鏡の国のアリス:短評

鏡の国のアリスの本を読みながら短評をする

意味的には真だが、事実的には偽(=ありえない):「頬髯の先まで冷たくなる」問題(GLASS1-15)

2011-05-22 09:26:30 | Weblog
 気絶から息を吹き返した白の王様が怯えて言う。「あまりに怖かったので頬髯の先まで冷たくなってしまうほどだった!」と。

 PS1:「怒髪天を衝く」に似た状況か?ここでは怒りでなく恐怖。「頬髯の先まで冷たくなる」ほどの恐怖だった。ところが事情は複雑・・・・

 白の女王様が応じる。「あなたには頬髯なんて全然ないじゃないですか!」と。

 PS2:髪がなかったら髪が天を衝くことができない。頬髯がなかったら頬髯の先まで冷たくなることはありえない。

 PS3:王様は本当に怖かったのだろうか?①本当に怖かった場合。怖いから、頬髯の先まで冷たくなるはず。現に王様の表現通り、怖かった。ところが頬髯がない。では、どうして自分にはない頬髯の先まで冷たくなると言えたのだろうか?②王様は本当は怖くなかった。なぜなら頬髯がないので頬髯の先まで冷たくなること、つまり怖くなることができないから。

 PS4:「怖い」=「頬髯の先まで冷たくなる」の等式が意味的に成立している。事実的には「頬髯」が存在しない。王様の言明は意味的に真である。(これが上記①のケース。)ところが王様には「頬髯」がないので事実的にはありえない、つまり偽である。(これが上記②のケース。)

 PS5:「晴れている=太陽が空に出ている」:これは意味的に真である。ところが事実的には今日は曇っていて「太陽」が存在しない。太陽がないから、「晴れている=太陽が空に出ている」の等式はありえない、つまり偽である。意味的に真であることと、その意味が事実的にありえない、つまり偽であることは区別する必要がある。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿