北京・胡同窯変

北京。胡同歩きが楽しい。このブログは胡同のあんな事こんな事を拙文と写真で気ままに綴る胡同お散歩日記です。本日も歩きます。

第128回 通州・東順城街 (その一) 胡同の企らみ、秘かな愉しみ

2017-01-04 14:15:42 | 通州・胡同散歩
今回は「眼光紙背に徹す」、そんな“ややこしい言葉”を伴った胡同歩きになって
しまいました・・・。


今回ご紹介するのは、東順城街。


(この界隈の胡同を南北に貫く商店街・南大街から東方向を撮影。撮影日は2016年11月1日。)

明の洪武元年(1368年)に通州に城壁(下の地図を参照)が築かれた頃、この辺りは城内巡視
のための馬道で、「東馬道」と呼ばれていました。時代が下って中華民国成立後の1913年
前後、まず城壁の北側(東馬道の北側か?)に次第に人が住み始め、その後城壁が取り払われ
た新中国成立後の1952年以降、その跡地に居民区が形成されたようです。上の写真の右側
の東方向にのびる住宅が城壁跡地だったと考えられます。

「東順城街」の「東」とは下の地図に見られる通州旧城「南門」より東側にある事を
意味し、「順城」とは「城壁に沿って」という意味を持っています。


(清の光緒時代の旧通州城地図。水色のラインより右側に見られる城壁及びその内側が
「通州旧城」。その城壁と重なっている赤線部が現在の「東順城街」。なお、「旧城」
の「城」には「城壁」の意味があることをお断りしておきます。)



歩きはじめると、「おやっ?」と思うものが目に飛び込んできました。
昨年の春頃まではなかったのでは・・・と思うのですが。



このお宅、ご覧のように英語・数学・物理などを教える塾ですが、玄関脇に気になる
ものが。





どうした訳か、家風、家訓が書かれたパネルが貼られていました。
ま、まさか、このようなパネルが、東順城街の各戸に貼られているわけではないよね?と
思ったんですが・・・。

このパネルとそこに書かれた言葉を拝見して、最初、ちょっと面食らってしまったんですが、
よーく考えてみると、書かれた言葉から、今のこの国のさまざまなお家事情を読み取ることが
出来るんじゃないかな?と思いました。

それにしても、パネルに書かれた言葉と洋風家屋にかたどられたパネルとの組み合わせが、
なんとも興味深いですよね。それに、「いつまでこのパネルは貼られているんだろ?」なんて
興味も湧いてきました。


それでは、17号から1号までのお宅のパネルにどのような言葉が書かれているか、追跡したいと
思います。(以下、誤訳・迷訳ですが、日本語訳を付けておきましたのでご参考になれば、うれ
しいです。)





ありました。





家風・・・明理(聡明で道理に通じている)、勤倹(仕事に励み質素倹約する)、孝道(親を敬い、よく仕える)。
家訓・・・忠厚傳家久、詩書継世長。行善天明鑑、積徳勝積金。
     (忠実で温厚な家庭は長く続き、真摯な読書・学習はいつまでも家族を豊かに発展させる。
     善を行い、徳を積むことに勝るものなし。)





家風・・・厚道(温厚で誠実)、勤敬(仕事を敬う)、行善(善行をなす)。
家訓・・・徳善成就人、勤敬成就事。(徳善は立派な人を作り、勤敬は物事を成し遂げる。)







家風・・・勤倹(仕事に励み質素倹約)、孝道(親を敬い、よく仕える)、兄友弟恭(兄は弟に兄弟と
     しての愛情を尽くし、弟は兄を敬う。)
家訓・・・伝承淳朴家風、要身体力行、做有道徳的人。(淳朴な家風を伝承し、みずから実践
     して手本を示し、道徳を尊重する人になる。)





家風・・・厚道(温厚で誠実)、勤倹(仕事に励み、質素倹約)。
家訓・・・志存高遠、孝敬父母。(志を高く持ち、父母を敬い、孝養する。)
     為人和善、崇徳敬業。(人柄を善良温和に保ち、徳を尊び、仕事を敬う。)


ワっ!!

ニャンコの家族・・・



この家族には「家風」や「家訓」は必要ないようです・・・。



仲むつまじいニャンコの親子をあとに、14号の脇の路地を探索。







ここにも、ありました。
しかも、住所が同じ。



家風・・・勤倹厚道。(仕事に励み、質素倹約。)
家訓・・・為人多行善、斉家多勤倹、踏踏実実過日子。
    (善行をなし家をととのえ、勤勉で質素、真面目に日々を送る。)





ニャンコを飼っているお宅の花壇。








家風・・・父慈子孝、自立自強。
     (父は子を慈しみ、子は父に孝養を尽くす。みずから努力し向上する。)
家訓・・・対人対事対学問都要有一分愛心。(何事に対しても慈しみ、愛情を持つ。)





家風・・・厚道(温厚で誠実)、孝道(親を敬い、よく仕える)、勤労節倹(勤勉で質素)
家訓・・・忠厚永続、孝道久長。(忠実で真心が厚く親切、親を敬い、よく仕える。)
     勤奮進取、斉家報国、做尚徳之人。
     (怠らず努力し進んで物事に取り組み、家をととのえ治め、国のために力を尽くし、
     徳行を重んじる人になる。)









家風・・・吃苦耐労、孝老敬親。(困難に耐え苦労をいとわない、老人を大切にし親を敬う。)
家訓・・・厳于律己、寛以待人。明明白白做人、踏踏実実做事。(自己に厳しく、人様に対しては
     寛容。聡明な人になり、堅実に仕事をする。)







家風・・・厚道(温厚で誠実)、勤倹(仕事に励み、質素倹約)。敬業(仕事を敬う)。
家訓・・・弘揚厚道家風、做善良君子。(厚道を広める家風は、善良なる君子をつくる。)







家風・・・忠于祖国、至善燐里。(祖国に忠誠を尽くし、隣近所との助け合いを至善とす)。
     立徳興家、愛国敬業、做至善之人。(徳行を大切にし、家を盛んに、国を愛し仕事を敬う。
     それが至善の人をつくる)。
     
前を横切っているのは「中街(胡同)」。しかも、最南端です。



パネルがありました。









うっ、6号?

家風・・・孝道(親を敬い、よく仕える)、和諧(調和を重んじる)、忠厚(忠実で温厚である)。
家訓・・・主徳興家、代代相伝。孝老敬親、人人継承。(徳を重んじ家を盛んにし、代々伝える。
     老人を大切にし、親を敬うことを、代々継承する)。


・・・・・この日、ここまで来て、一瞬、8号と7号のパネルを見失ってしまいました



辺りを見回してみたのですが、見当たりません。





そうこうしていると、6号のお宅の脇に停めてあったクルマのドアの取っ手のパンダと、
目と目が合ってしまいました。



・・・8号と7号は、どこ ???


  
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6 コメント

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あけましておめでとうございます (koh)
2017-01-05 13:16:50
姜さんも、王さんも、隋さんも、すごいです!
さすが、論語の国ですね。
「勤」「徳」が目立ちますか?
私のうちなら何と書こうかな?
考えてみます。
あ、胡同窯変さんなら何となりますでしょうか?

本年もよろしくお願い致します<m(__)m>
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Re.明けましておめでとうございます(koh) (胡同窯変)
2017-01-05 14:17:40
あけましたおめでとうございます。

論語の国、すごいなぁ、と私も思いました。
ただ、改革開放後、経済発展に伴い、生活スタイル
が変わってきてしまい、その反動のようなものも
あるのかな? とも思っています。

私の場合、欠ける点がいっぱいあるので、
必要とする言葉が多すぎて困ってしまいます。(笑)

とりあえずは、夫婦そろって健康、個人的には
胡同歩きを楽しむことができれば十分です。

こちらこそ、
本年も旅行先の素敵なお写真や俳句を楽しみ
にしていますので、よろしくお願い致します。



返信する
窯変は曜変? (koh)
2017-01-09 14:49:20
数日前、TVで「曜変天目」茶碗を研究されている、愛知県瀬戸の職人さんが取り上げられていました。

一番に思ったのが、窯変=曜変 
同じでいいんでしょうか?

「胡同窯変」という名前を付けられた意味が少し分かりました。
予期せぬ面白さ、美しさの展開を楽しみにしています
返信する
Re.窯変は曜変? (胡同窯変)
2017-01-10 14:58:59
そういう素敵な番組にはこちらに来てからご無沙汰なので、うらやましい限り。

意味の違いという事で言えば、
窯変は、窯の中での(予想外の)変化それ自体を意味するのに対して、曜変は、「曜変天目茶碗」というように、変化してできた模様の事といって良いかと思います。

ただ、広く、「変化」という点では共通しているかな?とも、言えるかもしれません。

陶磁器を作る際の「予期せぬ面白さ、美しさ」をほんの少しでもよいので、当ブログでも出せればと思います。(笑)

アクセス状況が芳しくなく、ご返事遅れてすみませんでした。
返信する
ありがとうございます (koh)
2017-01-10 15:40:33
窯変と曜変の違い、分かりました

焼き物は、他の産地のでも、釉薬と熱や煤の影響で予期せぬ出来事が起きると、
TVで紹介してました。
こういった文化、或いは歴史を追求した、かなり深い番組は、NHKがよくしています。
受信料払ってるだけの事はあります

「べた」とは、今は「ありふれた」という意味に使われていますが
「べた」は印刷用語でバックを黒で塗りつぶしたもので、
胡同窯変さんのブログは正に「黒べた」に白抜きの文字で、絵文字が映えます

私は服の柄など、黒べたが子供の頃から好きでした。
今思い出しましたが、幼稚園で私の描く絵は黄色と黒色が殆どらしく、母が呼ばれて「実のお母さんですか?」
と聞かれたそうです。
色使いから問題児とされたみたいです
そんなことで、憤りを感じたこともあったと話してくれた母は、もういませんが…
どうでしょ、やっぱり私は問題児かなあ~?
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Re.ありがとうございます (胡同窯変)
2017-01-11 07:11:15
kohさんは、黒がお好きなんですね。
黒は落ち着きがあって、シンプルで、身につけるものならその人を引きたてる働きがあって、いいですね。
でも、私の場合は残念ながら似合わないようなので、トホホですよ。

>色使いから問題児とされたみたいです。

そんなことがあったんですか。
ごく幼い子供は、一般的に明るい色を好んだり、絵を描くときに使ったりする子が多いようなので、条件反射的に子供らしくないと思われてしまったのかも知れませんね。それに対して、黄色は子供が好きな色の1つではないでしょうか? とても明るくて、きれい。太陽の色ですかね。この黄色、大人になると子供の時とはちょっと違って見えるようです。
真偽のほどは不明ですが、ひとみが子供とは違い、濁ってくるからというのがその理由らしいです。

そういえば当ブログは黒べたでした。初めは黒ではなかったんですが、次第に飽きの来ない、落ち着いた色はないかなぁ?という気持ちと、映画館で映画を観ているような雰囲気を出したくて黒にしてみたんですよ。成功しているかどうかは、別ですが・・・。

>どうでしょ、やっぱり私は問題児かなあ~?
そ、それって、私のこと言ってません???(笑)
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