根無し草のつれづれ

日々の雑感をひたすら書き綴ったエッセイ・コラム。また引用部分を除き、無断掲載の一切を禁ず。

映画『百万円と苦虫女』

2008-07-22 09:55:10 | エッセイ、コラム
監督:タナダユキ、出演:蒼井優、森山未來、ピエール瀧、竹財輝之助、齋藤隆成、笹野高史、佐々木すみ江、他、の映画『百万円と苦虫女』を観てきました。


ストーリーは、とある事で傷つき、百万円貯まるごとに住む町を様々に変え日本を転々とする21歳の女の子・鈴子(蒼井優)の生活を描いたものです。
いわゆるロード・ムービーにあたります。


比較的淡々とした物語でした。
私が女心に疎(うと)いせいか、あるいは既にこの年代に私自身がいないせいか、主人公・鈴子になかなか感情移入出来ず、監督の意図するようには鈴子の心情は私の心には響いては来ませんでした。

世渡りが下手で、人間関係が上手く構築出来ず、いつも困ったような苦笑いを浮かべる主人公の女の子を「苦虫(にがむし)女」を称した所は非常にシニカルで、ユーモアに溢れるネーミングで秀逸です。
上手に他人とコミュニケーションを取れ、職にあぶれる事もなく、学校生活や職場での人間関係にも困らず器用に立ち回れる人たちがいる一方で、この主人公・鈴子のように生きる事が下手で都合が悪くなると逃げ出してしまう鈴子という女の子は、現代の若者の片方の象徴的な存在と言えるでしょう。

ストーリー自体は難しい事はないのですが、そのテーマを的確に読み取るには画面の行間をキチンと読める人でないと難しいかも。
ある種、感性の鋭さが試される作品かもしれません。

人によるとは思いますが、一度だけの視聴で簡単につかみ難(にく)い作品だけに、数回に渡る視聴が楽しめる作品のような気がします。
これもまた映画鑑賞の醍醐味ではないでしょうか…。

演技に関して言えば、主人公・鈴子を演じた蒼井優はもちろんですが、山村のぼくとつで優しい青年・春夫を演じたピエール瀧の好演が非常に光っていました

原田郁子によるテーマ・ソングも秀逸で、これがエンディングにくる事で、優しく切ない楽曲とは裏腹に作品がぐっと引き締まり、ある種のまとまりをみせているような気がしました。

鑑賞後の余韻を充分に楽しめる秀作だと思います。