goo blog サービス終了のお知らせ 

細沼園のお茶飲み話

お茶の時間のひとときに、思いつくまま書きました。

小さいおうち  中島京子

2010-06-20 22:34:19 | 読書メモ な行
《内容》
昭和6年、若く美しい時子奥様との出会いが長年の奉公のなかでも特に忘れがたい日々の始まりだった。女中という職業に誇りをもち、思い出をノートに綴る老女、タキ。モダンな風物や戦争に向かう世相をよそに続く穏やかな家庭生活、そこに秘められた奥様の切ない恋。そして物語は意外な形で現代へと継がれ……。最終章で浮かび上がるタキの秘密の想いに胸を熱くせずにおれない上質の恋愛小説です。
          (紹介文より)

☆☆☆☆★
―――十二や、十三の娘に、覚悟なんてものがあったためしはない。それはどんなに時代が変わったって、そう変わるもんでもないだろう


―――秘密はときによると、人のつながりを強めるけれども、場合によっては疎遠にもする。

―――僕はいつも、失くしたもののことばかり悔いている。あれやこれやと、後悔ばかりが胸をよぎる。

逃げる  永井するみ

2010-05-31 18:51:48 | 読書メモ な行
《内容》
優しい夫と愛しい子供との日々に、突然襲いかかる父との再会。忌まわしい過去を、おぞましい父の存在を、決して知られてはならない。家族を捨て、憎しみを胸に、死と隣り合わせの父親と彷徨う生活が始まる。どこへ行けばいいのか、いつまで逃げればいいのか…。追いつめられた女の苦渋の選択も切ない、哀しみの長編サスペンス。

☆☆☆☆☆
―――過去には確かに幸せな時間もあったのだ。なぜあの時間がずっと続かなかったのか。

―――その場その場の状況に流され、楽な方へと舵を取り、本当に大事なものを見失う。

―――自分自身に呆れる。しっかりしろと、自分をどやしつけたくもなる。

フラッシュ・バック-39  永井 泰宇

2010-05-03 16:11:28 | 読書メモ な行
《内容》
夜の新宿歌舞伎町。刃物を持った男が街中に飛び出し、意味不明の言葉を発しながら人々に襲いかかる。すぐさま男は取り押さえられ、事件は片付いたかと思われた。ところが取調べ中、犯人が奇妙な行動をとったことから、警察は精神鑑定を依頼。鑑定人・小川香深は覚醒剤の副作用と診断する。真相を探るべく犯人の故郷を訪れた香深が行き着いたおぞましい真実とは…。今なお日本中で論議の絶えない「刑法第三十九条」の是非を問う問題作、シリーズ第二弾。


K

さよならドビュッシー  中山七里 

2010-03-26 23:45:54 | 読書メモ な行
《内容》
ピアニストを目指す遥、16歳。両親や祖父、帰国子女の従姉妹などに囲まれた幸福な彼女の人生は、ある日突然終わりを迎える。祖父と従姉妹とともに火事に巻き込まれ、ただ一人生き残ったものの、全身大火傷の大怪我を負ってしまったのだ。それでも彼女は逆境に負けずピアニストになることを固く誓い、コンクール優勝を目指して猛レッスンに励む。ところが周囲で不吉な出来事が次々と起こり、やがて殺人事件まで発生する―。『このミステリーがすごい!』大賞第8回(2010年)大賞受賞作。
            (紹介文より)

☆☆☆☆★
―――その二本の足で立って前を見ろ。悲しい時には泣いてもええ。悔しい時には歯噛みしても構わん。しかし自分の不幸や周りの環境を失敗の言い訳にしたらあかん。


――― 一音一音は物理的な音波なのに重なり絡まり弾けることで絵にも詩にもなる。現実を凌駕する情景を見せることも一千万語に勝る叙情を語ることもできる。


―――人は誰でも強くありたいと願う。それでも予期せぬ不幸や生来の弱さから挫けることがある。そんな時、暗闇から光ある場所に導いてくれるのはすぐ隣から差し伸べてくれる血の通った掌だ。自分と同じく脆弱さも持ち合わせながらも、意志の力で克服しようと悪足掻きする人間の暑い掌だ。

神様のカルテ  夏川草介

2010-02-11 23:44:49 | 読書メモ な行
《内容》
栗原一止は信州の病院で働く、悲しむことが苦手な内科医である。ここでは常に医師が不足している。専門ではない分野の診療をするのも日常茶飯事なら、睡眠を3日取れないことも日常茶飯事だ。そんな栗原に、母校の医局から誘いの声がかかる。大学に戻れば、休みも増え愛する妻と過ごす時間が増える。最先端の医療を学ぶこともできる。だが、大学病院や大病院に「手遅れ」と見放された患者たちと、精一杯向き合う医者がいてもいいのではないか。悩む一止の背中を押してくれたのは、高齢の癌患者・安曇さんからの思いがけない贈り物だった。第十回小学館文庫小説賞受賞作。
          (紹介文より)

☆☆☆☆☆
―――人生とは晴れぬ霧に包まれた手探りの放浪にほかならぬ


―――まったく馬鹿げたことだとはわかっている。だが理屈ではどうにもならぬ悲哀、向ける方角のわからぬ憤りというものが、たしかに存在する。

ニサッタ、ニサッタ  乃南 アサ

2009-12-14 08:32:15 | 読書メモ な行
《内容》
明日から。明日から、がんばろう。失敗を許さない現代社会でいったん失った「明日」をもう一度取り返すまでの物語。普通のサラリーマンだった耕平は、会社の倒産をきっかけに、じわりじわりと落ちていく。まだ戻れる、まだ間に合うと思いながら。気がつけば、今日を生きるので精一杯。最初の会社を勢いで辞め、2番目の会社が突然倒産し、派遣先をたて続けにしくじったときでも、住む場所さえなくすことになるなんて、思ってもみなかった。ネットカフェで夜を過ごすいま、日雇いの賃金では、敷金・礼金の30万円が、どうしても貯められない。取り返しのつかないことなんてない、と教わってきたけれど。でも――。
             (紹介文より)

☆☆☆☆☆
―――「だぁれも見てねえと思っても、天はちゃあんと、見ていなさるもんだ。人を喜ばしてみたり、ちゃんと正しい行いをしてれば、そのうちきっとご褒美が来んの。そういうもんだ」


―――明日のことなんか、誰にも分かりっこねえもんだ。いっくら考えたって、どうなるもんでもんねえ。だからなあ、もうこわくてたまらんと思うときはねえ、まずは今日やることだけ考えてりゃあいい。

後悔と真実の色 貫井 徳郎

2009-12-13 21:32:24 | 読書メモ な行
《内容》
あの強固な呪縛から、いつか解き放たれたかった。若い女性を襲い、死体から人指し指を切り取る連続殺人魔「指蒐集家」が社会を震撼させている。警察は、ネットでの殺人予告、殺害の実況中継など犯人の不気味なパフォーマンスに翻弄され、足がかりさえ見えない。その状況下、捜査一課のエース、西條輝司はある出来事を機に窮地に立たされていた―。これは罠なのか?被害者たちにつながりはあるのか?犯人の狙いは何か?緻密な構成で不器用に生きる男たちを活写する傑作長編。
          (紹介文より)


―――己の仕事に対する矜持が、現実という名の鑢でごりごりと擦られているようだ。削られた矜持は、半分になって胸の奥底に溜まっていく。矜持の粉が自分を呑み込むのが早いか、矜持そのものが消え失せるのが早いか、


―――若い頃には、年を取ればそれなりの貫禄や威厳がついてくるものと考えていたが、どうやらそれは間違いらしいと認めざるを得なかった。生来の軽薄な性格は、たとえ髪に白いものが交じる年になっても改まりそうにない


―――もし時を遡ることができるなら、愚かな己を力ずくでも戒めるだろう。しかし現実には過去は帰ってこず、殺伐とした生活がここにあるだけである。後悔は体の細胞ひとつひとつを食い破るほどに深い。

    

骨の記憶 楡 周平

2009-11-08 15:43:50 | 読書メモ な行
骨の記憶   著者 楡 周平

《内容》
没落した東北の旧家の嫁のもとに届いた宅配便は51年前に失踪した父の頭蓋骨だった。差出人は、中学卒業後、集団就職で町を出てその翌年に火事に遭って死んだはずの同級生。いったい誰が、何のために―。隠されていた過去が、昭和の記憶とともに今、明らかになる。人生の光と影を余すところなく描いた力作長篇。
              (紹介文より)

☆☆☆☆
―――人の一生とは必ずや帳尻が合うものでなければ、それこそ不公平というものだ。

夜想  貫井 徳郎

2009-10-27 20:25:09 | 読書メモ な行
夜想  著者 貫井 徳郎

《内容》 
事故で妻と娘をなくした雪藤の運命は、美少女・遙と出会って大きく動き始める。新興宗教をテーマに魂の絶望と救いを描く傑作長編。
             (紹介文より)

☆☆☆☆
―――人間の心にはヒューズに似た物が備わっていて、あまりに負荷がかかるとブラックアウトするのだ。しかしこんな現象のお陰で今に至るも長らえているような気がする。

悪いことはしていない 永井するみ

2009-09-12 16:53:43 | 読書メモ な行
悪いことはしていない   著者 永井 するみ

《内容》 
大手企業リーロテックに入社して4年。真野穂波は、尊敬する上司・山之辺の秘書として慌ただしくも充実した日々を送っていた。ところが、ある日、同期の亜衣が突然失踪した。彼女のブログには「会社の上司にホテルに連れ込まれそうになってショック…」と最後の書き込みが。穂波は山之辺を疑い始め、亜衣の部屋を訪ねる。そこには、いつか見た光景―ピスタチオナッツの殻が散っていた。
        (紹介文より)

★★★★
―――言葉にして問いかけられなければ、打ち明けることのできない思いもあるのだと痛感した。