宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

ノディエ(1780-1844)『死人の谷』1833年: 悪魔パプランは若者との契約で「命」を要求した!Cf. 悪魔メフィストはファウスト博士との契約で「魂」を要求した!

2018-10-23 22:49:29 | Weblog
(1)
その日は「隠者の谷」にある鍛冶屋の親方トゥサンの誕生日で、宴会が催された。朝から弟子たちも浮かれ、近所の娘たちも集まってきた。
(2)
そこに旅の2人連れが立ち寄った。馬車の事故があり、乗り合わせていた2人が、歩いてたどり着いたのだった。黒いケープの紳士(パンクラス・シューケ博士)と赤い服を来て赤い帽子をかぶった小人(コラス・パプラン)だ。
(3)
小人にせがまれてユベルト婆さん(トゥサンの母親)が「谷」の昔話をした。約100年前、まだ家も町もない森ばかりの谷にある貴族が、宮廷を去り信仰の生活を求めやってきた。彼は隠者として信仰に生きオディロン上人と呼ばれた。彼には大財産があり、谷を開発し多くの建物を建て、町を作り繁栄させた。
(4)
さてオディロン上人は、ある信仰深い若者を見込んで、その若者に身の回りの世話をしてもらった。ところがその若者は、財差目当てでオディロン上人に近づいたのだ。
(5)
30年前、若者はオディロン上人を殺した。だが財産を奪い逃走しようとしたところを発見された。若者は上人が住んでいた洞窟の中に閉じこめられ、逃げられなくなった。ところが犯人(若者)は洞窟から忽然(コツゼン)と姿を消した。
(6)
洞窟からは悪魔と若者との契約書が見つかった。そこには悪魔の言葉で「殺人罪に30年の猶予を与える」と書いてあった。それはちょうど30年前の今日、万聖節(11/1、Cf. 前夜がハロウィーン)の夜、死者の鐘が鳴る時だった。
(7)
ところが実は、その若者の30年後の姿がパンクラス・シューケ博士だった。そして小人コラス・パプランこそが悪魔だった。悪魔との契約は期限が来たら悪魔に「命」を渡す。(つまり殺される。)命を取るため、悪魔は博士(殺人罪の若者)についてきた。
(8)
今、死者の鐘が鳴った、パンクラス・シューケ博士は、あわてて鍛冶屋のトゥサンの家から出て行った。そのすぐ後、小人コラス・パプラン(悪魔)が出て行った。
(9)
翌朝、谷で、恐ろしく引き裂かれ、ひどく変形し、小さくなった死体が発見された。天の火か地獄の火に焼きつくされたようだった。誰の死体か判別できなかったが、その傍らにパンクラス・シューケ博士の黒いケープが残っていた。その時から「隠者の谷」は「死人の谷」と呼ばれるようになった。

《感想1》ここでは悪魔パプランとの契約は「命」を引き渡すことが条件となっている。ところで、かのファウスト博士の場合、悪魔メフィストと結んだ契約の条件は、「魂」を引き渡すことだった。(ゲーテ『ファウスト』第1部1808年)
《感想2》『ヴェニスの商人』で契約の条件に肉1ポンド(「命」)を要求したシャイロックは、悪魔パプランに似るが、「魂」を要求した悪魔メフィストと違う。
《感想3》契約の条件に、とりわけ違約の場合、「命」を要求するのは、歴史的には人間同士でも普通だった。例えば戦国時代の人質。
《感想4》悪魔に「命」を引き渡すこと(殺されること)と「魂」を引き渡すことは異なる。
①魂は「不死」であるから、「不死の魂」を引き渡したら死後、人は空虚となり完全に消滅する:悪魔メフィストはファウスト博士との契約で「魂」を要求した。
②「命」を引き渡すだけなら、つまり死ぬだけなら「不死の魂」は死後も存在し続ける:悪魔パプランは若者との契約で「命」を要求した。
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