教育相談室 かけはし 小中連携版

ある小学校に設置された教育相談室。発行する新聞「かけはし」が、やがて小・中3校を結ぶ校区新聞に発展しました。

全国学力テストの再開を考える

2007年01月31日 | 教育行政・学校運営
【40年ぶりに再開される全国学力テスト】
今年の4月、全国の小中学生を対象にした全国学力テストが復活します。学力テストを実施するのは、文部科学省が定めた小中学校のカリキュラム内容や学校教育への支援が、子どもたちの学力にどう反映しているのかを検証し、今後の教育行政に反映させるためです。

【全国学力テストが廃止に追い込まれた原因】
全国学力テストが、40年間実施されなかったのには、いくつかの理由がありました。その一つ、に学力テスト全国一の座を巡り一部の県で不正常な競争が行われたことがあります。たとえば①小学校6年生のテスト範囲は5年で習った分野だったので、6年生に進級してもテスト対策として5年生の復習ばかりしていた、②テスト中に監督の教員が子どもに答を教える、③成績下位の生徒が受験すると平均点が下がるのでテストを受験させずに欠席させたなどの事実が次々と発覚し、国会でも問題となったのです。カリキュラムを検討し教育行政に活かすという本来の趣旨とかけ離れ、学校や教育委員会の名誉を守るための競争に変質してしまったのです。こんなことで見せかけの平均点を上げても子どもたちの学力の向上につながるわけがなく、全国学力テストは廃止に追い込まれたのです。


【同じ失敗を繰り返してはならない】
今回実施されようとしている全国学力テストでは、前回のような失敗は繰り返されないのでしょうか。今回の学力テストでも都道府県や市町村、場合によっては学校毎の成績発表を行うべきと公言されている国会議員や教育関係者もおられます。学力テストの点数順に学校予算を配分することを決定している自治体もあります。競争が全面に出た場合、その点数を競うために異常な事態が起こらないか、疑問があります。すでに都道府県段階での学力テストが数年前から実施されていますが、学校間の競争が奨励されている地域では①事前にテスト問題が教員から子どもたちに漏れていた、②校長が子どもの答案用紙を書き換えていたという事実が明るみに出ました。不正がない地域や学校の平均点は低くなり、不正が行われた地域や学校の平均点が高くなる、そんな事態が起きたのです。

【高校未履修問題は何をものがたるのか~不正が得?】
昨年末、全国の進学校と呼ばれる高校で、必修科目の授業を行わず受験科目の授業に変えて進学実績を上げようとしている事実が明らかになりました。大学合格者数を競うため不正が、まかり通ったのです。東大に大量の合格者を出している東北地方の公立高校PTA会長がインタビューに答えていました。「(カリキュラムの不正は)私たち保護者が学校に要求したもので、先生方だけの責任ではありません。」全国で不正の事実が明らかになる中、大阪府の公立高校では一校も不正の報告がありませんでした。大阪の公立高校には小手先の受験テクニックに頼らず、全人格を育てようという伝統が、まだまだ受け継がれているのかと思いました。しかし不正をしなかったために他府県との競争に負けたとなると、当然の教育を行うことが困難になるのではないかと心配されます。現実に私立学校の中には「私学の独自性」を盾にして必修科目を実施せず受験科目の授業数を増やし、進学に有利であることを宣伝する学校もあります。そのことが少なくない保護者に受け入れられている事実もあります。耐震偽装事件や雪印・不二家の事件は国民の安全や命を脅かすものであるから批判されるのですが、子どもたちの進学に有利であるとなると不正常なカリキュラムであっても支持されるのです。全国学力テストの実施や平均点の比較が、こういった不正常な事態を悪化させないか、私は心配するのです。