宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

『絶望の国の幸福な若者たち』古市憲寿(1985生)、2011年、講談社

2014-07-22 12:54:24 | Weblog
  はじめに:不幸な若者たちって本当?
  (1) 2010年代:若者の「満足」度、高い
A 非正規雇用増大、大卒の低い就職内定率etc.
B お金がなくても楽しめる時代。そこそこ楽しい日常。
B-2 若者の「満足」度は、この40年で一番高い。20代、「満足」70.5%(2010年)。50代、「満足」55.3%。

  
  (2) 1980年代:うらやましい時代ではない
C 1980年代、父親は長時間労働。
C-2 若者は受験競争激化(共通一次1979年開始)。校内暴力、1982年急上昇。
D インターネットも携帯もない80年代。

  
  (3) 「幸せ」と思う若者
E ①現役世代の負担増:社会保障、②財政赤字&国債、③原発事故。
E-2 それなのに「幸せ」と思う若者。
E-3 なぜ日本の若者は立ち上がらないのか?→「幸せ」だから。

  第1章 「若者」の誕生と終焉:(1)1880年代、(2)1930年代後半、(3)戦後1950年代まで、(4)1960年代~1970年代、(5)1980年代、(6)1990年代以降
A ある集団としての「若者」は存在するのか?「共通の特徴」を持つ。

  
  (1) 「青年」:「新日本」の担い手
B 1880年代(M20年代)、「新日本」の担い手としての「青年」。

  
  (2) 「皇軍兵士」として期待される「青年」
C 1930年代後半(S10年代)、「青年」ブーム。「皇軍兵士」となるという平等幻想。戦争に向け、「青年」を煽る。
C-2 「リア充」(リアルな生活の充実)な学生に対し、「学生狩り」。徴兵猶予で、喫茶店、アベックなど、とんでもない。
C-3 昭和初期の「左傾学生」の時代を懐かしむ「ノスタル爺」。

  (2)-2  第1次大戦後の自由主義が若者をだめにした
D 「若者バッシング」、または「若者は希望」論のいずれか。
E 第1次大戦後の自由主義(1920年代)。
E-2 自由主義が若者をだめにした。戦後民主主義(自由、平等、個性)批判と似る。
E-3 欧米の「個人主義、自由主義、民主主義」を非難(情報局情報官)。

  (3) 戦後の若者1:「アプレ」、「ティーン」、「太陽族」、「みゆき族」
F 虚無的・退廃的な戦後の若者:アプレゲール(戦後)。Ex. 東大生貸金業者「光クラブ」事件=「アプレ犯罪」
F-2 1950年代、都市と農村に共通の「若者」は存在しない。
G 「ティーン」(※1945年生まれ以降)は、「アプレ」と違って敗戦経験を持たない。
G-2 「若者はお客様」として、消費の主体へ。
H 「太陽族」:1955年、石原慎太郎。既成の秩序にとらわれないドライさ。サングラスにアロハシャツ。
I 「みゆき族」:1964年頃。補導される。

  (4) 戦後の若者2:1960年代、「若者」の誕生
J 1960年代、高度成長始まる。都市集中とメディア。
J-2 テレビの普及、1963年、88.9%。1964年『平凡パンチ』。
J-3 世代共通体験、世代共通文化の成立。「若者」の誕生へ。
J-4 若者論ブーム、1960年代後半-1970年代。『死にがいの喪失』(1973)、『モラトリアム人間の時代』(1978)。
J-5 「青年」から「若者」へ。

K 団塊の世代(1947-1949生まれ)が若者へ。1967-1969年。戦争を知らない世代。
K-2 自分は「中」:90.2%(1973年)。Cf. 72.4%(1958年)
K-3 「階級」論から「世代」論へ。「階級」の消滅幻想。
K-3 深夜放送を聴く「カプセル人間」の共振。

  (5) 1980年代の若者論
L 「新人類」:メディアリテラシーあり&消費性への期待。「若者はお客様」論。
M 1980年代後半、「オタク」叩き。「お客様」にならないため。

  (6) 90年代初頭から:「若者論」の終わり
N 一枚岩の「若者」がいない。世代内格差の発生=中流崩壊論&格差社会論:1990年代後半。
N-2 2000万人を同一と見る若者論は、無理。性差、地域差、貧富の差。
N-3 Cf.「日本人論」はもっと、おおざっぱ。
O 「若者はけしからん」論は、まっとうな社会の住民の立場から「異質の他者」扱いする。
O-2 「若者は希望だ」論は、都合のいい協力者と考える。「こちら側」とみなす。
P バブル崩壊で1991年以降、「いい学校、いい会社、いい人生」モデル(1970年以来)が壊れた。
P-2 「中流の夢」崩壊。日本社会は1995年に変わった。

  (6)-2 1990年代後半、2000年代、2010年代の若者論
Q 1990年代後半、「ブルセラ」論
R 2000年代、「起業推奨」論
S 2010年代、「嫌消費」論

  第2章 2010年代の若者:(1)社会志向、(2)サステイナブルな消費、(3)「今、ここ」の身近な幸せ(コンサマトリー化)、(3)-2「仲間」がいる「小さな世界」の幸福、(4)「このままじゃいけない」:社会貢献、ワールドカップ

  (1) 若者は意外に「社会志向」
A 若者は、意外に「社会志向」。
A-2 社会貢献ブーム。Ex. 2005年、150万円でカンボジアに学校を建てる。
B 1995年、阪神淡路大震災。ボランティア元年。
B-2 1998年、NPO法。
C 若者は投票に行かない。
D 海外留学者数は減っているが、人口減少なので、留学者率は下がっていない。バブル期の倍以上。
E ワーキング・ホリデー制度(1980以来)、2011年はバブル期の2倍の若者参加。
F 高度成長期と比べると地元志向。地方に「そこそこの都市」発達のため。

  (2) 若者がモノを買わないわけでない:人口減の反映にすぎない
G 若者はモノを買わないか?自動車、家電は買わない。海外旅行は行かない。
G-2 ファッション、家具、インテリア、ゲームにはお金を使う。女子は飲食費、通信費が多い。サステイナブルな消費(衣食住)の20代。「内向き」。
H 人口減による若者減で、消費減。若者の消費が減ったわけではない。

  (3) 「今、ここ」の身近な幸せ
I 若者が元気な70年代。新人類の80年代。まだお祭り気分が残る90年代。
I-2 若者は満足度、幸せ感が高く「不満」はないけど、「不安」がある。
J 将来に希望がないので、今が満足と答えるしかない。
J-2 「今日より明日が良くなる」と思えると、「今は不幸」が増える。
J-3 若者の「コンサマトリー」化=「自己充足」化。つまり「今、ここ」の身近な幸せを大事にする。
K 「仲間」を大事にする。「仲間」がいる「小さな世界」が、若者の幸福の本質。「村々」している。

  (4) 退屈で閉塞感あり:社会貢献&ワールドカップ
L 「何かをしたい。」「このままじゃいけない。」「出口」をさがす。Ex. 社会貢献。
L-2 非日常としての4年に1度のワールドカップ。

  第3章 希薄化するナショナリズム
  (1)  ナショナリズムという「魔法」
M ワールドカップ応援で、日本という国家が、期間限定で出現する。
N 面識がないのに「日本人」を応援する。
N-2 ナショナリズムという「魔法」。「想像の共同体」。

  (2) 「新しい中世」&ナショリズムの希薄化
O 明治に成立したナショナリズムという魔法は、薄れつつある。
P 「新しい中世」:国家以外に様々なアクター。大富豪、国際NGO、テロリスト、ヘッジファンド、多国籍企業(日本の国益より会社の利益!)など。
Q 世界中、どこにいても、「日本」のように暮らせる。GPS内蔵スマートフォンで世界旅行OK!Skypeアプリで世界中と話せる。新しいナショリズムの出現。
R 税逃れのパーマネント・トラベラー。
S 「国家はいらない」、「民間に出来ないことは何もない」とワタミ社長。

  (2)-2 戦争が起こったら逃げる
T 若者のテレビ離れ。かつてナショナリズムを支えたテレビ。
U 若者は、日本が好きだが、アップルや、H&Mも好き。
V 「戦争が起こったら日本のために戦うか?」「はい」:日本15.1%、アメリカ63.2%。戦争でさっさと逃げる若者は重要。国家間の戦争が減る。
V-2 国家:①暴力の独占と②徴税。

  第4章 「日本」のために立ち上がる若者たち:保守系男子、保守系女子
  (1) 「頑張れ日本」(田母神会長)の集会(2010年):2600人
A-1 保守系男子、保守系女子の集まりがほしかった。(メグミ、27才)
A-2 「右翼っぽい」人がいないデモがいい。もちろん思想としては右翼あり。(ケイジ、29才)
A-3 「ネット右翼」とひとくくりにされたくない。(ケイタ、35才)
A-4 マスメディアの「偏向報道」批判!(20才、エリ)
A-5 「民主党政権の無能ぶり」批判!(20才、ススム)

  (2) 保守系女性団体「日本女性の会、そよ風」の「そよ風」デモ(2010年):150人
B 「このままじゃ日本は潰れる」:外国人参政権反対、子ども手当粉砕、夫婦別姓反対。
B-2 「普通」の市民が、「普通でないもの」=「サヨク」を忌避する:「新しい歴史教科書を作る会」。

  (3) インターネットでつながる
C 在日特権を許さない市民の会(在特会)=大型団体。
D 保守系SNS:「Free Japan」、「my日本」。
D-2 「今、何がやばいか、すぐにわかる。」(リカ、20代後半)
D-3 「テレビも新聞も信頼できない。嘘ばかり。」

  第4章-2 社会運動論
  (1) 「国を良くする」vs「より良い社会をつくる」
E 「国を良くする」、「国のために」が右翼の専売特許。
E-2 左翼は「より良い社会をつくる」と言って、「国家」と言わない。
F 若者に「右翼」「左翼」の対立がない。Ex. ピースボート(辻本清美):世界平和&護憲。

  (2) 集合行動論、資源動員論etc.
G 集合行動論:不満が原因で行動。
G-2 しかし不満だけでは、人は立ち上がらない。

H 資源動員論:人、カネ、ネットワークなど資源が人に行動を起こさせる。
H-2 戦略の重視。フレーミングのうまさで運動成功。Ex. 公民権運動:権利と機会の平等を訴え、女性・障害者・ネイティブアメリカン・老人も巻き込む。
H-3 社会運動のエンターテインメント化:とりあえず「お祭り」に参加。

J 治安維持法:当時、消費とレジャーに夢中の大衆は気づきもせず、反対せず。
K 民衆の独自の規範を侵すとアクションへ:モラル・エコノミー。
L 若者は、親密圏に生きるので、公共圏(「公共社会」など「大きなもの」)にロマンを感じる。

  第4章-3 日本社会での社会運動の位置・意味
M 「公共的」・「社会的」は手放しに礼賛できない。Ex.1 過剰に排他的なネット右翼や在特会。Ex.2 「革命」をめざしたオウム真理教
N 「居場所」としての社会運動。Ex.1 在特会で「やっと本当の仲間ができた」。Ex.2 「前進社」(中核派)で100名が共同生活。Ex.3 フリーター全般労働組合「自由と生存のメーデー」のみんなで作る楽しさ。
O 日本社会にはわかりやすい言論統制や拷問はない。だから「アラブの春」のようなことは起こらない。
《評者の注》油断していると密告制度が復活し、また憲法改正されて被疑者や刑事被告人の権利が法律水準に落とされ、保障されなくなる心配がある。

P 「豊かな」社会で食べられない心配はない。
Q そもそも「革命」は、それだけでは、すぐには社会を変えない。Ex. 「アラブの春」
R 社会を変える方策は色々ある。Ex.1 市会議員、Ex.2 社会的企業家、Ex.3 官僚になり法律改正、Ex.4 大資本家になり政治に口をはさむ、Ex.5 NGOで国際条約を成立させる、Ex.6 デモ(ただしインパクトは小さい)。

  第5章 東日本大震災・反原発
A 東日本大震災という「非日常」がもたらした若者の「ニホンブーム」。
A-2 日常の閉塞感から「非日常」へ。「とにかく何かをしたい」。「日本が好き」と再確認。「日本を一つにしたい」。

B 高円寺「素人の乱」の反原発のお祭り。オーガニック系など自然派が多い。「反原発40年」のような「左翼おじさん」はいない。
B-2 「反原発は乱暴」とリョウ、21歳、理工系。

C 日本中が被災地になったわけでない。宮城・福島・岩手のGDP合計は、日本の4%。
C-2 東北は3.11以前にすでに「過疎化」!「復興」すべきものがない。「3.11以後の希望」があると思えない。

  第6章 絶望の国でも、さしあたり今、若者に経済的問題はない。しかし今後「シングルマザーを推奨しても、若者が子どもを産めるようにしなければならない」

A 一度雇うとクビにできない正社員=高齢者。1990年代以降、若者を採用せず非正規雇用化。
A-2 年金・医療:60歳以上6500万円プラス、20歳未満5200万円マイナス。
A-3 ただし高齢者には、大きな世代内格差あり。

B しかし「若者」はまとまっていない。
B-2 世代間の意識の差がない。「年齢」より「趣味」の会う人と話すなど、「一億総若者化」時代」。
B-3 Cf. 「40歳前後のおじさん」が世代間格差に怒っている。

C 若者は大企業ブランド志向をやめて、若い企業に就職すべきだ。

D 非正規雇用化で若者の人材流出。Ex. 台湾。
D-2 非正規雇用化するだけで、「キャリアラダー」がない。
D-3 正社員になりたくない若者も多い。保険料を払わないので将来の社会保障はない。

E 若者の貧困化で、将来、治安悪化の可能性。
F しかしさしあたり今、若者に経済的問題はない。衣食は大丈夫。みんなスマートホンを持つ。
《評者の感想》子育てのことを考えたら、若者は、経済的に子育て不可能。
G これに対し、「シングルマザーを推奨しても、若者が子どもを産めるようにしなければならない」と、著者。

  第6章-2 世代間格差の「家族福祉」による解決&20年後の破綻
F 家族福祉:親(Ex. 65歳)に金銭の余裕あり。親は高度成長期の勝ち組。かくて親と同居の未婚者(=若者)は大丈夫。
F-2 若者の「地元化」とは親世代へのパラサイト。
G 20年後、親(Ex. 85歳)の介護が始まる。持家もメインテナンスが必要になる。

  第6章-3 オンライン上の「お手軽な承認社会」
H 存在の承認の問題。恋人がいれば「かけがえのない存在」になるが、18-34歳の未婚者で恋人ありは、男27.2%、女36.7%にすぎない(2006)。
I かくてツイッター、ニコニコ動画などによるお手軽な承認社会。オンライン上の友達による存在承認。
I-2 共同性の確認で満足し、社会を変えることは考えない。
I-3 仲間のいるコミュニティがあれば、若者は反乱を起こさない。

  第6章-4 若者の二級市民化
J 若者は「夢」「やりがい」の言葉でだまし、安くクビにしやすい労働力。
K 「正社員」「専業主婦」になれない者の増加。年齢に関係なくいわば「若者」化。

  第6章-5 日本が財政破綻しても、お金がなくても、そこそこに楽しく暮らす知恵を若者は持つ
L 戦後の経済成長はもどらない。、(1)アメリカが、日本を資本主義につなぎとめるための援助。(2)豊富な若年労働力という人口ボーナス。(3)敗戦による「復興」は他国のマネだけでよかった。
M 日本が財政破綻しても、お金がなくても、そこそこに楽しく暮らす知恵を若者は持つ。
《評者の感想》著者は、スラム化・貧困化の肯定をするようである。

  第6章-6 「国」が負けても、「日本の人々」が生き残れば、それでよい
O 日本という「国」が負けても、「日本の人々」が生き残れば、それでよい。
O-2 「一人一人が幸せに生きられる」ことが重要。
O-3 「日本が終わる?だから何?」と思ってしまうと著者。
《評者の感想》「日本国」が敗戦し、「日本国民」も爆撃を受け、大量に死んだり負傷したり餓死者が出たりする状況では、どうするのか?

P 「この国が沈みゆくのは、どうやら間違いない」と著者。

  あとがき:著者の立場
A 見知らぬ人や物や場所のことは「どうでもいい」。
B 少しでもこの国を良くしたいという「市民意識」はない。
C 自分が生きる世界を「研究」によって明らかにしたい。「楽しい」。


  《評者の感想》
1 著者は、分裂している。一方で見知らぬ人や物や場所のことは「どうでもいい」。また少しでもこの国を良くしたいという「市民意識」はないと、著者は言う。
恐るべきニヒリズム。他者との共感が皆無である。他者は単なる風景か、道具(=生産物生産装置)である。

2 著者は他方で、「一人一人が幸せに生きられる」ことが重要と述べる。ここには、他者を人間と見るシンパシー(共感性)がある。他者は、風景や道具でなく、人間である。
見知らぬ人や物や場所は「どうでもいい」わけでなく、「幸せに生きる」ことが望まれている。この意味で、著者は、少しでもこの国を良くしたいという「市民意識」を持つ。

3 「一人一人が幸せに生きられる」ことが重要と著者が言うなら、著者は、見知らぬ人など「どうでもいい」と言えないし、「市民意識」がないと、言わば逃げることはできない。それが論理的帰結である。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする