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岐阜新聞

2007年08月18日 15時16分07秒 | 新聞
高原川の鮎激減…工場排水量は1.3倍に 神岡
 2007年08月18日08:29 
 飛騨市神岡町中心部下流の高原川で、放流された鮎が順調に成育せず、個体数も激減するなどの異変が起きていることが17日、分かった。同町鹿間の非鉄金属製錬会社・神岡鉱業にある工場の総合排水が高原川に排出される地点から下流で起きており、大きな支流と合流する約6キロ下流まで異変は見られる。工場からの排水は法に基づく排水基準は満たしてはいるが、昨秋から排水量がこの地点では約1・3倍に増えており、鮎の増殖を担う高原川漁業協同組合と神岡鉱業は異変の原因を究明するため、排水の下流に鮎を放流して経過を調べるなど対策に乗り出した。

 異変は鉛リサイクルや硫酸製造などのプラントのある鹿間工場の総合排水から下流、支流の中野谷までの区間で確認。同漁協は今春、排水付近から北陸電力牧発電所までに稚鮎約1400キロを放流したが、6月24日の鮎釣り解禁日に釣れなかった。例年は釣果が良いため、潜って調べたところ、鮎の数が極端に少ないばかりか、成熟した鮎特有の縄張りをつくらず、群れて弱っている様子。排水の上流は対照的に健全な鮎がよく釣れ「総合排水を境に線を引いたよう」(徳田幸憲同漁協参事)だった。

 昨年との違いは神岡鉱業が高原川に注ぐ工場排水を統合したこと。従来、神岡鉱業の排水は神岡町東町の亜鉛製錬工場と鹿間工場から出る二つの経路があった。亜鉛側の排水は北陸電力東町発電所から牧発電所に至る導水路に混入して高原川に放出していた。しかし3年前に亜鉛製錬工場で重油の流出事故があり、導水路に流れ込んだ一部が高原川に出た。北陸電力が神岡鉱業に対策を求め、神岡鉱業は導水路を使わず、約10億円を投じて亜鉛側から排水パイプを延長、緊急貯水槽や排水処理設備も整えて排水を鹿間側に一本化し、昨年10月に稼働を始めた。

 高原川への排水量は、鹿間側の1日3万トンに亜鉛側の同一万トンが加わって計4万トンとなった。亜鉛側、鹿間側の排水成分はほとんど変わらず、水質汚濁防止法の排水基準に適合。イタイイタイ病の原因となった重金属カドミウムは同基準の2―4%で自然界に近い値、亜鉛も同基準の10分の1の値という。

 ただ、亜鉛側の排水が牧発電所からの放出当時は1日約170―450万トンの水で薄くなった状態で、鮎の異常はなかった。同漁協は7月上旬、神岡鉱業に排水系統を元に戻すこと、鹿間工場の排水の下流に鮎を放って観察することを提案。神岡鉱業は排水系統を戻すことには難色を示したが、鮎の放流には同意、共同で排水の直下を含む下流2キロの間に400キロ、計2万匹を放った。

 今月16日までに両者で4回潜り、個体数の減少や活力がないとの認識を共有。今月下旬に最後の観察を行い、対策を検討する予定。神岡鉱業管理部は「排水を高原川に流しているのは事実。われわれに原因があるのならばきっちりと対応したい」と話す。同漁協は「鮎の遊漁料で2―4割の売り上げ減が予想される」と経営への影響は深刻だが、「鉱山があるのは高原川の宿命。鮎を脅かす原因を突き止め、排除する方策をともに考えたい」と話す。



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