お金を下ろしに郵便局に行く。
郵便局のキャッシュ・ディスペンサーの前には長い行列
が出来ていた。
週末の夕方という元々混む時間帯である事に加え、一人
のオバサンが払い戻しや入金、振込みといった作業を延
々とやっているのが長い行列の原因らしい。
軽く舌打ちをしながら行列の最後に並ぶ。
並び始めてから数分経ってもオバサンの作業は続き、すっ
かり退屈してしまった私は何時の間にか妄想の世界に入
ってしまっていた。
妄想の内容は「今、この郵便局で強盗事件が発生したら」
というものだった。
犯人が持っている凶器がピストルだったら大人しくしていよ
う、しかしナイフや包丁の刃物系だったら私にも勝機がある
かもしれない。
剣道の心得があるので長い棒があれば勝てるか。
さて長い棒は…、そう思いながら実際に郵便局内で長い棒
を目で探す。
残念ながら郵便局の中には長い棒はなかった。
そうなるとここで戦いに使えそうな物は立て看板か。
立て看板を振り回せば犯人を撃退できるかも知れない。
立て看板には大きな物と小さな物がある。
どっちを使う?
大きい方が犯人との距離が保てて安全だ。
しかし、大きい方だとこの小さな郵便局内で振り回しにくく、
そこでもたついたりしてる間に犯人にスキを衝かれて刃物で
刺されてしまう。
とすると、小さな方が扱い易い分、戦いには適しているか…。
実際にそんな事になったら何にも出来ないに決まっているの
に、妄想の中の私は戦う気満々なのである。
こんな具合いにそこに居もしない強盗犯とどう戦うか、なんて
下らない事を考えていた時に一人の男が郵便局に入って来
て、まっすぐ窓口に向って行った。
黒のコートに黒のスラックス、そして頭には黒のニット帽という
全身黒の服の男。
手には大きなアタッシュ・ケースを持っている。
怪しい、そう感じた私はさり気なく男の事を観察し始めていた。
男はアタッシュ・ケースをカウンターに置いて何かを取り出そう
としていた。
きっとあのアタッシュ・ケースから凶器を取り出して窓口の女性
に付きつけるに違いない。
さっき迄妄想に耽っていた為、私の頭の中からは男が普通に
郵便物を発送しに来たという考えは完全に消えてしまっていた。
男は細長い物を取り出し窓口の女性に向けている。
わぁ、ホントに凶器を取り出したよ。
妄想が現実になってしまった。
そう思った矢先、窓口の女性はにっこりと微笑み男が差し出し
た細長い物を受け取っているじゃないか!
???
もう一度その細長い物を見てみるとそれは図面などを傷つけな
いように郵送する為に使うトイレットペーパーの芯を大きくしたよ
うな筒状の物だった。
つまらない妄想をしていると何でもない事でさえも凶悪事件に思
えてしまう。
我に返り一人苦笑しながら列の先に目をやるとまださっきのオバ
サンは作業を続けていた。
もう並び始めてから10分程。
自分がこの列を作り出している事にはまるで気付いていないらし
い。
まったく、どいつもこいつも。
郵便局のキャッシュ・ディスペンサーの前には長い行列
が出来ていた。
週末の夕方という元々混む時間帯である事に加え、一人
のオバサンが払い戻しや入金、振込みといった作業を延
々とやっているのが長い行列の原因らしい。
軽く舌打ちをしながら行列の最後に並ぶ。
並び始めてから数分経ってもオバサンの作業は続き、すっ
かり退屈してしまった私は何時の間にか妄想の世界に入
ってしまっていた。
妄想の内容は「今、この郵便局で強盗事件が発生したら」
というものだった。
犯人が持っている凶器がピストルだったら大人しくしていよ
う、しかしナイフや包丁の刃物系だったら私にも勝機がある
かもしれない。
剣道の心得があるので長い棒があれば勝てるか。
さて長い棒は…、そう思いながら実際に郵便局内で長い棒
を目で探す。
残念ながら郵便局の中には長い棒はなかった。
そうなるとここで戦いに使えそうな物は立て看板か。
立て看板を振り回せば犯人を撃退できるかも知れない。
立て看板には大きな物と小さな物がある。
どっちを使う?
大きい方が犯人との距離が保てて安全だ。
しかし、大きい方だとこの小さな郵便局内で振り回しにくく、
そこでもたついたりしてる間に犯人にスキを衝かれて刃物で
刺されてしまう。
とすると、小さな方が扱い易い分、戦いには適しているか…。
実際にそんな事になったら何にも出来ないに決まっているの
に、妄想の中の私は戦う気満々なのである。
こんな具合いにそこに居もしない強盗犯とどう戦うか、なんて
下らない事を考えていた時に一人の男が郵便局に入って来
て、まっすぐ窓口に向って行った。
黒のコートに黒のスラックス、そして頭には黒のニット帽という
全身黒の服の男。
手には大きなアタッシュ・ケースを持っている。
怪しい、そう感じた私はさり気なく男の事を観察し始めていた。
男はアタッシュ・ケースをカウンターに置いて何かを取り出そう
としていた。
きっとあのアタッシュ・ケースから凶器を取り出して窓口の女性
に付きつけるに違いない。
さっき迄妄想に耽っていた為、私の頭の中からは男が普通に
郵便物を発送しに来たという考えは完全に消えてしまっていた。
男は細長い物を取り出し窓口の女性に向けている。
わぁ、ホントに凶器を取り出したよ。
妄想が現実になってしまった。
そう思った矢先、窓口の女性はにっこりと微笑み男が差し出し
た細長い物を受け取っているじゃないか!
???
もう一度その細長い物を見てみるとそれは図面などを傷つけな
いように郵送する為に使うトイレットペーパーの芯を大きくしたよ
うな筒状の物だった。
つまらない妄想をしていると何でもない事でさえも凶悪事件に思
えてしまう。
我に返り一人苦笑しながら列の先に目をやるとまださっきのオバ
サンは作業を続けていた。
もう並び始めてから10分程。
自分がこの列を作り出している事にはまるで気付いていないらし
い。
まったく、どいつもこいつも。