教育相談室 かけはし 小中連携版

ある小学校に設置された教育相談室。発行する新聞「かけはし」が、やがて小・中3校を結ぶ校区新聞に発展しました。

単なる言葉の言い換えではない生きる姿勢

2008年12月25日 | 子育て
 私が教職に就いた70年代には、教育現場で「欠損家庭」という言葉が残っていました。それがしばらくして「母子家庭」に変わりました。しかし父親と暮らしている家庭の子どもも含めるため「母子・父子家庭」という言葉に変わりました。最近では「ひとり親家庭」という言葉が使われだしています。

 「欠損」=欠けて無くなるという意味には、明らかにマイナスの価値観が含まれています。他人の家庭の在り様を行政の末端に連なる学校が勝手に「欠損」と呼ぶことは、あまりにも失礼な表現だったと思います。あの元総理大臣だって離婚経験者です。両親いるのが普通で、そうでなければ「欠損」という時代は、過去のものです。社会の変化にふさわしい言葉を選ぶことが、学校や行政にとっても必要となったのです。

 更に言えば、親が一人しかいないことがマイナス面ばかりではないことを、多くの教員は子どもたちから学んできました。『かけはし124号』に掲載した高校生を思い出して下さい。あの高校生は、子どもとしてだけでなく家族の一員として親を支えたいと願っています。母親の苦労や悩みを支えられるのは家族である自分でしかいないと考えているのです。家族関係や人間関係が希薄になったと言われる現代にあって、この高校生の意識はとても貴重だと思うのです。

 足元を見てみましょう。私たちの◎◎中学校に通う子どもたちの中には、「ひとり親家庭」どころか、両親とも失った子どもが何人かいます。炊事や洗濯を分担しながら通学している中学生が何人もいるのです。苦労を苦労と思わず、まっすぐに生きている中学生の姿を見ると、自分自身の中学時代を思い返すのも恥ずかしくなります。

 「仲間から学ぶ」「子どもから学ぶ」「生徒から学ぶ」という視点で考えて下さい。学ぶべきものが見えてくるのではないでしょうか。中学生の皆さんは家族に優しいですか?大人たちは子どもたちの心を優しく強く(心が強い人は他人に優しくなれます)育てていますか?年末・年始は家族が一同に集まるチャンスです。家族の絆(きずな)について、もう一度考えてみて下さい。