(1)
今は桜の花に春らんまんだのと浮かれるが、大昔は桜の花の下は「怖ろしい」と思われていた。鈴鹿峠の山道の途中にも桜の森があった。この「山」に山賊が住み始めたが、この山賊はむごたらしい男で情け容赦なく着物をはぎ人の命も断った。そんな男でも桜の森の満開の花の下へくると、やっぱり「怖く」なって気が変になった。彼はこれはおかしいと考えたが、今年は考える気がしなかったので、来年花が咲いたら考えてやろうと思った。毎年そう考えて、もう十何年がたった。
(2)
山賊がそう考えているうちに、始めは一人だった女房がもう七人にもなった。そして山賊は、八人目の女房を、又街道から女の亭主の着物と一緒にさらってきた。女の亭主は殺した。女が美しすぎたので、彼はふと、亭主を斬りすてていた。女は「歩けないからオブっておくれ」と言ったので、山賊は「そうかよしよし」と坂道をオブっていった。
(3)
山賊(男)が家にたどり着くと、七人の女房が迎えに出てきた。だが女は七人の女房の汚さに驚き、薄気味悪がった。女は「あの女を斬り殺しておくれ」といちばん顔かたちのととのった一人を指して叫んだ。男は女房の一人を斬り殺した。女が次々と命じ、男が女房たちを斬り殺した。最後にいちばん醜くてビッコの女房が残った。女が「これは私が女中に使う」と言った。
(4)
6人の女房を斬り殺し、男(山賊)は悪夢からさめた気がした。男の目も魂も女の美しさに吸いよせられて動かなくなった。男は「怖ろしさ」に不安となった。それは桜の森の満開の下の「怖ろしさ」に似ていた。
(5)
女は「都」出身で大変なわがままだった。男(山賊)がどんなに心をこめた御馳走(猪、熊、木の芽、草の根)をこしらえてっても女は満足を示したことがない。都のに劣らぬおいしいも物が食べたいと女が言う。女は櫛や笄(コウガイ)や簪(カンザシ)や紅(ベニ)を大事にした。男は都からの旅人を何人も殺した。彼らは金持ちで所持品も豪華だった。女は何枚もの着物や細紐を欲しがった。
《感想》男(山賊)は女に惚れている。「惚れた弱み」で女が望むことは何でもする。すでにいた女房7人のうち1人を残しみな斬り殺した。女に御馳走し、また都からの旅人を何人も殺して得た櫛や笄や簪や紅、さらに何枚もの着物や細紐を女の欲しがるまま与えた。「恋は盲目」!
(6)
「お前が本当に強い男なら、私を都へ連れて行っておくれ」と女が言った。男には、しかし気がかりがあった。あと2、3日で桜の森が満開になる。男(山賊)は「桜の森の満開の下」がなぜ「怖ろしい」のかを考えたかった。3日目、男は満開の桜の森に出かけた。花の下の「冷たさ」、「怖ろしさ」。彼の身体は風に吹きさらされ透明になった。彼は走った。何という「虚空」だ!彼は泣き、祈り、もがき、花の下から逃げ去った。
(7)
男と女とビッコの女は「都」に住みはじめた。男は夜毎に女の命じる邸宅へ忍び入った。男は着物・宝石・装身具を持ち出した。だが女が何より欲しがるものは、その家に住む人の首だった。男と女の家には何十の邸宅の首が集められた。部屋の四方の衝立に仕切られて首は並べられ、ある首はつるされた。男にはどれがどれやら分からなくとも、女は一々覚えており、すでに毛が抜け、肉がくさり、白骨になっても、どこのたれということを覚えていた。
(7)-2
女は毎日、首遊びをした。大納言の首が姫君の首をかこい者にする。姫君の首も大納言の首ももはや毛がぬけ肉がくさりウジ虫がわき骨がのぞけていた。2人の首は酒盛りをして恋にたわぶれ、くさった肉がペチャペチャくっつき合い鼻もつぶれ目の玉もくりぬけていた。ペチャペチャとくっつき2人の顔の形がくずれるたびに、女は大喜びで、けたたましく笑いさざめいた。
《感想》女の首の愛好は、(女が人間なら)性的倒錯である「屍姦(シカン)屍体愛好」(necrophilia)の一形態のようだ。(Cf. ただし後に明らかになるが、女は実は「鬼」で、全身が紫色の顔の大きな老婆だ。)
(8)
「都」で、男は「退屈」に苦しんだ。①彼は毎晩人を殺していたが、ひとを殺すことにも退屈し、何の興味もなかった。刀で叩くと首がポロリと落ちるだけで、大根を切るのと同じようなものだった。②彼は女の欲望にキリがないので、そのことにも退屈していた。③男は都の空を眺めた。空は昼から夜になり、夜から昼になり、「無限の明暗」がくりかえし続く。彼は無限の明暗のくりかえしを考えて(その退屈に)苦しくなった。
(9)
男が家に帰ると、女はいつものように首遊びに耽(フケ)っていた。女は「今夜は、とびきり美しい白拍子の首を持ってきておくれ」と言った。男が「俺は厭(イヤ)だよ」、「キリがないから厭になったのさ」と男が言った。男は「女を殺す」ことを考えた。男は外へ出て山に登った。男は「空が落ちてくる」ことを考えた。空の「無限の明暗」を走り続けることは、女を殺し空が落ちてくれば、「無限の明暗」を「とめる」ことができると男は思った。だがなぜ空を落とさねばならないのか、分からなくなってきた。
(10)
男(山賊)は数日、山の中をさまよった。ある朝、男が目覚めると一本の桜の木が満開だった。男は満開の桜の森を思い出した。「山へ帰ろう」と男は思った。男は家に帰った。「俺は山に帰ることにしたよ」、「俺は都がきらいだ」と男が女に言った。女が「お前が山へ帰るなら、私も一諸に山へ帰るよ」と言った。女は「私はお前と一緒でなきゃ生きていられない」と泣いた。
(11)
女は、「男」なしで生きられなくなっていた。新しい「首」は女のいのちだった。そしてその首を女のためにもたらす者は彼のほかになかった。彼は女の一部だった。女はそれをはなすわけにいかない。
《感想》女は、男を愛していない。男は女にとって役立つ道具or手段にすぎない。
(11)-2
男のノスタルジイがみたされたとき、男を再び都へつれもどす確信が女にあった。女は男を騙した。「お前と首と、どっちか一つを選ばなければならないなら、私は首をあきらめるよ」。男は嬉しすぎ、幸福と新たな希望でいっぱいとなった。
《感想》男(山賊)の女への惚れ方は凄まじい。相変わらず「恋は盲目」だ。
(12)
目の前に昔の「山々」の姿が現れた。旧道は、やがて桜の森の下を通ることになっていた。女が「背負っておくれ」と言った。男は幸福だった。「桜の森の満開の下」を男は今や「怖ろしい」と思わなくなっていた。桜の森が彼の眼前に現れた。桜の森は満開だった。男は満開の花の下へ歩きこんだ。
(12)-2
「桜の森の満開の下」に入ると、あたりはひっそりと、だんだん冷たくなるようだった。彼はふと女の手が冷たくなっているのに気づいた。女は鬼だった。それは全身が紫色の顔の大きな老婆で、口は耳まで裂け、ちぢくれた髪の毛は緑だった。男は走り鬼(女)を振り落とそうとした。鬼の手が男の喉に食い込んだ。男は全身の力を込めて鬼の手をゆるめると、どさりと鬼は落ちた。
(12)-3
男(山賊)は鬼に組みつき、鬼の首を全力でしめつけた。そして彼がふと気づいたとき、彼は女の首をしめつけており、女はすでに息絶えていた。彼は大きく目を見開くことを試みたが、やはり女の屍体がそこにあるばかりだった。男は女を揺さぶり、呼び、抱いたが徒労だった。彼はわっと泣いた。男(山賊)がこの「山」に住み着いて以来、彼は泣いたことなどなかった。女の死体の上にも、彼の背にも桜の白い花びらが積もった。
(13)
そこは桜の森のちょうどまんなかのあたりだった。「桜の森の満開の下」にいるのに、男(山賊)は「怖れや不安」が消えていた。彼はもう帰るところがない。「桜の森の満開の下」の「怖ろしさ」の秘密は「孤独」だったかもしれない。だがかれは「孤独」をもはや怖れる必要がなかった。彼自らが「孤独」自体だった。
(13)-2
男(山賊)は四方を見廻した。頭上に桜の花があり、その下にひっそりと無限の「虚空」が満ちていた。ほど経て、彼はただ一つのなまあたたかな何物かを感じた。それは彼自身の胸の悲しみだった。花と「虚空」の冴えた冷たさにつつまれて、ほのあたたかいふくらみが、すこしずつ分かりかけてくる。
(13)-3
男(山賊)は死んだ女の顔の上の花びらをとってやろうとした。彼の手が女の顔にとどこうとした時に、何か変ったことが起こった。女の姿は搔き消え、ただ幾つかの花びらになっていた。その花びらを掻き分けようとした彼の手も彼の身体も延した時にはもはや消えていた。あとに「花びら」と「冷たい虚空」がはりつめているばかりだった。
《感想1》「桜の森の満開の下」にあるのは「無限の虚空」だった。「女」も「男」も消え去る。あとに残るのは「冷たい虚空」がはりつめるばかりだった。
《感想2》「女」も「男」も消え去り、それらを飲みこみ無とする「無限の虚空」。しかし桜=花びらは残る。自然=物質世界の「永遠」と、人間(「女」・「男」)の「死」の「虚空=無」。「桜の森の満開」(自然=物質世界の「永遠」)の下には、人間(「女」・「男」)の「死」の「虚空=無」の「怖ろしさ」がある。
今は桜の花に春らんまんだのと浮かれるが、大昔は桜の花の下は「怖ろしい」と思われていた。鈴鹿峠の山道の途中にも桜の森があった。この「山」に山賊が住み始めたが、この山賊はむごたらしい男で情け容赦なく着物をはぎ人の命も断った。そんな男でも桜の森の満開の花の下へくると、やっぱり「怖く」なって気が変になった。彼はこれはおかしいと考えたが、今年は考える気がしなかったので、来年花が咲いたら考えてやろうと思った。毎年そう考えて、もう十何年がたった。
(2)
山賊がそう考えているうちに、始めは一人だった女房がもう七人にもなった。そして山賊は、八人目の女房を、又街道から女の亭主の着物と一緒にさらってきた。女の亭主は殺した。女が美しすぎたので、彼はふと、亭主を斬りすてていた。女は「歩けないからオブっておくれ」と言ったので、山賊は「そうかよしよし」と坂道をオブっていった。
(3)
山賊(男)が家にたどり着くと、七人の女房が迎えに出てきた。だが女は七人の女房の汚さに驚き、薄気味悪がった。女は「あの女を斬り殺しておくれ」といちばん顔かたちのととのった一人を指して叫んだ。男は女房の一人を斬り殺した。女が次々と命じ、男が女房たちを斬り殺した。最後にいちばん醜くてビッコの女房が残った。女が「これは私が女中に使う」と言った。
(4)
6人の女房を斬り殺し、男(山賊)は悪夢からさめた気がした。男の目も魂も女の美しさに吸いよせられて動かなくなった。男は「怖ろしさ」に不安となった。それは桜の森の満開の下の「怖ろしさ」に似ていた。
(5)
女は「都」出身で大変なわがままだった。男(山賊)がどんなに心をこめた御馳走(猪、熊、木の芽、草の根)をこしらえてっても女は満足を示したことがない。都のに劣らぬおいしいも物が食べたいと女が言う。女は櫛や笄(コウガイ)や簪(カンザシ)や紅(ベニ)を大事にした。男は都からの旅人を何人も殺した。彼らは金持ちで所持品も豪華だった。女は何枚もの着物や細紐を欲しがった。
《感想》男(山賊)は女に惚れている。「惚れた弱み」で女が望むことは何でもする。すでにいた女房7人のうち1人を残しみな斬り殺した。女に御馳走し、また都からの旅人を何人も殺して得た櫛や笄や簪や紅、さらに何枚もの着物や細紐を女の欲しがるまま与えた。「恋は盲目」!
(6)
「お前が本当に強い男なら、私を都へ連れて行っておくれ」と女が言った。男には、しかし気がかりがあった。あと2、3日で桜の森が満開になる。男(山賊)は「桜の森の満開の下」がなぜ「怖ろしい」のかを考えたかった。3日目、男は満開の桜の森に出かけた。花の下の「冷たさ」、「怖ろしさ」。彼の身体は風に吹きさらされ透明になった。彼は走った。何という「虚空」だ!彼は泣き、祈り、もがき、花の下から逃げ去った。
(7)
男と女とビッコの女は「都」に住みはじめた。男は夜毎に女の命じる邸宅へ忍び入った。男は着物・宝石・装身具を持ち出した。だが女が何より欲しがるものは、その家に住む人の首だった。男と女の家には何十の邸宅の首が集められた。部屋の四方の衝立に仕切られて首は並べられ、ある首はつるされた。男にはどれがどれやら分からなくとも、女は一々覚えており、すでに毛が抜け、肉がくさり、白骨になっても、どこのたれということを覚えていた。
(7)-2
女は毎日、首遊びをした。大納言の首が姫君の首をかこい者にする。姫君の首も大納言の首ももはや毛がぬけ肉がくさりウジ虫がわき骨がのぞけていた。2人の首は酒盛りをして恋にたわぶれ、くさった肉がペチャペチャくっつき合い鼻もつぶれ目の玉もくりぬけていた。ペチャペチャとくっつき2人の顔の形がくずれるたびに、女は大喜びで、けたたましく笑いさざめいた。
《感想》女の首の愛好は、(女が人間なら)性的倒錯である「屍姦(シカン)屍体愛好」(necrophilia)の一形態のようだ。(Cf. ただし後に明らかになるが、女は実は「鬼」で、全身が紫色の顔の大きな老婆だ。)
(8)
「都」で、男は「退屈」に苦しんだ。①彼は毎晩人を殺していたが、ひとを殺すことにも退屈し、何の興味もなかった。刀で叩くと首がポロリと落ちるだけで、大根を切るのと同じようなものだった。②彼は女の欲望にキリがないので、そのことにも退屈していた。③男は都の空を眺めた。空は昼から夜になり、夜から昼になり、「無限の明暗」がくりかえし続く。彼は無限の明暗のくりかえしを考えて(その退屈に)苦しくなった。
(9)
男が家に帰ると、女はいつものように首遊びに耽(フケ)っていた。女は「今夜は、とびきり美しい白拍子の首を持ってきておくれ」と言った。男が「俺は厭(イヤ)だよ」、「キリがないから厭になったのさ」と男が言った。男は「女を殺す」ことを考えた。男は外へ出て山に登った。男は「空が落ちてくる」ことを考えた。空の「無限の明暗」を走り続けることは、女を殺し空が落ちてくれば、「無限の明暗」を「とめる」ことができると男は思った。だがなぜ空を落とさねばならないのか、分からなくなってきた。
(10)
男(山賊)は数日、山の中をさまよった。ある朝、男が目覚めると一本の桜の木が満開だった。男は満開の桜の森を思い出した。「山へ帰ろう」と男は思った。男は家に帰った。「俺は山に帰ることにしたよ」、「俺は都がきらいだ」と男が女に言った。女が「お前が山へ帰るなら、私も一諸に山へ帰るよ」と言った。女は「私はお前と一緒でなきゃ生きていられない」と泣いた。
(11)
女は、「男」なしで生きられなくなっていた。新しい「首」は女のいのちだった。そしてその首を女のためにもたらす者は彼のほかになかった。彼は女の一部だった。女はそれをはなすわけにいかない。
《感想》女は、男を愛していない。男は女にとって役立つ道具or手段にすぎない。
(11)-2
男のノスタルジイがみたされたとき、男を再び都へつれもどす確信が女にあった。女は男を騙した。「お前と首と、どっちか一つを選ばなければならないなら、私は首をあきらめるよ」。男は嬉しすぎ、幸福と新たな希望でいっぱいとなった。
《感想》男(山賊)の女への惚れ方は凄まじい。相変わらず「恋は盲目」だ。
(12)
目の前に昔の「山々」の姿が現れた。旧道は、やがて桜の森の下を通ることになっていた。女が「背負っておくれ」と言った。男は幸福だった。「桜の森の満開の下」を男は今や「怖ろしい」と思わなくなっていた。桜の森が彼の眼前に現れた。桜の森は満開だった。男は満開の花の下へ歩きこんだ。
(12)-2
「桜の森の満開の下」に入ると、あたりはひっそりと、だんだん冷たくなるようだった。彼はふと女の手が冷たくなっているのに気づいた。女は鬼だった。それは全身が紫色の顔の大きな老婆で、口は耳まで裂け、ちぢくれた髪の毛は緑だった。男は走り鬼(女)を振り落とそうとした。鬼の手が男の喉に食い込んだ。男は全身の力を込めて鬼の手をゆるめると、どさりと鬼は落ちた。
(12)-3
男(山賊)は鬼に組みつき、鬼の首を全力でしめつけた。そして彼がふと気づいたとき、彼は女の首をしめつけており、女はすでに息絶えていた。彼は大きく目を見開くことを試みたが、やはり女の屍体がそこにあるばかりだった。男は女を揺さぶり、呼び、抱いたが徒労だった。彼はわっと泣いた。男(山賊)がこの「山」に住み着いて以来、彼は泣いたことなどなかった。女の死体の上にも、彼の背にも桜の白い花びらが積もった。
(13)
そこは桜の森のちょうどまんなかのあたりだった。「桜の森の満開の下」にいるのに、男(山賊)は「怖れや不安」が消えていた。彼はもう帰るところがない。「桜の森の満開の下」の「怖ろしさ」の秘密は「孤独」だったかもしれない。だがかれは「孤独」をもはや怖れる必要がなかった。彼自らが「孤独」自体だった。
(13)-2
男(山賊)は四方を見廻した。頭上に桜の花があり、その下にひっそりと無限の「虚空」が満ちていた。ほど経て、彼はただ一つのなまあたたかな何物かを感じた。それは彼自身の胸の悲しみだった。花と「虚空」の冴えた冷たさにつつまれて、ほのあたたかいふくらみが、すこしずつ分かりかけてくる。
(13)-3
男(山賊)は死んだ女の顔の上の花びらをとってやろうとした。彼の手が女の顔にとどこうとした時に、何か変ったことが起こった。女の姿は搔き消え、ただ幾つかの花びらになっていた。その花びらを掻き分けようとした彼の手も彼の身体も延した時にはもはや消えていた。あとに「花びら」と「冷たい虚空」がはりつめているばかりだった。
《感想1》「桜の森の満開の下」にあるのは「無限の虚空」だった。「女」も「男」も消え去る。あとに残るのは「冷たい虚空」がはりつめるばかりだった。
《感想2》「女」も「男」も消え去り、それらを飲みこみ無とする「無限の虚空」。しかし桜=花びらは残る。自然=物質世界の「永遠」と、人間(「女」・「男」)の「死」の「虚空=無」。「桜の森の満開」(自然=物質世界の「永遠」)の下には、人間(「女」・「男」)の「死」の「虚空=無」の「怖ろしさ」がある。