宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

『舞姫』森鴎外(1862-1922)、1890年、新潮文庫

2014-07-05 14:40:13 | Weblog
  (1)豊太郎、官命でプロシアへ
A 5年前、官命で太田豊太郎、プロシアに派遣される。
A-2 豊太郎は秀才。19歳で法学士となり、某省へ入る。
B 派遣されたプロシアで、豊太郎は大学に通い、政治学を学び、3年が経った。

  (2)豊太郎、エリスと親しくなり、免官となる
C 豊太郎、25歳。「独立の思想」を持つようになり、法科でなく、歴史文学に心を寄せる。
D ある日、泣く少女、十六七と出会う。エリス。
D-2 「我を救い玉へ。母は我を打ちき。」とエリスが言う。豊太郎はエリスを家まで送る。エリスは、父親が死んで葬式代もなく、豊太郎が懐中時計を置いて帰る。
E その後、豊太郎はエリスと親しくなるが、初め肉体関係はなかった。
F うわさが広がり、豊太郎、免官となる。

  (3)豊太郎、エリス親子と暮らす
G エリスは「ヰクトリア座」の舞姫。仕立て屋の父の貧しさゆえに、舞姫となった。「恥づかしき業」。
G-2 豊太郎が、エリスに、文学や文字を教える。
G-3 やがて二人は「離れがたき中」となる。
H 天方伯の秘書官、相沢健吉が、免官になった豊太郎に、新聞社の通信員の職を紹介する。
I 豊太郎は、エリス親子と暮らす。豊太郎は新聞の原稿を書く。エリスは劇場から帰ると、縫物をする。
I-2 エリスが妊娠する。

  (4)天方大臣に随って豊太郎、訪露
J 天方大臣が訪独。秘書官相沢より「大臣に会いに来るように」との連絡がある。
J-2 相沢が、豊太郎に言う。「学識あり、才能ある者が、いつまでか一少女の情にかかづらいて、目的なき生活(ナリワイ)をなすべき。」
K ひと月ばかりすぎ、伯が「余は明旦(アス)、ロシアに向かいて出発すべし。随ひて来べきか」と訊ねた。豊太郎は「いかで命に従はざらむ。」とロシア行きを決める。
L エリスには、「ロシアに行くがまた戻る」と言う。
L-2 エリスは悪阻(ツワリ)のため、座をやめさせられる。

  (5)豊太郎、「日本に帰る」と決める
M ロシア宮廷で、フランス語通訳として、豊太郎は活躍する。
N エリスから、ロシアの豊太郎のもとに毎日、手紙が来る。「私を棄てないでほしい」とエリス。
O ロシアから戻り、豊太郎、エリスのもとに帰る。
O-2 エリスは、生まれてくる赤ん坊のために、たくさんの襁褓(ムツキ)(おむつ)を縫っていた。
P 天方大臣に呼ばれ、豊太郎、「本国に帰る」と決める。
P-2 エリスに、何と言おうと帰路、豊太郎は、ベルリン市街を放浪する。疲労困憊し帰宅。その後、具合が悪くなり、豊太郎は数週間、人事不省。

  (6)豊太郎に「だまされた」とエリスが発狂
S その間に、相沢秘書官が、事情を話すと、エリスは豊太郎に「だまされた」と発狂する。
T 豊太郎は、狂ったエリスを残し、生まれる子のことを頼み、エリスの母親に資本を与えて帰国する。
U 今、豊太郎は、相沢は「良友」だが、しかし一点の「彼を憎むこころ」ありと思う。

  《評者の感想》
1 豊太郎自身が、「自分は日本に帰る」とエリスに話したとしたら、エリスは「だまされた」と思わなかったろうか?
1-2 豊太郎には「エリスを、日本に連れて帰る」可能性があったのだろうか?
2 おそらく豊太郎は、結局、エリスを捨てただろう。エリスは貧しい卑賤の一少女にすぎない。日本のエリートとして、豊太郎には約束された未来があった。
3 日本人は、当時、プロシア人から差別されたはずだが、エリスは低い社会階層に属したので、人種差別と無縁だったと思う。

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