K子さん(大人):
今年のクリスマス発表会には、バッハの「イタリア協奏曲」を弾くことに決めました。
いかにもイタリア風、といった感じの明るく軽快な曲。親しみやすいメロディーは、きっと誰もが「聞いたことある!」と言うと思いますよ。
「夏休み明けぐらいから、そろそろ発表会の曲を始めましょう」と言ってたんですが、先週、初めてK子さんが練習してきた「イタリア協奏曲」を聞かせてもらってびっくり!
なんと、最後まで全部一人で予習してあって、しかも暗譜なんですよ!!
この曲、何ページあると思います?なんと7ページですよ〜
複雑なバロック曲を一人でここまで弾きこなして、しかも暗譜してるなんて、並大抵の練習でできるものではありません。
「すっごいですよね〜 すばらしい!」と絶賛したヒバリ先生ですが、
「来週 聞かせてもらうのは、1ページだけでいいからね。」とは。なんでや〜?
それはね、バッハの音楽にはいろんな仕掛けや約束事、弾き方のルールとかがいっぱいあるので、ひとつひとつ丁寧に譜面を読み取って、丁寧に音…音楽として表現していくことをレッスンで伝えるには、1回に1ページでも精いっぱいなんです。
…と、それを言ったのが先週のことでした。
今日、最初の1ページをレッスンしたのですが、まず出だしのフレーズでいきなり壁に阻まれることに。
細かくいうと冒頭から3小節目と4小節目。
譜面の右手パート、赤くなぞったのがメロディーです。
そしてすぐ下に重なった緑色の音列が「ファソラーシ♭ー、ラーシ♭ーシ♭ラ」とハーモニーを添えています。
この2つのメロディーが、それぞれ独立してきれいに聞こえてくるように、右手だけで正確に弾かなければいけません。切る音、伸びてる音、ごまかしのないように。
これで全部と思いきや、さらにその下にもうひとつ。
黄色でなぞった音が、バス的な役割を担っています。
この3つの旋律を、3つとも「メロディー」として綺麗に聞こえてくるように独立させ、かつ他の2つのメロディーとのカラミを正確に『右手だけ』で弾かなければならないのです。
指づかいや音の保持など、かなり難しいですが、しょうがない。
なぜって、左手は左手で、別のパートを弾かなくてはならないので、右手のパートを手助けするわけにはいかないのです。
バロック特有の「ポリフォニー」とはコレですね。
1ページ目には、もう1箇所、ややこしいポリフォニー部分があるので、その部分も集中レッスンし、この2箇所だけでレッスン時間が全部終わりました。
しんどいですが、これがバロックの楽しみでもあるので、がんばりましょう。
あんまりいっぱいやらないで、少しずつ丁寧にね(笑)