ふしぎエピソードその1ですね---。


                           

 でもって、次には第二のふしぎ事象のご紹介---
 このおばあさんとお別れして、僕は、もそっと海沿いの、糸川橋の付近をぷらぷらと散策してたんですよね。
 なんか、急に美味しいものが食べたくなっちゃって。
 クルマの旅なら、ふだんは食べ物は思いきり節約節制しちゃうのですが、今回はお金のかからない電車旅ですから、めいっぱい美味しいものを食べちゃおうかなって思いまして。
 で、さんざん食べ物屋さんを何往復もして吟味して、とうとう跳びこんだこちら、


                     

 イタリア料理店「Termale-テルマーレ-」さん---まったくの本能で選んだこちらの店の料理が、なんとも絶品でした。
 あとからネットで調べたら、こちら、けっこう有名なお店だったんですねえ。
 僕は1300円くらいの「ツナクリーム・パスタ」と赤のグラスワインとを頼んだんですが、ここのパスタのソースはマジ美味でした。
 で、そのことを伝えて、お勘定をすませて、さあ、お店を出ようとしたとき、こちらのご主人が、

----あ。お客さん、さっき食事するまえ、カウンターで諸星大二郎の特集、読んでらしたでしょう?

----ええ、まあ読んでましたけど…、と僕はやや戸惑いながら。

 こちらのお店のカウンターには数冊の本が置かれてて、そのセレクトがなんというか、とってもユニークだったんですよ。
 本好きのイーダちゃんは、そのなかに諸星大二郎を特集した「ユリイカ」の増刊号があるのを見つけて、びっくりして、かなり熱心に目を通していたんです。ご主人は、きっとその様子をよく見てられたんですね。

----いやー、そうとう熱心に読んでおられたから、諸星さんのこと、好きなのかなって、そう思ったんですよ。

----ええ、たしかに。諸星さんは、ずいぶん好きですけど…。

----なら、その本、差しあげますよ。どうぞ、それ、持って帰られてください…。

----えっ!?

----いえね、店にただ置いておくより、そっちのほうが本にとってよさそうだ、と思ったもんですから。ほんとにどうぞ、ご遠慮なく…。

 と、こちらのご主人はあくまでにこやかに---そうして、イーダちゃんは、気まぐれで入った一見さんの熱海のイタリアン・レストランで、なぜだか諸星大二郎本を一冊、貰い受けてしまったのでありました…。<(_ _)> ←メルシーマーク。

 で、腹がくちて、「うーん、これからどうしようかな?」と伸びをしたときに思いだしたのが、熱海の巨樹情報。
 ここでふいにこんな巨樹のことを思いだしたっていうのを、僕的には第三のふしぎ事象に指定したいわけ。
 イーダちゃんは巨樹が非常に好きでして、機会があれば必ず見るようにしてるんですけど、熱海にもよくTVのパワスポ系の特集なんかで取りあげられるような、有名な巨樹があることは知っていたんです。
 さっそく通りがかりのジモティーっぽいおばちゃんに聴いてみます。
 すると、それ、来宮神社にある二千歳の「大楠」だということが分かりました。
 だとしたら、善は急げ、さっそく徒歩で来宮神社を目指しました。
 岡本ホテルのある坂を上って、ぐーんとまっすぐ---20分ほど歩いたら、目指す来宮神社が見えてきた。


                        

 こちらの建物の左側の坂をのぼったさきに、目的の、その樹齢二千歳の「大楠」はありました。

----うおーっ、でっかいなあ…。

 マジに太くて大きい…。
 それに、なんたる威厳でせうか。
 なんともいえない歴史の香りが、はるかな高みにある枝々から、しんしんと降りそそいできます。

           
               
 
 なんか、巨大なオームを目あげたときの「風の谷のナウシカ」の心境とでもいいませうか?
 あのときのナウシカってきっとこんな心境だったんだと思うな。もうね、心ごとすさーっと吸いあげられる感じ。
 そして、その吸われる感触が、とっても心地いいの。
 自分の呼吸も、いつのまにか巨樹にあわさるように、深くゆっくりになってきて。
 イーダちゃんは、この「大楠」さんのまわりを、見上げながら、ゆーっくり何周かしましたねえ。
 許可もらって---もちろん、巨樹さんに直接です---写真を何枚か撮らしてもらって、またしても何周かくーるくる。
 あとからきたカップルや観光客が木をあとにしても、イーダちゃんはまだ飽きもせず、「大楠」さんのオーラ圏内に停泊しておりました。
 もの凄い長い年月、存在しつづけてきた生き物だけがもてる、静かだけど、独自の威厳に満ちた、涼しげで居心地のいい「悟り」のオーラ---その空間にひたっていれるのは、極上の温泉に入っているのと同様の、ふしぎな恍惚感がありました…。


                      ×            ×

 でもって、常宿の「福島屋旅館」さんにもどって、イーダちゃんはまた一風呂浴びたんですわ。
 阿呆ですねえ、いい温泉に入ってると、ホント、それだけで満足しちゃうんです。
 うーむ、気持ちいいなあって---ニンゲンカンケーの気苦労とか、浮き世のしがらみとか、人工地震勢力への怒りだとか憤懣とかもいろいろあるけど、まあ、いいか、この世はすべてこともなしってことで…、みたいな即席の「ゆるゆる坊主」になっちゃうっていうか(笑)。


               

 あ。最後に追記ね---こちらのお宿のご主人が、「福島屋旅館」さんのHPを開設されました。

   昭和の熱海が生きている温泉宿 - 熱海温泉 福島屋旅館 HP www.atamispa.jp/

 ちなみに、こちらのご主人、非常に気合いの入った鉄オタさんでもありまして、お話が大変おもしろいの。
 特に、天皇が伊東から東京に帰られるって情報を入手したとき、鉄道のダイヤから熱海駅に寄られる時間をとっさに推理して、礼服を着て町の仲間と熱海駅まで陛下を歓迎にいった(もっとも、このとき天皇は下車されず、ホームから電車内への歓迎となったようですが)エピソードなぞは、松本清張の「点と線」のアリバイ崩しの話を聴いているようで、大変興味深く、手に汗握る思いで聴いてしまいました。
 というわけで、温泉とレトロと巨樹と鉄オタとに興味ある方がおられたら、ぜひにも熱海の、この「福島屋旅館」さんを訪ねたらいいよ、という宣伝をひとくさりやって今回のレポートの幕にしようか、と目論んでみたイーダちゃんなのでありました---。(^.^;>