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細沼園のお茶飲み話

お茶の時間のひとときに、思いつくまま書きました。

生きのびるからだ  南木佳士

2009-09-05 16:22:43 | 読書メモ な行
生きのびるからだ  著者 南木佳士

《内容》
平日は淡々と勤務医としての仕事をこなし、休日の早朝から「しぶとく」小説を書きつぎ、ときに山を歩き、自然にむかってからだを開く。一歩一歩、山の奥に分け入ると、自意識で凝り固まった「わたし」が木の香や風に溶けてゆく。しょせん大地に還ってゆくこの身、生きて死ぬ者としての「わたし」をしみじみ体感する五十路もなかばを過ぎたある日、「授かりもの」を得る……。「生きのびた」著者だからこその、読む者の身の内を温かく浸す、静穏ながら強靭な言葉の数々、滋味溢れるエッセイ33篇を集めました。
       (紹介文より)

☆☆☆☆☆
―――医者になって4年目に、朝、顔を洗いに行く途中でぽっくり逝った祖母の死亡診断者を書いた。書きながら涙が止まらなかったのは、存在の世話をしてくれたひとの永遠の不在をどうやって諒解すればいいのかわからない身がもだえ、内を満たす水分がおのずから氾濫をおこしたのではないか。


―――人生でなにより大事なのは、どんなにみっともなくてもとりあえず生きのびること

てのひらのメモ 夏樹静子

2009-08-15 16:00:19 | 読書メモ な行
てのひらのメモ   著者 夏樹静子

《内容》
広告代理店で働くシングルマザーの種本千晶は、社内でも将来を有望視されているディレクターだった。彼女には喘息で苦しむ保育園児がいたが、大切な会議に出席するため子供を家に置いて出社し、死なせてしまう。子供に傷などもあり、検察は千晶を「保護責任者遺棄致死罪」で起訴。有罪になれば、三年以上二十年以下の懲役刑となる。市民から選ばれた裁判員たちは、彼女をどのように裁くのか?そして読者の貴方は、有罪無罪どちらに手を挙げるか?法曹関係者もうならせたリーガルサスペンス。
              (紹介文より)


―――野菜や椅子と同じに、人間関係も手間暇かけてつくっていくものなのだろうか。


―――その場その場では間違った行動でなかったものが、すべて不運な成り行きに支配され、思いもかけぬ大きな不幸へと導かれてしまった。

ひとり

2009-04-29 17:02:40 | 読書メモ な行
ひとり      著者 新津きよみ

《内容》
中学2年の夏、桃子は親友のすみれとバス旅行をしていた。ところがそのバスが事故を起こし、ふたりは崖下に転落してしまう。大怪我をしたすみれとともに救助を待った桃子だが、すみれは「わたしの分まで生きてね」と言い残して桃子の目の前で息を引き取った。その日以来、桃子は「すみれが自分の中で生きているような」不思議な経験をしながら成長した―。生と死で別たれても続くふたりの友情を描く、長編ホラー小説。
             (紹介文より)




乱反射

2009-04-25 16:55:19 | 読書メモ な行
乱反射   著者  貫井 徳郎

《内容》
ひとりの幼児を死に追いやった、裁けぬ殺人。街路樹伐採の反対運動を起こす主婦、職務怠慢なアルバイト医、救急外来の常習者、事なかれ主義の市役所職員、尊大な定年退職者……複雑に絡み合ったエゴイズムの果てに、悲劇は起こった。残された父が辿り着いた真相は、罪さえ問えない人災の連鎖だった。遺族は、ただ慟哭するしかないのか? モラルなき現代日本を暴き出す、新時代の社会派エンターテインメント!
           (紹介文より)


―――悔いてもどうにもならないことではあるが、それでも後悔の念は脳細胞のひとつひとつを食い破るほどに強い。時間を巻き戻せたらどんなにいいかと、これほど願ったことはかつてなかった。


―――ごろごろとした石を呑み込んだ心地だった。

明日の話はしない

2009-04-12 12:45:43 | 読書メモ な行
明日の話はしない     著者 永嶋 恵美

《内容》
「第一話 小児病棟」のわたし…難病で何年も入退院を繰り返して人生を悲観する小学生。「第二話 一九九八年の思い出」のわたし…男に金を持ち逃げされ一文無しになったオカマのホームレス。「第三話 ルームメイト」のわたし…大学を中退してから職を転々とし、いまはスーパーのレジ打ちで糊口をしのぐ26歳の元OL。「最終話 供述調書」のわたし…郵便局を襲撃し、逮捕された実行犯。「明日の話はしないと、わたしたちは決めていた」で始まる三つの別々な話が、最終話で一つになるとき―
            (紹介文より)


―――正直に答えたほうが面倒がなくていい。ひとつ嘘をつくと、その嘘が別の嘘を呼ぶ。絶対的な真理ではないかもしれないけれども、少なくともわたしの二十六年の人生ではそうだった。

何もかも憂鬱な夜に

2009-03-27 19:06:14 | 読書メモ な行
何もかも憂鬱な夜に     著者  中村文則

《内容》
なぜ控訴しない?
―施設で育った過去を持つ「僕」は、刑務官として、夫婦を刺殺した二十歳の未決死刑囚・山井を担当していた。一週間後に迫った控訴期限を前にしても、山井はまだ語られていない何かを隠している―。芥川賞作家が、重大犯罪と死刑制度に真摯に向き合い、生きる者と死にゆく者をつなぐ最後の希望を描き出す。
             (紹介文より)



―――自分の判断で物語をくくるのではなく、自分の了見を、物語を使って広げる努力をした方がいい。そうでないと、お前の枠が広がらない


―――「自分以外の人間が考えたことを味わって、自分でも考えろ」あの人は、僕達によくそう言った。「考えることで、人間はどのようにでもなることができる。・・・・世界に何の意味もなかったとしても、人間はその意味を、自分でつくりだすことができる」


―――お前はまだ何も知らない。この世界に、どれだけ素晴らしいものがあるのかを。





うつくしい人

2009-03-27 14:18:04 | 読書メモ な行
うつくしい人   著者 西 加奈子

《内容》
他人の苛立ちに怯え、細心の注意を払いながら重ねていた日々を自らぶちこわしにした百合。会社を辞め、「ただの旅行」で訪れた島のリゾートホテルのバーにいたのは、冴えないがゆえに百合を安心させるバーテンダー坂崎と、暇を持て余す金髪のドイツ人、マティアスだった。美しい瀬戸内海の離島、そこしかないホテルで不思議に近づく三人の距離。地下には、宿泊客が置いていく様々な本が収められた図書室がある。本に挟まっていたという一枚の写真を探すため、ある夜、三人は図書室の本をかたっぱしから開き始める―。会社を逃げ出した女、丁寧な日本語を話す美しい外国人、冴えないバーテンダー。非日常な離島のリゾートホテルで出会った三人を動かす、圧倒的な日常の奇跡。
           (紹介文より)


―――海が信じられないくらい、光っていた。声をあげた後は、ペットボトルを持ったまま、そこに立ち尽くしていた。
     (中略)
海も変わるのだ。こんな立派な海が。では、私が変わることくらい、環境によって自分を見失ってしまうことくらい、起こりうることではないか。


エ/ン/ジ/ン

2009-03-26 18:54:14 | 読書メモ な行
エ/ン/ジ/ン     著者 中島 京子

《内容》
身に覚えのない幼稚園の同窓会の招待状を受け取った、葛見隆一。仕事と恋人を失い、長い人生の休暇にさしかかった隆一は、会場でミライと出逢う。ミライは、人嫌いだったという父親の行方を捜していた。手がかりは「厭人」「ゴリ」、二つのあだ名だけ。痕跡を追い始めた隆一の前に、次々と不思議な人物が現れる。記憶の彼方から浮かび上がる、父の消えた70年代。キューブリック、ベトナム戦争、米軍住宅、そして、特撮ヒーロー番組“宇宙猿人ゴリ”―。
           (紹介文より)


―――埋まらない部分はたくさん残っているけれど、誰の過去だって埋まらない穴のようなものはあるはずだ。母親の記憶の中から、やがて自分も消滅するだろうけれど、自分の中に植えられた新しい記憶が、その喪失をいくらかは補うだろうと彼女は言った。


ハブテトルハブテトラン

2009-02-24 19:20:06 | 読書メモ な行
ハブテトルハブテトラン     著者 中島 京子

《内容》
登校拒否になった小3の大輔は、母の故郷・広島県の松永に転校。穏やかな瀬戸内海の町と人に出会い、元気を取り戻した大輔の胸にある思いがわきあがってくる! 広島県の松永を舞台に、はずむような備後弁でつづる物語。
(紹介文より)



おじいちゃん、おばあちゃんの家が遠くにあるって羨ましく思ってしまう。
そんな物語。
ハセガワさんが実はいい人なんだってところがなんともいえずいいです。



―――世の中のすべてが、十二色のクレヨンを使って塗りわけられるような簡単さだったら、わかりやすいことはわかりやすいよ。それがいいかどうかは別として。


―――ただ、ぼくの知ってたおとなしくて神経質ですぐに泣いてしまうサノタマミには、もう永遠に会えないんだな、と思った。人は変わるときには、ほんとうに変わる。だからもう、あの子には、絶対に会えないんだ。そのことを、どう考えたらいいのかわからなくてぼくはなにもする気にならなかったんだ。


―――「人の人生は長いけえ、いろんな時期があるもんじゃ」

冷えきった街

2009-02-04 21:50:29 | 読書メモ な行
冷えきった街     著者 仁木 悦子

《内容》
堅岡清太郎一家は続発する怪事件にまき込まれ恐慌を来していた。長男清邇は睡眠中にガス線を抜かれ、次男冬樹は暴漢に襲われ、末娘このみを誘拐するという脅迫状まで舞い込んだ。事件解明の依頼を受けた探偵三影潤が謎に挑むが、やがて第一の殺人が起こり悲劇の幕があく。呪われた一家を待ち受ける運命は・・・・・。
          (紹介文より)


―――人間は生まれたときのままで現在のようになるわけじゃあない。いろんな経験をして、いろんな生活をして、現在の自分が出来上がっているんだ。もし別の人生をたどっていたらそれは別の人間になるわけだよ。