宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

「小沢 碧童(ヘキドウ)」『日本詩人全集30』(新潮社、1969年)①定型俳句の時代、②自由律俳句の時代、③有季定型にもどる、④能古舎句録、⑤小沢碧童句録!

2021-05-07 18:00:07 | Weblog
(1)定型俳句の時代(1903-1908、22-27歳):小沢碧童(1881-1941)は、碧梧桐(1873-1937)に師事した!碧童は、子規没後の碧梧桐のさしあたっての唯一の協力者だった!
★「(冬)婚礼の鯛の御用や年の暮」:特別な年の暮。お祝いの準備だ!
★「(春)大磯の凧や小磯の波の上」:駄洒落!

(2)自由律俳句の時代(1915-1919、34-38歳):碧梧桐主宰の『海紅』派の作家としての碧童!
★「籠鶯(カゴウグイス)の寝つきたる雨なり」:静かな春の雨。
★「日蔭なる笊(ザル)の中なる蓬(ヨモギ)」:春の暖かさと日蔭のクールの対比。
★「きさらぎの午後襖(フスマ)のやぶれあまり見苦し」:正月から1か月以上たち襖も破けた。
★「寄居虫(ヤドカリ)行くてへかひなを伸ばし」:ヤドカリの腕の動きの雰囲気がよくわかる。
★「藤には遅い亀井戸へ行きたいといふ妻子を遣つて」:亀戸天神の藤をどうしても見たい妻子が出かけた!
★「埒(ラチ)もなく寝た蚊帳(カヤ)の裾直して廻り」:ともかく蚊帳に入ったのはいいが、メチャクチャで裾を直して廻る。

(3)最中集「災後句録」(1923-1924、42-43歳):芥川龍之介の影響により有季定型にもどる!
★「(大正十二年九月朔日、辛うじて震災の難を逭(ノガ)る)身に沁みていのちがあるといふばかり」:関東大震災で被災。命からがら逃げ助かった。
★「山見えて冬至の空や片曇り」:冬の寒々しい空が半分曇る。
★「夜は夜で町に出て見る師走かな」:師走の忙しい昼間。夜も落ち着かない。
★「行年(ユクトシ)や老一徹に店の番」:年寄りが頑張る。頑固だ。
★「行年や酒飲みこぼす古畳」:大晦日、新年でないので、いい加減。畳も古い。
★「元日やとりつくろひし化粧顔」:新年はきちんと化粧しよう!
★「小寒や油いための蓮の味」:油いための蓮がおいしい。
★「薄けれど寝る間ぞやすき布団かな」:薄くても布団は布団だ。楽ちんだ。

(4)能古舎句録(1927-1929、46-48歳)
★「(井の頭弁天池)檻にゐる鶴を見による雪解かな」:井之頭動物園。鶴も檻にいて風流でない。
★「人の来てくるゝ日もあり年のくれ」:師走は気ぜわしく、来客も普段より多い。

(5)小沢碧童句録(1932-1941、51-60歳):晩年の日課の句作!「作品は売るものに非ず」と句集は出さなかった!死後20年たち1960年『碧童句集』刊行(読売文学賞受賞)!
★「鬼灯(ホホヅキ)や摘み残り摘む十ばかり」:鬼灯の実が十も残っていた。
★「名月や屋台の鮨の美しき」:食いしん坊だ。
★「開き戸にみのむしいつもあり侘びぬ」:みのむしは侘びしい。
★「藁(ワラ)灰が火鉢に入りしうれしさよ」:火鉢に新しい藁(ワラ)灰を足した時は嬉しい。
★「行く春や雨になるべき夕鴉」:晩春の暖かい雨模様の夕。
★「連翹(レンゲウ)の黄に光りけり暮の春」:レンギョウの黄色が輝く。
★「無花果(イチジク)を二つに割れば秋涼し」:無花果を食べる。
★「鶏頭のなお枯れ残る年の瀬や」:季節が過ぎていく無常。
★「餅焼いて寐(ネ)しな喰ひけり寒の内」:夜寝る前、小腹が空く。
★「仏塔のある辻の雪斑(マダ)らなる」:谷中の五重塔。十字路の脇に立つ。雪の後、寒そうだ。
★「桜餅を買ふ夜桜の一軒家」:長命寺の桜餅はおいしい。
★「白薔薇の花のくづれや鉢の中」:盛りが過ぎ、くづれ始めた白薔薇。
★「虫なくや一雨降りし薄月夜」:雨を降らした雲が、まだ薄く残る。
★「秋風や一年中の掛けすだれ」:夏が終わった。掛けすだれが愉快だ。
★「寒の内釣り来し鮒の泳ぐかな」:釣った鮒が泳ぐのを見て嬉しい。
★「不忍(シンバズ)の方に日の落つ花見かな」:上野の山の上から不忍池の方を見ている。
★「からたちの花や日影の崩れ垣」:少し寂しい風景。
★「俄(ニハ)かなる雷雨のあとに送り火す」:地面がまだ濡れていて、涼しい夕方。
★「始めから朝顔小さく咲きにけり」:健気な可愛い朝顔!
★「山茶花や咲くほど咲いて風の中」:葉も枝も見えないくらい咲く山茶花は寒風の中!
★「起きぬけに朝やけも好し柿も垂れ:雨になるだろう日の朝、柿がたわわだ。
★「海老に寝る癖なほ老いて蒲団かな」:小さい頃から海老に寝る癖が、老いても変わらない。
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