◆配役:
◆あらすじもどき:
幕開き
定式幕が開きますと外題を大きく横書きした幕があり、
その幕外に講談師の旭堂南左衛門さんがせりあがってきます。
そこで語られるのはこのお話しの発端の発端 というか、発端の背景です。
剣の腕はたつけど、なんていうかよくありがちな、ちょっとキレやすい性格の
横山図書という人がいたこと。
その図書が会津藩の剣術指南に抜擢され、藩内の男性陣の憧れの的:お伊予さんを
嫁さんに迎えたこと。
それゆえ藩内には、横山図書に対するネタミンやソネミンが陰ながら横行していたこと。
などなどをパンパンと机をたたいて語った旭堂さんは、幕の後ろに
吸い込まれて退場。タイトル幕があがりいよいよお芝居スタートです。
発端
刀の目利きで通る舅が妖刀と目利きして、一度は購入をやめようとした刀を、
ネタミン・ソネミンにあふれた門弟たちにそそのかされて買ってしまった横山図書は、
さらに、その門弟たちにあることないこと吹き込まれ、
奥さんが不義をはたらいてると信じ込んでしまったもんだから、いけない。
酒のちからも手伝って、家に帰って、買ったばかりの妖刀で奥さんを成敗。
ところがそこにたまたま来合わせた、刀の購入の仲介をしてくれた印南十内から
門弟たちのいったのは 根も葉もないこと、不義はなかったと聞かされたもんだから
さぁ大変。
図書のしたことは、成敗ではなくただの妻殺し。
となれば、「これはマズイ。」と判断した図書。さてどうしよう。
図書の答えは「死人にくちなし」
何の罪もない、妻子ある印南十内を不義の相手に仕立て上げるべく、
こちらもぶった切ってしまいます。
そして、この惨劇を下手の家外で目撃したものが、ひとりありました。
この中間の宅助です。図書にいたことを気がつかれてしまいますが、
犬のふりしてこの場を逃れます。
さて、この惨劇は妖刀の成せる技なんでしょうか。
ただ、図書が最後につぶやく言葉は
「スケムネは良く切れるなぁ」
(どこかで聞いたぞ、そのせりふ(^_^;)でありました。
◆のたりの眼
この場面、正直、結構、眠気が(^_^;)。
【役者さん】
・欣弥さん・延郎さん
図書の門弟に欣弥さんがいました。
それから刀の売り元になる江戸から来た研ぎ師に延郎さん。
延郎さん、歌舞伎座の幸四郎さんのお芝居でお姿を見かけないと思ったら、
こちらでしたか!
・芝のぶちゃん
声が なんか笑三郎さんにように聞こえることが多くて
「あれ??芝のぶちゃんだよねぇ」と思うことがしばしばありました。
いつもより、ちょっと低め・・・なのかな?
・延夫さん
すっきりとした中間姿が似合います♪ ナマ足だし♪
舞台下手で袖でちょうちんの灯りを隠して、惨劇を目撃している姿が
なんかとてもよかったです。
犬の声もうまかったし~♪
浅草寺
さて、序幕より 時は流れて10年ひと昔。場所もお江戸に映りまして
これより2場の舞台は浅草寺。
印南十内の息子数馬が大川友右衛門と出会う場面 ということで
いよいよ 主役二人の登場です。
そしてこの場では上手二階に再び講談師の旭堂南左衛門さん登場。
義太夫に変わってスルスルスルスルと語られていきます。
さて舞台では、数馬がこの浅草寺の寺小姓だったときに細川の殿さんに
スカウトされてお小姓になったこと、
その細川家の腰元あざみちゃんは 数馬にほれてるらしいことなんかが
わかる場面のあと、いよいよ二人の出会いの場。
よそ見してた数馬が下手から出てきた友右衛門が舞台正面でぶつかります。
このとき、数馬が手にしてたのが杜若。
これが二人の道のキーアイテムです。
どっちかっていうと、一目ぼれしたのは友右衛門の方でしょうか。
数馬は「なんだか気になる」程度ではなかったかな、とこの時点では。
さて 少し時間がながれて同じ浅草寺。
友右衛門のことが無意識に気になっている という
花道七三の数馬のモノローグから舞台は始まります。
まずは数馬のおっかさんが登場。
ここで、数馬が序幕の事件で巻き添えくらってころされちゃった
印南十内の息子で、横山図書への敵討ちを考えていることがわかります。
一方、お寺へ日参する数馬を目当てに日参する武士:大川友右衛門。
昨日は数馬の中間と自分の中間が小競り合いをしたとあって
今日は声をかけるきっかけがあるわけです。
これを絶好のチャンス!と思ったかどうかは知りませんが、
今日の友右衛門は一味違います。思いのたけをしたためた
恋文なんかを懐に忍ばせてきたりしてるんです。
で、そのラブレターをしたためてたせいか、
それを手渡すためのシュミレーションにふけっていたせいか、
いつもよりお寺に来るのが遅くなってあせる友右衛門。
幸い無事出会えた数馬にそっけなく行かれそうになるも
「たもとに汚れが」と首尾よく?文をしのばせます。
たもとの文に気がつき、びっくりながらもソワソワオタオタしながら
足早に花道を去っていく数馬。
いつまでも数馬の去っていったほうから目が離せない友右衛門は。
茶屋のお姉さん?にも「ほの字」を見抜かれるほどの有様です。
その照れ隠しに参詣に行った友右衛門と入れ替わりに花道をやってくるのは
友右衛門妹:きく(序幕で図書が斬った奥さんと瓜二つ!)、
この兄弟と懇意のお医者様:玄庵先生、そしてきくちゃんと結婚したいという印南図書
(横山図書に瓜二つ!)。
この3人はきくの兄:友右衛門に二人の仲を報告しようとやってきました。
玄庵先生ときくちゃんが友右衛門をさがしにいった間に姿をみせたのは
10年前の惨事の唯一の目撃者:宅助。
印南図書と宅助の会話から、やっぱり印南図書=横山図書ということが
明らかにされます。
玄庵先生がなかなか友右衛門が見つからず図書のまつ茶屋にもどってくると
今日は用もあるので、とかなんとか言って、図書は先に帰ってしまいます。
結局この時、友右衛門に会ったのは、きくと玄庵先生のふたりだけでした。
さて場面は変わって 今度は細川の殿様のお屋敷。
浅草寺の場から、3ヶ月ほどたっているようです。
前の場面に登場した数馬のおっかさんが急逝したりして、
バタバタしていた数馬は浅草寺への日参が途絶えていました。
そんな数馬の前に、先ごろその祐筆ぶりを買われて、足軽に出世した
袖助という中間が現れます。
「たもとに汚れが」と数馬のたもとに短冊を忍ばせた袖助は、
なんとあの大川友右衛門。
浅草寺に現れなくなった数馬恋しさに主家を捨て、武士を捨て、
中間になって 数馬の仕える細川家にもぐりこんでいたのでした。
ここまでくると、根性です。(^_^;)
思いがけない友右衛門との再会、思いのこもった短冊に動揺する数馬は
行き会った腰元あざみちゃんが、その様子に不信がるほど。
数馬は逃げ出すようにあざみちゃんの前を去りますが、この時、まずいことに
例の短冊を落としてしまい、さらにそれをあざみちゃんに拾われてしまいました。
この短冊はあざみちゃんに 数馬を恋い慕う相手がいることを告げ、
あざみちゃんの嫉妬心に火種を落とします。
さて数馬の方ですが、なんと今度は数馬の方からアプローチです。
袖助に返事の文を投げて隠れる数馬。
思いがけなくもらった返事のその内容は、なんと深夜、数馬の部屋へのお誘いでした。
さて、その深夜。体調不良とウソついて部屋に引きこもっていた数馬の部屋に
袖助が忍んできます。
せまってきた袖助から 一度は逃げておいて行灯の灯を消し、
今度は自分から袖助の手を取って寝所に入ったり、
袖助の帯をクルクル~っとやるあたり、実は数馬、かなり積極的?(^_^;)
さて、そんな二人の逢引きをこっそりのぞくひとりの女。
それはもちろん あざみちゃん。
なにがくやしいって 想う人を寝取られたのはもちろんのこと
寝取ったのが「女じゃなくて男」ってことがくやしいわけで(^_^;)
で、嫉妬と怒りに燃える彼女は 例の短冊を証拠に細川の殿さんに
お小姓:数馬に不義密通ありとチクってしまうわけです。
もう、この時点でチクッたら数馬がどうなるか、なんてことは念頭には
ないんでしょうねぇ。(^_^;)
うーん、でも2幕目の展開から行くと、友右衛門は殺しても殺したりないくらい
憎いみたいだけど、数馬は殺したくはなさそうなんだよね~。
そのあたりの矛盾がちょっと気になるところではありますが。
さて、そんなことが起きてるとは知らず、そのころ数馬の部屋では
何をやってたか というと、ナニはすでに終わっており、
数馬が袖助に「自分が親の敵をさがしている」ということを告白し、
一緒に仇討ちをしよう、腕に傷をつけ、互いの血をかわして
と義兄弟の契りを交わしていたわけです。
が、そこに突然、数馬の部屋を訪のう 細川家用人連中の声。
あわてて袖助を長持ちに匿い、鍵もバッチリかけてから、迎えた用人ご一行は
「不義密通の訴えあり!」と数馬を殿さんの御前に引き立てていってしまいます。
一方、袖助は、長持ちに鍵がかけられたもんだから、出るに出られません。(^_^;)
細川の殿さんとその奥方の揃う御前で、例の短冊をつきつけられ、
さらにその不義の相手は足軽:袖助と、告発するあざみ姐さん。
そんな数馬に怒りの隠せない殿さんと奥方。
数馬は必死に否定しますが、最後は例の袖助入りの長持ちが持ってこられ、
動かぬ証拠の袖助がその中からでてきたうえ、さらに二人の腕に
まだ新しい切り傷まである暁には弁明のしようがありません。
不義密通は死罪。
怒り心頭の殿さんは「この場で自ら成敗してくれる!!」
という展開。
ここまではあざみ姐さん、想定の範囲内の展開に大満足だったんですが、
これを一気に想定の範囲外に満塁ホームラン打ったのはこの細川の殿様。
最後の弁明に「数馬の仇討ちに助力するため、義兄弟の契りを結んだ」
という袖助に、殿様、死罪を一転し細川家に奉公しないかとスカウトかけます(^_^;)。
自分のわがままで旧家を辞した以上、二君に見えず と
袖助ジツハ大川友右衛門の告白に、殿様はますます満足。
結局のところ、ふたりにお咎めはなし。
友右衛門は細川家にご奉公。
数馬は今日から友右衛門預かりになり、友右衛門の元で
敵討ちに向けて腕を磨く
という すばらしい大岡裁きに落ち着きます。
これに「【細】川家に【大】川が仕えるのはどうか」
と用人が 進言したりしてみますが、殿様は
「大川も 元をたどれば細川だ」
とすばらしい斬り帰し。(^_^;)
この突然の想定の範囲外の状況を受け入れらないあざみ姐さんを他所に、
これにてめでたく一幕目は幕と相成ります。
◆のたりの眼
【役者さん】
・愛之助さん
どっちかというと浅草寺の場面では そっけないような印象がありましたが
実は友右衛門のことがアタマから離れなかったり、
友右衛門の付文にドギマギしたり、「初恋」なのかな~ みたいな
感じがありありと。
「ウブなお嬢様」のようなかわいらしさがありますね~。
細川家の場面では、袖助がたもとに潜ませた短冊に相変わらず
どきまぎしちゃってるところがやっぱり初々しくてとてもかわいらしいですし、
さらに、返事の文をぱっとなげて隠れちゃうあたりもこれまた、とても
かわいらしいです♪♪
かと思うと 肝心の密通場面では、友右衛門の手をとって寝所にリードする大胆さ。
なんせ友右衛門の帯をくるくる~とやっちゃうんですから♪
どっちかっていうと、くるくる~とされるほうかと思ってました(^_^;)
唯一の失敗は袖助隠した長持にがっちり鍵かけちゃったところですよね(^_^;)
・染五郎さん
友右衛門はごく普通の武士だったんでしょうねぇ。数馬に会うまでは。
浅草寺の場面では、数馬に会うべく、文を渡すべく、オタオタしている姿が好印象で、
幸せになって欲しいやつだと思っちゃいます(^_^;) 上手いぞ、染五郎さん!
一転、細川家の場面では、突然、中元姿になってでてくるから、びっくり。
イヤホンガイド聞いてたからよかったものの、何の手がかりもなく観てたら、
わけわかんなくなってたかも(^_^;)
あ、あと義兄弟の契りを交わすところで見せた染五郎さんの腕。
しまっててかっこよかったです♪
・芝のぶちゃん
序幕と瓜二つの女性の役ですが、こちらの役はいつもの芝のぶちゃんの声です。
笑三郎さんの声がかぶりません。
ということは、序幕の方は意識して、声の感じを代えていたのかもしれませんね。
・延夫さん
まず浅草寺の場面。
今度はごろつき姿。うーん、個人的には中間姿の方がすっきりしてて好きかな~。
あと、最初に図書に声をかけた時は、とてもドスの効いた声だったんですが、
そのあとの会話は、最初がドスが効いてた分、ちょっと軽い感じが否めませんでした。
惜しい!
細川家の場面では、延郎さんと一緒に数馬を引っ立てにくる武士3人のうちのお二人です。
おぉ、お二人とも凛々しい♪
もちろん、お二人とも先ほど登場した時とは違う、二役目のお役です。
まあ「え?袖助、細川家に仕官したの?」なんて思う人は、いないですよねぇ(^_^;)
・吉弥さん
数馬のおっかさんの吉弥さんの登場場面は、ちょっと地味な場面のせいか、
昼も夜も睡魔に襲われた場面。(^_^;)
会津藩は10年前のあの事件をどのように裁いたのかわかりませんが、
こうして印南親子が江戸にいる ということは、この奥さんのダンナは
少なからず汚名を着せられたのかもしれません。
このおっかさんの苦労は並大抵のものではなかったことでしょう。
そうした苦労の面影を感じさせるおっかさんな感じがにじみ出ていました。
細川家の場面になると、今度はお茶目な殿様の奥方です。
これも手がかりなく観てたら、数馬のおっかさんは亡くなったんでは?
それとも再婚??と混乱しちゃうかも(^_^;)
しかし、この奥方の白と赤の対比の映える衣装の吉弥さん、
やはり凛としたこういう奥方、似合いますね~。キレイです♪
筋書きにはこの奥方は「男同士なんて」みたいな潔癖なタイプの奥方に
という意図なんかもあったりしたようですが、個人的にはそんな潔癖な感じはしませんでした。
むしろ、数馬をかばってあげよう、この二人をなんとか助けてあげようという
やさしさが、ふたりの義兄弟の契りを交わした傷が見つかる前に、奥方が
数馬にかけた言葉、「袖助は縁者か何かであろ、そうであろ?」というところに
現れているような気がしました。
・春猿さん
あざみちゃんは浅草寺では最初の方に出てきたんですが、あんまり印象にのこりません。
きれいだな~というのは印象に残ってるんですが。
この先の印象があまりにも強烈だからかもしれませんね(^_^;)
細川家の場面のあざみちゃん、「女じゃなくて男に」がくやしいのは、それは わかるな~。(^_^;)
また春猿さん こういう「えぇぃ、くやしぃ~っ」というお役、とてもうまいんですよね~(^_^;)
・紫若さん
茶店の女:おせんさんです。
友右衛門が数馬にほの字だと察したり、「そんな役者はしらぬわいな」と
いうあたり、いい感じです♪
・中間
浅草寺の場面で、数馬・友右衛門、それぞれが中間をつれています。
数馬の中間が國矢さん。友右衛門の中間は錦次さん。
どちらも なかなかいい感じです。
一方、細川家の場面で出てくる酔っ払い中間。
袖助昇進のお祝いで 酒盛りをしていた中間仲間が、数馬からの手紙を見ている
友右衛門を向かえにくるんですが、この酔っ払い中間のロレツのまわらなぶりが
なかなかリアルです(^_^;)
・殿様段治郎さん
おいしすぎますって、この殿様(^_^;)
この場で切り捨ててくれる と刀を抜くところまで
行きながら、一転、友右衛門を家臣にとりたててしまうこの柔軟さというか
お茶目さというか・・・いいですね~♪
大川もたどれば元は細川 というこじつけも含めて大好きですよ、
こういうお茶目な殿様♪
また、段治郎さんがこの殿様を気持ちよさそうに演じてるんです、これが。
なんか見てたら、段治郎さんに御浜御殿の綱豊さんをやってみてもらいたくなってきました。
【演出】
・かきつばた
二人の恋のシンボル的な存在である杜若。
舞台では青紫の花だけがたくさん張り付いたネットが舞台2階の部分、
左右に各二枚がぶら下がっています。
・濡れ場
影絵になっております。まぁ、とりあえず十分許容範囲内だったかと。
でも、これ以上いかれると・・・ひいちゃうかな、やっぱり(^_^;)
・傷の血
あと、義兄弟の契りを交わすのに、同じ小柄で腕に傷をつけますが、
このとき、二人の腕にキレイに赤い傷がつきます。
これ、刃の表と裏とに赤い塗料がついてるんでしょうか?
片側だけとか、表と裏との境の部分だけだと、後から斬るほうに
キレイに線がつかない可能性があると思うんですよね~。
1階席の時、一生懸命目を凝らしてみたんですが、イマイチわかりませんでした。
・傷、見つけたり。
3階席で観てる時は、用人さんがたまたま友右衛門の腕の傷をみつけたんだと
思ってたんですが、1階席で観た時、その前に引っ立てられていった数馬が
花道で偶然、用人さんに腕の傷に撒いたさらしをみられていたことが判明。
うーん、花道度、あがるなぁ。
2幕目 へ
のたりの眼(全体に対して) へ
まとめ記事へ へ
横山図書のちに印南図書(猿弥さん)
横山図書の奥さん:伊予(芝のぶちゃん)
この人が巻き添えくらったのが発端:印南十内(薪車さん)
目撃者:中元宅助(延夫さん)
印南十内の奥さん:お民(吉弥さん)
印南十内の忘れ形見で細川家お小姓の主人公その1:数馬(愛之助さん)
恋のためなら武士も捨てた主人公その2:大川友右衛門=足軽:袖助(染五郎さん)
印南図書の婚約者で伊予さん瓜二つの友右衛門妹:おきく(芝のぶちゃん)
数馬の主:細川越中守(段治郎さん)
越中守奥方:照葉(吉弥さん)
横山図書の奥さん:伊予(芝のぶちゃん)
この人が巻き添えくらったのが発端:印南十内(薪車さん)
目撃者:中元宅助(延夫さん)
印南十内の奥さん:お民(吉弥さん)
印南十内の忘れ形見で細川家お小姓の主人公その1:数馬(愛之助さん)
恋のためなら武士も捨てた主人公その2:大川友右衛門=足軽:袖助(染五郎さん)
印南図書の婚約者で伊予さん瓜二つの友右衛門妹:おきく(芝のぶちゃん)
数馬の主:細川越中守(段治郎さん)
越中守奥方:照葉(吉弥さん)
◆あらすじもどき:
幕開き
定式幕が開きますと外題を大きく横書きした幕があり、
その幕外に講談師の旭堂南左衛門さんがせりあがってきます。
そこで語られるのはこのお話しの発端の発端 というか、発端の背景です。
剣の腕はたつけど、なんていうかよくありがちな、ちょっとキレやすい性格の
横山図書という人がいたこと。
その図書が会津藩の剣術指南に抜擢され、藩内の男性陣の憧れの的:お伊予さんを
嫁さんに迎えたこと。
それゆえ藩内には、横山図書に対するネタミンやソネミンが陰ながら横行していたこと。
などなどをパンパンと机をたたいて語った旭堂さんは、幕の後ろに
吸い込まれて退場。タイトル幕があがりいよいよお芝居スタートです。
発端
刀の目利きで通る舅が妖刀と目利きして、一度は購入をやめようとした刀を、
ネタミン・ソネミンにあふれた門弟たちにそそのかされて買ってしまった横山図書は、
さらに、その門弟たちにあることないこと吹き込まれ、
奥さんが不義をはたらいてると信じ込んでしまったもんだから、いけない。
酒のちからも手伝って、家に帰って、買ったばかりの妖刀で奥さんを成敗。
ところがそこにたまたま来合わせた、刀の購入の仲介をしてくれた印南十内から
門弟たちのいったのは 根も葉もないこと、不義はなかったと聞かされたもんだから
さぁ大変。
図書のしたことは、成敗ではなくただの妻殺し。
となれば、「これはマズイ。」と判断した図書。さてどうしよう。
図書の答えは「死人にくちなし」
何の罪もない、妻子ある印南十内を不義の相手に仕立て上げるべく、
こちらもぶった切ってしまいます。
そして、この惨劇を下手の家外で目撃したものが、ひとりありました。
この中間の宅助です。図書にいたことを気がつかれてしまいますが、
犬のふりしてこの場を逃れます。
さて、この惨劇は妖刀の成せる技なんでしょうか。
ただ、図書が最後につぶやく言葉は
「スケムネは良く切れるなぁ」
(どこかで聞いたぞ、そのせりふ(^_^;)でありました。
◆のたりの眼
この場面、正直、結構、眠気が(^_^;)。
【役者さん】
・欣弥さん・延郎さん
図書の門弟に欣弥さんがいました。
それから刀の売り元になる江戸から来た研ぎ師に延郎さん。
延郎さん、歌舞伎座の幸四郎さんのお芝居でお姿を見かけないと思ったら、
こちらでしたか!
・芝のぶちゃん
声が なんか笑三郎さんにように聞こえることが多くて
「あれ??芝のぶちゃんだよねぇ」と思うことがしばしばありました。
いつもより、ちょっと低め・・・なのかな?
・延夫さん
すっきりとした中間姿が似合います♪ ナマ足だし♪
舞台下手で袖でちょうちんの灯りを隠して、惨劇を目撃している姿が
なんかとてもよかったです。
犬の声もうまかったし~♪
浅草寺
さて、序幕より 時は流れて10年ひと昔。場所もお江戸に映りまして
これより2場の舞台は浅草寺。
印南十内の息子数馬が大川友右衛門と出会う場面 ということで
いよいよ 主役二人の登場です。
そしてこの場では上手二階に再び講談師の旭堂南左衛門さん登場。
義太夫に変わってスルスルスルスルと語られていきます。
さて舞台では、数馬がこの浅草寺の寺小姓だったときに細川の殿さんに
スカウトされてお小姓になったこと、
その細川家の腰元あざみちゃんは 数馬にほれてるらしいことなんかが
わかる場面のあと、いよいよ二人の出会いの場。
よそ見してた数馬が下手から出てきた友右衛門が舞台正面でぶつかります。
このとき、数馬が手にしてたのが杜若。
これが二人の道のキーアイテムです。
どっちかっていうと、一目ぼれしたのは友右衛門の方でしょうか。
数馬は「なんだか気になる」程度ではなかったかな、とこの時点では。
さて 少し時間がながれて同じ浅草寺。
友右衛門のことが無意識に気になっている という
花道七三の数馬のモノローグから舞台は始まります。
まずは数馬のおっかさんが登場。
ここで、数馬が序幕の事件で巻き添えくらってころされちゃった
印南十内の息子で、横山図書への敵討ちを考えていることがわかります。
一方、お寺へ日参する数馬を目当てに日参する武士:大川友右衛門。
昨日は数馬の中間と自分の中間が小競り合いをしたとあって
今日は声をかけるきっかけがあるわけです。
これを絶好のチャンス!と思ったかどうかは知りませんが、
今日の友右衛門は一味違います。思いのたけをしたためた
恋文なんかを懐に忍ばせてきたりしてるんです。
で、そのラブレターをしたためてたせいか、
それを手渡すためのシュミレーションにふけっていたせいか、
いつもよりお寺に来るのが遅くなってあせる友右衛門。
幸い無事出会えた数馬にそっけなく行かれそうになるも
「たもとに汚れが」と首尾よく?文をしのばせます。
たもとの文に気がつき、びっくりながらもソワソワオタオタしながら
足早に花道を去っていく数馬。
いつまでも数馬の去っていったほうから目が離せない友右衛門は。
茶屋のお姉さん?にも「ほの字」を見抜かれるほどの有様です。
その照れ隠しに参詣に行った友右衛門と入れ替わりに花道をやってくるのは
友右衛門妹:きく(序幕で図書が斬った奥さんと瓜二つ!)、
この兄弟と懇意のお医者様:玄庵先生、そしてきくちゃんと結婚したいという印南図書
(横山図書に瓜二つ!)。
この3人はきくの兄:友右衛門に二人の仲を報告しようとやってきました。
玄庵先生ときくちゃんが友右衛門をさがしにいった間に姿をみせたのは
10年前の惨事の唯一の目撃者:宅助。
印南図書と宅助の会話から、やっぱり印南図書=横山図書ということが
明らかにされます。
玄庵先生がなかなか友右衛門が見つからず図書のまつ茶屋にもどってくると
今日は用もあるので、とかなんとか言って、図書は先に帰ってしまいます。
結局この時、友右衛門に会ったのは、きくと玄庵先生のふたりだけでした。
さて場面は変わって 今度は細川の殿様のお屋敷。
浅草寺の場から、3ヶ月ほどたっているようです。
前の場面に登場した数馬のおっかさんが急逝したりして、
バタバタしていた数馬は浅草寺への日参が途絶えていました。
そんな数馬の前に、先ごろその祐筆ぶりを買われて、足軽に出世した
袖助という中間が現れます。
「たもとに汚れが」と数馬のたもとに短冊を忍ばせた袖助は、
なんとあの大川友右衛門。
浅草寺に現れなくなった数馬恋しさに主家を捨て、武士を捨て、
中間になって 数馬の仕える細川家にもぐりこんでいたのでした。
ここまでくると、根性です。(^_^;)
思いがけない友右衛門との再会、思いのこもった短冊に動揺する数馬は
行き会った腰元あざみちゃんが、その様子に不信がるほど。
数馬は逃げ出すようにあざみちゃんの前を去りますが、この時、まずいことに
例の短冊を落としてしまい、さらにそれをあざみちゃんに拾われてしまいました。
この短冊はあざみちゃんに 数馬を恋い慕う相手がいることを告げ、
あざみちゃんの嫉妬心に火種を落とします。
さて数馬の方ですが、なんと今度は数馬の方からアプローチです。
袖助に返事の文を投げて隠れる数馬。
思いがけなくもらった返事のその内容は、なんと深夜、数馬の部屋へのお誘いでした。
さて、その深夜。体調不良とウソついて部屋に引きこもっていた数馬の部屋に
袖助が忍んできます。
せまってきた袖助から 一度は逃げておいて行灯の灯を消し、
今度は自分から袖助の手を取って寝所に入ったり、
袖助の帯をクルクル~っとやるあたり、実は数馬、かなり積極的?(^_^;)
さて、そんな二人の逢引きをこっそりのぞくひとりの女。
それはもちろん あざみちゃん。
なにがくやしいって 想う人を寝取られたのはもちろんのこと
寝取ったのが「女じゃなくて男」ってことがくやしいわけで(^_^;)
で、嫉妬と怒りに燃える彼女は 例の短冊を証拠に細川の殿さんに
お小姓:数馬に不義密通ありとチクってしまうわけです。
もう、この時点でチクッたら数馬がどうなるか、なんてことは念頭には
ないんでしょうねぇ。(^_^;)
うーん、でも2幕目の展開から行くと、友右衛門は殺しても殺したりないくらい
憎いみたいだけど、数馬は殺したくはなさそうなんだよね~。
そのあたりの矛盾がちょっと気になるところではありますが。
さて、そんなことが起きてるとは知らず、そのころ数馬の部屋では
何をやってたか というと、ナニはすでに終わっており、
数馬が袖助に「自分が親の敵をさがしている」ということを告白し、
一緒に仇討ちをしよう、腕に傷をつけ、互いの血をかわして
と義兄弟の契りを交わしていたわけです。
が、そこに突然、数馬の部屋を訪のう 細川家用人連中の声。
あわてて袖助を長持ちに匿い、鍵もバッチリかけてから、迎えた用人ご一行は
「不義密通の訴えあり!」と数馬を殿さんの御前に引き立てていってしまいます。
一方、袖助は、長持ちに鍵がかけられたもんだから、出るに出られません。(^_^;)
細川の殿さんとその奥方の揃う御前で、例の短冊をつきつけられ、
さらにその不義の相手は足軽:袖助と、告発するあざみ姐さん。
そんな数馬に怒りの隠せない殿さんと奥方。
数馬は必死に否定しますが、最後は例の袖助入りの長持ちが持ってこられ、
動かぬ証拠の袖助がその中からでてきたうえ、さらに二人の腕に
まだ新しい切り傷まである暁には弁明のしようがありません。
不義密通は死罪。
怒り心頭の殿さんは「この場で自ら成敗してくれる!!」
という展開。
ここまではあざみ姐さん、想定の範囲内の展開に大満足だったんですが、
これを一気に想定の範囲外に満塁ホームラン打ったのはこの細川の殿様。
最後の弁明に「数馬の仇討ちに助力するため、義兄弟の契りを結んだ」
という袖助に、殿様、死罪を一転し細川家に奉公しないかとスカウトかけます(^_^;)。
自分のわがままで旧家を辞した以上、二君に見えず と
袖助ジツハ大川友右衛門の告白に、殿様はますます満足。
結局のところ、ふたりにお咎めはなし。
友右衛門は細川家にご奉公。
数馬は今日から友右衛門預かりになり、友右衛門の元で
敵討ちに向けて腕を磨く
という すばらしい大岡裁きに落ち着きます。
これに「【細】川家に【大】川が仕えるのはどうか」
と用人が 進言したりしてみますが、殿様は
「大川も 元をたどれば細川だ」
とすばらしい斬り帰し。(^_^;)
この突然の想定の範囲外の状況を受け入れらないあざみ姐さんを他所に、
これにてめでたく一幕目は幕と相成ります。
◆のたりの眼
【役者さん】
・愛之助さん
どっちかというと浅草寺の場面では そっけないような印象がありましたが
実は友右衛門のことがアタマから離れなかったり、
友右衛門の付文にドギマギしたり、「初恋」なのかな~ みたいな
感じがありありと。
「ウブなお嬢様」のようなかわいらしさがありますね~。
細川家の場面では、袖助がたもとに潜ませた短冊に相変わらず
どきまぎしちゃってるところがやっぱり初々しくてとてもかわいらしいですし、
さらに、返事の文をぱっとなげて隠れちゃうあたりもこれまた、とても
かわいらしいです♪♪
かと思うと 肝心の密通場面では、友右衛門の手をとって寝所にリードする大胆さ。
なんせ友右衛門の帯をくるくる~とやっちゃうんですから♪
どっちかっていうと、くるくる~とされるほうかと思ってました(^_^;)
唯一の失敗は袖助隠した長持にがっちり鍵かけちゃったところですよね(^_^;)
・染五郎さん
友右衛門はごく普通の武士だったんでしょうねぇ。数馬に会うまでは。
浅草寺の場面では、数馬に会うべく、文を渡すべく、オタオタしている姿が好印象で、
幸せになって欲しいやつだと思っちゃいます(^_^;) 上手いぞ、染五郎さん!
一転、細川家の場面では、突然、中元姿になってでてくるから、びっくり。
イヤホンガイド聞いてたからよかったものの、何の手がかりもなく観てたら、
わけわかんなくなってたかも(^_^;)
あ、あと義兄弟の契りを交わすところで見せた染五郎さんの腕。
しまっててかっこよかったです♪
・芝のぶちゃん
序幕と瓜二つの女性の役ですが、こちらの役はいつもの芝のぶちゃんの声です。
笑三郎さんの声がかぶりません。
ということは、序幕の方は意識して、声の感じを代えていたのかもしれませんね。
・延夫さん
まず浅草寺の場面。
今度はごろつき姿。うーん、個人的には中間姿の方がすっきりしてて好きかな~。
あと、最初に図書に声をかけた時は、とてもドスの効いた声だったんですが、
そのあとの会話は、最初がドスが効いてた分、ちょっと軽い感じが否めませんでした。
惜しい!
細川家の場面では、延郎さんと一緒に数馬を引っ立てにくる武士3人のうちのお二人です。
おぉ、お二人とも凛々しい♪
もちろん、お二人とも先ほど登場した時とは違う、二役目のお役です。
まあ「え?袖助、細川家に仕官したの?」なんて思う人は、いないですよねぇ(^_^;)
・吉弥さん
数馬のおっかさんの吉弥さんの登場場面は、ちょっと地味な場面のせいか、
昼も夜も睡魔に襲われた場面。(^_^;)
会津藩は10年前のあの事件をどのように裁いたのかわかりませんが、
こうして印南親子が江戸にいる ということは、この奥さんのダンナは
少なからず汚名を着せられたのかもしれません。
このおっかさんの苦労は並大抵のものではなかったことでしょう。
そうした苦労の面影を感じさせるおっかさんな感じがにじみ出ていました。
細川家の場面になると、今度はお茶目な殿様の奥方です。
これも手がかりなく観てたら、数馬のおっかさんは亡くなったんでは?
それとも再婚??と混乱しちゃうかも(^_^;)
しかし、この奥方の白と赤の対比の映える衣装の吉弥さん、
やはり凛としたこういう奥方、似合いますね~。キレイです♪
筋書きにはこの奥方は「男同士なんて」みたいな潔癖なタイプの奥方に
という意図なんかもあったりしたようですが、個人的にはそんな潔癖な感じはしませんでした。
むしろ、数馬をかばってあげよう、この二人をなんとか助けてあげようという
やさしさが、ふたりの義兄弟の契りを交わした傷が見つかる前に、奥方が
数馬にかけた言葉、「袖助は縁者か何かであろ、そうであろ?」というところに
現れているような気がしました。
・春猿さん
あざみちゃんは浅草寺では最初の方に出てきたんですが、あんまり印象にのこりません。
きれいだな~というのは印象に残ってるんですが。
この先の印象があまりにも強烈だからかもしれませんね(^_^;)
細川家の場面のあざみちゃん、「女じゃなくて男に」がくやしいのは、それは わかるな~。(^_^;)
また春猿さん こういう「えぇぃ、くやしぃ~っ」というお役、とてもうまいんですよね~(^_^;)
・紫若さん
茶店の女:おせんさんです。
友右衛門が数馬にほの字だと察したり、「そんな役者はしらぬわいな」と
いうあたり、いい感じです♪
・中間
浅草寺の場面で、数馬・友右衛門、それぞれが中間をつれています。
数馬の中間が國矢さん。友右衛門の中間は錦次さん。
どちらも なかなかいい感じです。
一方、細川家の場面で出てくる酔っ払い中間。
袖助昇進のお祝いで 酒盛りをしていた中間仲間が、数馬からの手紙を見ている
友右衛門を向かえにくるんですが、この酔っ払い中間のロレツのまわらなぶりが
なかなかリアルです(^_^;)
・殿様段治郎さん
おいしすぎますって、この殿様(^_^;)
この場で切り捨ててくれる と刀を抜くところまで
行きながら、一転、友右衛門を家臣にとりたててしまうこの柔軟さというか
お茶目さというか・・・いいですね~♪
大川もたどれば元は細川 というこじつけも含めて大好きですよ、
こういうお茶目な殿様♪
また、段治郎さんがこの殿様を気持ちよさそうに演じてるんです、これが。
なんか見てたら、段治郎さんに御浜御殿の綱豊さんをやってみてもらいたくなってきました。
【演出】
・かきつばた
二人の恋のシンボル的な存在である杜若。
舞台では青紫の花だけがたくさん張り付いたネットが舞台2階の部分、
左右に各二枚がぶら下がっています。
・濡れ場
影絵になっております。まぁ、とりあえず十分許容範囲内だったかと。
でも、これ以上いかれると・・・ひいちゃうかな、やっぱり(^_^;)
・傷の血
あと、義兄弟の契りを交わすのに、同じ小柄で腕に傷をつけますが、
このとき、二人の腕にキレイに赤い傷がつきます。
これ、刃の表と裏とに赤い塗料がついてるんでしょうか?
片側だけとか、表と裏との境の部分だけだと、後から斬るほうに
キレイに線がつかない可能性があると思うんですよね~。
1階席の時、一生懸命目を凝らしてみたんですが、イマイチわかりませんでした。
・傷、見つけたり。
3階席で観てる時は、用人さんがたまたま友右衛門の腕の傷をみつけたんだと
思ってたんですが、1階席で観た時、その前に引っ立てられていった数馬が
花道で偶然、用人さんに腕の傷に撒いたさらしをみられていたことが判明。
うーん、花道度、あがるなぁ。
2幕目 へ
のたりの眼(全体に対して) へ
まとめ記事へ へ