飛水峡

思い出

読売新聞

2007年03月25日 10時05分34秒 | なぞ食探検隊
とやまポーク(上)


 庶民の味と思われていた豚肉だが、最近は全国でブランド化が進んでいる。県内でも「黒部名水ポーク」や「メルヘンポーク」「むぎやポーク」など様々な銘柄豚が登場し、スーパーに並ぶようになった。富山の豚の今を探ってみた。


常連さんは“指名買い”
 総務省の「家計調査」によると、富山市の年間豚肉購入量は約17・2キロ・グラムで、全国の県庁所在地など49都市のうち19位。牛肉は約7キロ・グラムで30位なので、豚の方をよく食べている。

 県農業技術課に聞くと、県内で生産される豚は「とやまポーク」という総称があり、その中にさらに、生産者や地域ごとに、九つの地域銘柄豚があるそうだ。

 中でもテレビの料理番組などでも脚光を浴び、一番メジャーなのが「黒部名水ポーク」。黒部市内の4軒の養豚業者が携わり、黒部川の伏流水に加え、飼料に竹炭を作る過程で出る「竹酢(ちくさく)」を混ぜている。「竹酢を加えると、豚肉特有のにおいが消え、保水力がアップし、肉汁が流れ出ない効果があるんです」と生産者の木島敏昭さん(57)。

 富山の豚の多くは、繁殖能力に優れたランドレース(L)と、発育の良い大ヨークシャー(W)、肉質が良いデュロック(D)という三つの品種を掛け合わせたLWDと呼ばれる豚だ。中でも県畜産試験場から誕生し、1日に約1キロ・グラムとすごいスピードで育つタテヤマヨークという品種を使って繁殖を行う生産者が多い。


「毎日見てやらなければ、うまく育たない」と話す木島夫妻  木島さんによると、豚は生産者によって「餌や育て方にこだわりがある」。木島さんも良い種豚を残すため、交配する豚を吟味したり、餌に加える竹酢の具合を調整したりと、35年余りの「経験とカン」を生かして試行錯誤を続けている。

 黒部市内で生産される豚約9000頭のうち、肉質が良く、黒部名水ポークを名乗れるのは2割ほど。「4軒とも味が違う。中から好みの味がきっと見つかるはずです。一生懸命作った味を評価してもらえれば」と木島さん。

 地元には、生産者の名前を書いて販売する精肉店があると聞いて、同市三日市の「冨士屋」を訪ねた。ショーケースに並ぶ肉には「木島ロース 100グラム195円」「新村バラ 100グラム165円」などと、部位の前に生産者の名前がある。

 「常連さんは“指名買い”です。それぞれにひいきの味があるんです」と店主の紺屋義春さん(71)。味にほれ込んだ消費者からの注文が全国から舞い込む。

 木島さんの豚舎で生まれたばかりの1キロ・グラムほどの子豚を抱かせてもらった。「出荷する時に『もっと大きく成長させてやれたのに』と後悔しないために、豚は毎日見て世話してやらないと」と木島さんと奥さんの幸子さん(52)。生産者の思いがこもった味をじっくりと味わいたい。


生産者の名前が書かれた黒部名水ポーク。「指名」買いの客が目立つという(黒部市三日市の「冨士屋」で)


隊長 桜色がおいしい印
 「冷えても、最近の豚肉おいしくない?」

 トンカツ弁当を食べながら思った。子どものころ、豚肉は冷えるとカチカチに固くなった。それもあって牛肉はごちそう、庶民的な価格の豚肉は、ちょっと格下といったイメージがあった。今や牛より人気も価格も高いブランド豚さえある。

 富山市小泉町北の「おかざき精肉店」の岡崎浩信さん(45)に聞くと、店頭に並ぶ肉のほとんどはデュロックとの交配種。脂身は、富山の雪のような純白、肉の色は咲いたばかりの桜のようなピンクがおいしい印という。赤みの強すぎる肉は、火が通ると固くなることが多いとか。

 牛肉のように赤い色の肉が良いと思っていた私は、ビックリ。肉は肉屋に聞け。



探検隊メンバー
寺嶌圭吾隊長…富山市内で酒店を経営する傍ら、食文化研究に情熱を注ぐ53歳

隊員O…高岡市出身。体形を気にしつつ、食べ歩きに励む30歳代




(2007年3月17日 読売新聞)



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