教育相談室 かけはし 小中連携版

ある小学校に設置された教育相談室。発行する新聞「かけはし」が、やがて小・中3校を結ぶ校区新聞に発展しました。

公立学校・私立学校合同人権教育交流会に参加して

2006年09月20日 | 進路保障
『大阪私立学校人権教育研究会』『大阪市人権教育研究協議会』『大阪府人権教育研究協議会』の3団体が交流会を持つようになったのが1983年のことです。この3団体が交流を行うことにより、私立高校進学に様々な「差別」が持ち込まれないことがないよう努力してきました。具体的には、①面接時の配慮を欠いた質問や威圧的な質問をなくす②障害があることだけで受験の機会が奪われることがないようにする③中学校学習指導要領(学習基準)を超えた入試問題(難問・奇問)の出題をひかえる④進路相談や見学会に際して私立学校側が中学校教職員に対して接待を行わないようにする、といった取り組みがそうです。

 9月13日に行われた交流会は、①公立中学校と私立高校の連携②子ども集団とコミュニケーション力の育成③発達障害のある生徒の学習と人権の3つの分科会に分かれ、300名を超える参加を得て行われました。

全体会では今年度の入学試験のまとめが私立学校側から報告されました。私が特に印象に残ったのは、①面接試験で中学校側から指摘された問題と②障害がある子どもたちの受験についての報告です。面接試験についていくつかの事例を報告します。

【事例1】家族関係についての質問では①出願から受験までの間に姓の変更があり、そのことを中学校校長から伝えたにもかかわらず面接試験の場で質問された。②家族構成について詳しく聞かれた。
【中学校側の見解】家族構成などは、本人の能力や適性に関係のないものである。面接で質問されることによって、保護者の死別や離婚が、合否に不利になるのではないかと受験生が不安に思う。
【事例2】身体や病歴にかかわる質問があった。
【中学校側の見解】身体のハンディーや病歴は、入学後の高校生活を安全に過ごすうえで大切な情報である。しかし面接試験で聞かれると、それが合否の判定に悪い影響を与えるとの不安を受験生が抱く。必要な情報は合格発表後に伝えるので面接の質問内容から外してほしい。
【事例3】面接官の基本姿勢について。①「恋人はいますか」「個人情報を公開してもいいか」というような、面接官の資質に疑問を持たせるような質問があった。②不登校状態があったことへの配慮を中学校側からお願いしたにもかかわらず、「欠席理由を繰り返し質問され涙ぐんでいた」という事例もある。生徒が答えにくい、あるいは気にしている事をあえて質問するという威圧的な姿勢は、「子どもの可能性を引き延ばし、良い面をしっかりみる」という面接の趣旨に反するという指摘があり、私立学校側としても真剣に受け止めたいということでした。

 障害がある子どもたちの受験については、ここ十数年で大きな前進がありました。昨年度の入試では①弱視や肢体不自由のある場合の試験用紙拡大と受験時間延長②別室や保健室での受験保障③発作時にそなえ付き添い者の待機④難聴の子どもについては英語リスニング試験を別問題にして面接時は手話または筆談も認める、といった配慮がありました。私立高校の対応は基本的には個々の学校で異なり、A高校では認められたことがB高校では認められないということが存在します。しかし、だからこそ個別の対応で終わらず、このような交流会の場でそれぞれの対応を検証していくことが大切なのだと私は考えます。

 私立学校と公立中学校とは経営母胎が異なり監督官庁も別(公立学校は教育委員会、私立学校は大阪府生活文化部私学課)なため、互いの意思疎通が困難になりがちです。しかし公・私立の壁を越えた研究交流や入試制度論議が進むことが、子どもたちへのより良い教育保障につながると思いうのです。