根無し草のつれづれ

日々の雑感をひたすら書き綴ったエッセイ・コラム。また引用部分を除き、無断掲載の一切を禁ず。

far and away(アイルランド日和の微妙に続き)

2004-10-29 18:00:03 | エッセイ、コラム
10年ほど前の話し。

サークルの旅行中、とある海辺のレストランに立ち寄っ
た。そこで私は天使と出会ったのである。
そのレストランでアルバイトをしていた女の子だった。
熱しやすい私はその娘に一目惚れし猛烈にアタック、
2ヶ月程かけてやっと二人で会う約束を取り付ける事に
成功したのであった。

月並みではあるが初デートは映画にした。
会う約束を取り付けてから私はその映画に関連する知
識を得るべく図書館で本を借りウンチクを仕入れたりも
した。思えばこれがピークだった。

そして待望のデート前夜、一本の電話が鳴る。
天使からの電話だった。ただでさえ高ぶってる気持ち
がこれで上空100mまで急上昇!

「あのー、明日のことなんですけどー」
「うんうん、それで?」
彼女の声が聞けて嬉しくて仕方がない私はその後に続
く天使の残酷な台詞を全く予想してなかった。

「あのー、明日のことなんですけどー、やっぱり会えなく
なってー」
100m上空でひらひら舞っていた私は急速に浮遊力を失
い一気に地上に叩きつけられた。かろうじて声を振り絞り
天使に訳を訊く。
「何で?」
「あのー、前にも言ったと思うんですけどワタシには好き
な人がいてー、こんどー、その人と付き合うことになった
から明日はやっぱり…」
全く苦しい言い訳である。多分天使は直前になって私と
デートするのが嫌になったのだろう。今となっては真相は
彼女だけにしか分からないのであるが…。

「えー、どうして前にそのこと言ってくれなかったの?会
う前日になってそんな事言われてもさぁー、今の今まで
君とうまくいくもんだと思ってたんだよ俺は」
「ごめんなさい」
「いや、別に謝って欲しい訳じゃなくてさぁー」
「ごめんなさい」
「いや、だから」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
その後、天使は私が何を言っても「ごめんなさい」としか
答えてくれなかった。
「ごめんなさい」という言葉がこんなに傷付く言葉だった
のか、と初めて知った。

そんな風にして天使は私の前から姿を消した。
天使は去り、私には「アイルランド」というキー・ワードが
ぽつんと残った。彼女と観る予定だった映画は『遥かな
る大地へ』だったのだ。彼女の前でいい格好したかった
私はせっせとアイルランドに関する知識を取り込んでい
たのである。
映画のストーリーはトム・クルーズ演じるアイルランドの
青年が新天地アメリカに行き、新しき一歩を踏み出す、
というものである。
そして、天使が彼女自身もあずかり知らぬ所で私に残し
ていった「アイルランド」という言葉に導かれ私は失恋後
一年して実際に「遥かなる」アイルランドの地を踏む事に
なる。
天使がアイルランドへ誘(いざな)ったのだ。
そしてこの旅行は私のその後の人生に大きな影響与え
る事になった。全く人生は何が禍するか分からない。

暫く経ってビデオ化された『遥かなる大地へ』を観たが
皮肉にも良い映画だった。天使とあの時一緒に観る事
が出来たら…、あの時天使が私とデートするのに躊躇
しなければ…、何て事を思ったものだ。


先日投稿した『アイルランド日和』にコメントをくれた方が
いてその人のページに飛んだ時「映画」「アイルランド」と
いう連想から自分でも忘れていたこの事実を思い出した。

長々と私の文章をここ迄読んでくれた方ありがとう。

ブログに投稿するという作業は「自分探し」でもあるのか
も知れない。


アイルランド日和

2004-10-27 19:08:18 | エッセイ、コラム
自宅で作業中何だか煮詰まってしまい散歩に出る。
行き先は近所の井の頭公園(東京・吉祥寺)。

散歩に連れてゆく音楽はアイルランドの女性ボー
カルのコンピ盤にした。急速に深まる感のある秋
にこれがピッタリはまる。ぼんやりした空模様と
ひんやりした空気が何ともアイルランドっぽい。
音楽一つで自然豊かな武蔵野の公園がアイルラン
ドの公園に思えてくるから不思議だ。

ひとしきり散策を楽しんだ後は園内にあるカフェ
レストランでビールを呑んだ。銘柄はもちろんギ
ネス!ここまでやれば完璧。

あぁ、アイルランドのような田舎に行きたい。


♪アー、ユー、ゴーイン、トウ、スカボロウ・フェア

2004-10-23 04:18:04 | エッセイ、コラム
私のアパートには小さな庭がついている。
で、あまり手のかからない物を植え楽しんでいる。
何しろ性格がものぐさなものなので。

春には沈丁花が甘い香りを漂わせ、梅雨時にはア
ジサイ、秋には金木犀が晩秋を告げてくれる。

ミントにラベンダーと幾つかのハーブも植えてい
る。彼等は元々雑草なので他の雑草や害虫にも強
いのだ。

今年の初夏には、ふと思いついて、イタリアンパ
セリ、サルビア、ローズマリーを買って移植した。
サルビアはともかくパセリとローズマリーは料理
に使えるのでいいのだ。スーパーで買うと結構な
お値段だったりするし。パセリはスープに浮かべ
たり、ローズマリーは肉や魚の臭い消しに使って
いる。これをやると家庭料理がレストランの料理
に変身するのだ。

そして、この秋、花屋で奮発して500円のタイム
を購入した。貧乏なので500円も私には大金だ。
これで私の庭はある種の完成形をみる。

イタリアンパセリにサルビア、ローズマリーにタ
イム。即ち、サイモン&ガーファンクルの有名な
歌の一節♪パースリー(パセリ)、セージ(サルビア
はセージの園芸種)、ローズマリー、タイム。

私は小さな庭のこの一角をスカボロウ・フェアと
呼ぶことにした。

お金の価値

2004-10-22 18:50:17 | エッセイ、コラム
アパートの契約の更新をする。その額¥54000也。
安くない値段だ。そんなお金は持ってないので日
雇いのバイトをする。神経をすり減らし汗水垂ら
してお金を稼ぐ。それでも足りない分は親に援助
してもらった。

そんな貴重なお金をたかだか紙切れ一枚と引き換
えに不動産屋に掠め取られてしまう。不動産屋と
はなんてボロい商売なんだ。¥54000あれば好き
なCD買えて、箱根の温泉にも行ける額なのに…。

不動産屋にとっては¥54000なんてはした金なん
だろうなぁ。でも今の私にその額は○一つ多い金
額に思えてしまうのだ。

猫の気遣い

2004-10-20 09:55:39 | エッセイ、コラム
私は猫に犬といった動物全般が好きなのである。

で、最近、新しい猫と知り合った。少し変わった奴で姿を
見かけ呼ぶと、逃げるでもなく寄ってくるでもなく、とい
った態度をとる。
無理に触ろうとすると鹿が跳ねるように逃げていった。
逃げたといっても一定の距離で離れてこちらの様子を伺っ
ている。別に怖がってる風ではない。
試みに手をひらひらさせ、腕を左右に振る動作をして誘っ
てみると、姿勢を低くして攻撃の態勢を取った。尻尾もプ
リプリと振っている。テレビでみるライオンがガゼルを狙
ってる動作を想像してもらえるといい。
で、しばらく手をひらひらさせてると、彼の中で機が熟し
たのか一気にこちらに駆け寄ってきた。で、また距離を取
って俺を狙ってる。これを繰り返すこと数回。
植木の茂みに隠れたりと攻撃の形もバラエティーに富んで
いた。どうやら彼は私とじゃれたかったみたいだ。

一度、コイツに猫パンチを喰らったことがある。でも全く
痛くなくただ肉球のポコッとした感触を感じただけであっ
た。爪をちゃんと引っ込めて繰り出してきたらしい。

猫は猫なりに気を遣って生きてるようで…。